親無し小太り取り柄無しな田舎娘がある日突然獣人伯爵の運命の番になった話

syarin

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126: 豊穣の儀式は終わり…。

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「ダチョウキック!ダチョウキック!」「カンガルーキック!カンガルーパンチ!」「イヤだー!イタチがくるー!」「ハイパーマングーストルネードォォォ!!」「洗浄だーー!!」「ウホウホウホウホ!」

乱れ飛ぶ瓦礫に獣人、相性も考えられずに乱発され、融合し、思わぬ化学反応を生み出す数多の魔法攻撃。
騎士団長が本気で獣人達をしばき倒し、事態が収まった頃には荘厳な神殿は柱が折れ、壁が砕け、朽ちた廃墟と化していた。

そんな中、モフーラを見守る夫婦神像もヒビに欠けに亀裂と随分とダメージを受けていたが、変わらず柔和な笑みで獣人達を見下ろしており、いつの間にか託宣まで降りていた。

"いいぞもっとやれ!" "皆仲良くしなさいね。"

真逆の託宣は、夫婦神の性格を如実に表しており、受け取った神官は感動に打ち震えて直ぐ様神官長に報告しようとしたが、豊穣の広間の壊れていく轟音に色々察し、そっと踵を返した。

そのお陰で神官長が託宣を知ったのは翌々日の事になる。
神官長と王子は流れ魔法攻撃やら流れ物理攻撃が妙に集中し、騒動が終わった頃にはボコボコでその後丸1日寝込んだのだ。

この件に関しては、複数の公爵家と侯爵家の獣人達が思い出す度にニンマリし、一人の象令嬢が「踏んじゃったのバレませんように」と神に祈るのだった。

本来なら今年の豊穣への感謝と来年の豊穣への願いを込めた祈りの力で明々と輝く神珠と呼ばれる宝玉は、騎士団長が暴れる獣人子女達を全員しばき倒した後、例年以上に綺羅綺羅と輝いていた。

「と、取り敢えず…神々はお喜びになった様なので、今年の儀式はこれで良しと致しましょう……。」

神官長の補佐である兎神官が耳を後ろに寝かせつつも宣言し、不動明王の如き形相で見下ろす騎士団長の監視の下、ボロボロになった獣人子女達はそれぞれ無事な者が倒れたままの仲間を引き摺り、馬車へと戻る。

「………ハムゥ……儀式の後の立食パーテ「しっ…!そんなのもう取り止めに決まってるだろ…!」

立食パーティーもその後の舞踏会も無かったが、この年の豊穣祭参加者は例年よりお互いの認識度が高まり、少し先の未来で種族を越えて友好を築いていく者も少なくなかった。

崩壊した神殿の豊穣の広間はこの後、バドワイザ領を中心に崩壊させた主犯格の領が責任を取って修繕となった。

だが、他人の金、と、ここぞとばかりに獅子王族達が注文を付け、至る所に配置された獅子の像やレリーフは、アナグマ石工職人達の手によって何故かちょっと胴長短足になり、鬣のある雄ライオンは後光の差したイタチに見え、雌ライオンは只のイタチにしか見えない、そんなイタチライオンだらけになってしまった。
又、注文を付けられなかった部分はほぼほぼ葡萄と菫とイタチ系動物の模様で埋まり、セイロンが担当した大理石の階段は綺麗な鱗模様があしらわれ、さながら横たわる龍の背だった。

そんな七割イタチ二割龍、残りは虎とか狼がチョロチョロと、な獅子皆無の広間だったが、前の三倍豪華になっていた為、神官長は目をつぶる事にした。
獅子は余り自分達で稼がない為、やり直す予算が無かったのだ。

こうして、前代未聞の大乱闘豊穣祭は幕を閉じ、マリローズとボロボロになるまで拳を交わしたイオンウーウァの傷が癒える頃、王都でラートンとイオンウーウァは久々のデートを楽しんでいた。

「ふはぁ……。お花は綺麗だし、お茶とお菓子も美味しいし、僕の可愛い奥さんは相変わらず可愛いし、良い昼下がりだなぁ…♡」

「そうね……ラァトと二人でのんびりするの、何だか久々に感じるわ♪」

「本当、良い昼下がりよね。」

「「…………………。」」

王都の今話題のカフェのガーデンアフタヌーンティーを楽しんでいる二人の目の前で、甘い香りをたっぷり孕んだ垂れ下がる花房がゆっくりと揺れ、芳しい芳香と色取り取りの花びらを二人に注ぐ。

ラートンがイオンウーウァの柔らかな手をそっと指で揉んで弄びながら幸せの溜め息を洩らし、イオンウーウァがその愛情いっぱいの紫紺の眼差しとお菓子の甘さを堪能しながら同意する。

その横で、マリローズは澄ました顔で同意してお茶を飲み干した。
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