親無し小太り取り柄無しな田舎娘がある日突然獣人伯爵の運命の番になった話

syarin

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121: まるで喧嘩祭り。

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「ええい!イタチどもはムカつくんだよ!毎度毎度!鼠と見れば蹴散らしてくる!!」

「鼠どもがそもそも迷惑なのよ!がめついことばーーっかり!」

「そうよそうよ!平気でぼったくる人ばっかり!お陰で私達野鼠や土竜、針鼠まで風評被害よ!!」

「一族の繁栄を最優先にして何が悪い!」

「そーゆーとこだぞ!!」

「はむはむはむはむはむはむはむはむはむはむはむはむ……」

荒ぶる鼠獣人達に、様々なげっ歯類獣人や小動物獣人達がチーチーキーキーと喰って掛かる。

その横で、どさくさに紛れて金熊鼠獣人が全ての飲食物を頰袋に詰め込もうと奮闘していた。


「「 鉄の骨に鋼の毛皮、我らアナグマ巣穴を掘る♪

  巣穴は我らの揺り篭 巣穴は我らの墓場♪

  ディグディグホール!ディグディグホール! 」」

「ええい!唄うな!興奮するな!何でこんな事態に…!誰か止めろよ!!」

「……巣穴は我らの墓場♪ って何だお前!イタチ系獣人に喧嘩売んのかコラァ!」

「ギャン!キャンキャヒン!いてぇっ!やめろよー!!」

無心で頰袋に食べ物を詰め込む金熊鼠獣人の背後で、バドワイザ領子女達が熱唱し、闘いを盛り上げ、少し神経質そうに叫んだ狼獣人の青年に他領のアライグマの青年が食って掛かって噛みつき引っ掻く。

「hello darkness , my old friend …皆、落ち着けーー!!」

そんな会場に、皆を沈静化させようとテニーが瞳をアイスブルーに光らせて闇を纏った氷の粒を雨霰と降り注ぐ。

「イデデデデデ!!」「ウギャ!冷たぃ!痛い!」「刺さる刺さる!!」「くそぉ!誰だよ!!イデデデデデ!!」

何故か大きめで少し尖ったモノが多く降るセイロン応援陣営から悲鳴が挙がり、テニーはアイスブルーに輝く瞳でふふりと嗤う。

「バイライト様!我等も加勢しましょう!」

そんな阿鼻叫喚の広間を奥から眺めていた龍人の令嬢が自身の婚約者に参戦を呼び掛けるが、返答は酷いものだった。

「いーやーだーー!うわーーん!オコジョ怖いよーー!!」

「ひぃぃぃぃ!ごめんなさい!もうちょっかいかけませーーん!」

「イタチ怖いアナグマ怖いオコジョ怖いラーテル怖いウルヴァリン怖いスカンク怖いカワウソ怖いラッコ怖いフェレット怖い……」

「「「えっ。」」」

セイロン領の龍人貴族の中でも代表的な家門であるバイライト、アクァリズ、ロックウォータ達がテニーの氷礫を見た途端泣き叫び出し、周囲の龍人子女達は驚きの声をあげる。

「怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌……ぐすん。」

「アポローロ兄様??」

実はあのバドワイザ婚約式突撃返り討ち事件によってアポローロと仲良くなったバイライト達は、その縁で隣国のエンロン侯爵家分家筋と縁を繋ぎ、アポローロもバイライトの従姉妹と婚約、四人仲良く豊穣祭に参加していたのだった。

「バドワイザに突撃して酷い目に遭ったと聞いてましたが、一体、何があったのです……!?」

バイライトの婚約者にしてアポローロの妹であるフレアが戸惑いながら呟いたが、それに応える者はいなかった。

「怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い……めそめそ。」

吹き荒れる闇を纏った氷礫を避け、四人は隅で固まってぶるぶると震えて縮こまっている。

『なぁ!あんたら何処の誰?!なぁんだぁ!俺以外にもいるじゃん!同志同志♪イェーイ☆アナグマどもを蹴散らしてやろーぜ!』

初めてバイライト達に出会った時、太陽の様にキラキラと元気いっぱいに煌めいていた、傲慢で自信に満ちていた赤龍人のアポローロ。

今はもう、何処にもあの煌めきは無かった。


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