親無し小太り取り柄無しな田舎娘がある日突然獣人伯爵の運命の番になった話

syarin

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122: 突然の終止符。

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「皆の者!!静粛に!!!落ち着きなさい!!!」


飛んできた銀のトレイと銀の水差しが顔面に直撃し、獅子王子と獅子王弟が仲良く昏倒して暫く。
侍従達が日頃の恨みを解消しながら必死に二人をビンタし続けていたが、二人の意識は戻らず、只、二人の頰が朱く腫れていくだけだった。

小動物獣人達は逃げ惑い野次を飛ばし、時に流れ盆に当たり、時に大型獣人を盾にし、大型獣人も小型獣人を避難誘導したり巻き込まれたり、時に小型獣人を盾にしたり、と、混沌と化していた広間にビリビリと空気を震わせる程の獅子の咆哮が響き、毛を逆立てて興奮の最高潮に達していた獣人子女達がピタリと動きを止めた。

「何をしているのだ!!神聖な行事なのだぞ!!落ち着きなさい!!!」

そう言って仁王立ちのまま広間の入り口からジロリと一同を見渡したのは、現辺境伯の弟の、王宮騎士団長だった。

シン、と静まりかえる中、ノシノシと大股で広間を進み、騎士団長が神殿の奥に辿り着く頃には、騒ぎはすっかり収束していた。

ラートンとイオンウーウァ、リュートとマリローズも何食わぬ顔でしずしずと広間奥の祭壇前に身分順に並ぶが、ちょっとラートンの礼服は乱れ、ボタンが飛び、イオンウーウァの妖精の様な立体刺繍の花が美しいドレスも毛羽立ち、あちこちほつれていた。

無論、セイロンの二人も無事では済まず、リュートは礼服がヨレヨレで所々破れ、額にたんこぶ、腕や手足に擦り傷打撲少々とちょっと痛々しい姿ワイルドに。
マリローズはタイトに身体に張り付き美しく裾が広がったマーメイドラインの白とオーロラ色に煌めくドレスが薄汚れ、上から裾にかけて土色のグラデーションに染まったけばけば毛羽立ちドレス姿へと変貌していた。

直前まで中庭を所狭しと駆け回り、ラートンがイオンウーウァをジャイアントスイングでぶん回してイオンウーウァが蹴りを繰り出すという合体技を繰り出したり、負けじとリュートがマリローズを抱えて上空へと飛び上がり、乱れ来る銀のお盆とテニーの氷礫の隙間を急降下してマリローズと超飛び蹴りという合体技を繰り出したり、それをラートンとイオンウーウァが筋肉で受け止めたり……と白熱したバトルを繰り広げていたとは思えないお澄まし顔の四人に、騎士団長は頭痛のする思いだった。

「レモン…背中に埃が。私が払ってやろう。」

「ん、ありがとう。テル…♡次は私が君の背中を払うよ。」

ラートンとイオンウーウァの後ろに自慢のコーンロウのポニーテールに少し埃が付いてしまってるラミテルと、同じくコーンロウヘアにしたレモンドが並び、互いに身なりを整え合っている。

「テニー、大丈夫?」

「ありがとう♡でも俺は埃一つ付いてないよ♪あ、モカ、リボンが曲がってる♪……はい、これでよし。チュッ♡」

「え?……ありがとうテニー♪きゃっ♡」

その後ろでモカとテニーが、

「ふぅ。あ、リボンタイが曲がってまつわ♪」

「あ、ありがとおございまつ。」

「君もリボンが曲がってるよ、直そう。」「あら、ありがとう♪」

その後ろで興奮醒めやらぬグーマの遠戚の幼い子女達が、キリン獣人とオコジョ獣人が、身なりを整えつつ並ぶ。

その横にはあちこち噛み後だらけの熊獣人や服の乱れた狼獣人、不服そうな狐獣人と耳を後ろに寝かせた犬獣人とまだまだ尻尾のブラシ化が収まっていないアライグマ獣人など、なんとなくイヌ科っぽい獣人達が揃っていた。

更にその隣に、気を落ち着かせようと毛繕いに余念がないネコ科やネコ亜目の皆さん、とばっちりは御免とばかりに上空を逃げ惑ったもののテニーの氷礫や様々な流れ弾に当たりまくった鳥類の皆さん、龍人を応援するかしないかで真っ二つに割れた爬虫類の皆さんが澄ました顔で整列する。

それを見届け、騎士団長は長く深い溜め息を一つ吐いた。

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