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123: 説教は長く、ぐだぐだと。
しおりを挟む「皆が静まり此処へ並ぶまで、七分もかかった。」
怖い顔でそう言う獅子騎士団長に、獣人子女達は足元を何と無く見つめて沈黙した。
「本日は、年に一度の豊穣祭という神聖な行事で、これに参加すると言うことは、国民の、各々の領の代表としてこの場に居る訳で……」
続く騎士団長の言葉に、獣人子女達は神妙な顔つきのまま、何だか長くなりそうだぞ、とこっそり嘆息する。
「一体全体、諸君らの様な立派な貴族の子女がまるで下町の縄張り争いの様に醜く牙を剥き出しに暴れまわるとはどういう……判っておるのかね?君達は将来この国の様々な領地や機関を支える大事な要員なのであってだね、本来このように種族や領の違いなどで衝突、あまつさえ暴力行為に出るなんてことは全くもって有ってはならないことで…。」
普段団員達には怒鳴り付けて即座にランニングや腕立てを罰としてさせる騎士団長だったが、貴族子女にそれはいけないだろうと考え考え、言葉を選びながら説教をしていく。
それは、とても低い声が何だかゴロゴロと轟きながらもメリハリ無く一定のリズムを保ち、騎士団長の思いとは裏腹に獣人子女達の意識を妄想の国へと旅立たせた。
さっきのお菓子美味しかったとか、やはりもう一発殴るべきだったとか、一人また一人と足元を見つめながら物思いに耽っていく。
「聞いているのか!!……はぁ、もういい、慣れない説教などするものではないな…。
それで、原因は一体なんなんだ?」
説教の途中でふと子女達を見た騎士団長は、妄想&物思い時々居眠りと現実の狭間でゆらゆら揺れている姿に愕然としつつも一喝し、説教を切り上げる事にした。
慣れない説教は、考える事がどちらかというと苦手な騎士団長にとっても苦行だったのだ。
(くそ。知恵熱が出そうな位頑張ったのに……。ええい、獅子の癖にまだ起きないのか!)
こめかみを揉みつつ騎士団長が見やった先で、神官長と第三王子とダンデリォン公爵家四男が仲良く寝かされて居る。
侍従に頰を叩かれて真っ赤に頰を腫らしたまま起きない二人と、めんどくさそうな顔をした婚約者に膝枕でパタパタと扇子で扇がれている一人を見て、少し微笑ましく思いつつも騎士団長は覚悟を決めた。
この場を仕切るのは自分しか居ないのだと。
一方で獣人子女達も覚悟を決めていた。
「…発端はわた「僕「事の始まりは、私に敵意剥き出しで兄上が絡んできたのを、隣にいたイオンウーウァ様に対する害意だと勘違いしてしまった事からですね。」
イオンウーウァがそっと手を挙げて名乗り出ようとし、ラートンも自分が悪かったと庇おうとしたが、それに被せてレモンドがハキハキと騎士団長に答えた。
(獅子には獅子を、だよ。テル♡ ここは俺に任せて♪)
(我が愛しのレモン……君はなんて……♡♡)
「ぁぁぁレオベル、お前ってヤツは……。」
鬼の首を取ったかの様な顔でレモンドに獅子が始めた事だと言われ、獅子騎士団長は頭を抱えた。
獣人は身内びいきなのだ。身内の、しかも王族に次ぐ身分である公爵家の兄弟ゲンカと言われては厳しく追及出来ない。
そんな騎士団長を尻目に、レモンドは横のラミテルに任せて♪とウィンクし、ラミテルはそんなレモンドに惚れ直したかの様にうっとりした視線を送った。
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