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115: あれ?レベルが低いぞ?
しおりを挟む「イオンウーウァなんか大っっ嫌い!!!」
「私だってマリローズの事昔から大大大っっっ嫌い!!!」
先程までのどす黒い感情を滲み出すマリローズと悠然と構えるイオンウーウァの構図にハラハラとしながら見守っていた周囲は、唐突の子供の喧嘩的展開に肩透かしを喰らった様な気分だった。
だが、マリローズとイオンウーウァはそのまま睨み合い、周りの戸惑いなど気にせずに続ける。
「ホントムカつくのよ!馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!」
「そっちこそ馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!」
((…………あれ?……))(いやいや、幾らなんでもそんな……)((わぁぁ……))
「私のリューさまは侯爵なのよ!?私の方が偉いんだから!なによ!あんたってば昔からいつもえらそーにしてー!!嫌いよ馬鹿!イオンウーウァのちんちくりん!!ふーーんだ!!アンタの番もちんちくりん!!」
「えー??誰がちんちくりんって??ラァトは最高にハンサムで優しくて格好いいですけど??あ、そっか。マリローズったらちんちくりんの意味を勘違いしてるんじゃなぁい??ほら、こーまんちきって何かセクシーに格好いいって誉め言葉だと思ってた事があったじゃない??ほら、アタシィ、こーまんちきだから♡って自慢してたじゃない♪それより、あなたの番さんは何処へ行ったの??ラブラブ出来ないからそんなにイライラしてるんでしょぉ?」
((イオンウーウァ様がめっちゃ喋ってる!!!!))
ラートンがバドワイザに連れ帰って来た時は、殆んど喋らなかったせいでうまく言葉が出なかったイオンウーウァ。
そんな彼女は言葉が滑らかに出る様になってからも、そんなにお喋りをする方では無かった為、今、モカやテニーなど、バドワイザの子女達は驚きでポカンと口を開けたまま、次から次へと滑らかに煽り文句を発するイオンウーウァを眺めていた。
「ムキーー!ム、ムカつくぅー!!な、何よ何よ何よぉぉ!!あ、そーだ!!アンタ!!パパが困ってるのよ!!何でパパから土地を取り上げるのよ!パパは村長なのよ!??」
((あ……言い返せなかった……。))
マリローズが悔しそうな声をあげた後、思い出したのか話題を変える。
その様子を周囲は若干生温かい眼差しになりつつ見守った。
「……?……パパから土地を??」
「あ、それはあれだよ、スモモ村にホテル建ててるだろう?ほら、グーマとシフォンが良く僕の可愛いウーァに壁紙の色とか好きな家具とか聞いてたヤツだよ。
君が小さいのを良いことに、スモモ村の村長と何人かの村人が、本当は君が相続するべき土地やら家屋やらをちゃんと相続させなかったり、君の親戚に君の両親が亡くなった事を報せなかったりしたツケをきっかり確りガッチリと我等がバドワイザの名を賭けて請求したからバッチリ安心してね♡♡僕の可愛いウーァ♡んー…ちゅっ♡」
マリローズの言葉に首をかしげるイオンウーウァに、ラートンが横から誉めてとばかりにペラペラと説明し、最後に心を込めた投げキスをする。
その、舞い上がって普段からは想像も付かない行動に出るラートンに周囲は凍り付いた。
「えい、ぱくっ♡フフフ♪ あのホテルのお話がそうだったのね♪完成したら見に行きたいわ♪」
((ヒェェ……あのラートン様が…!))((私達もあんな風にイチャイチャ…))(いやいや、ないわ……)((凄い……ラブラブだ……!))((番フィーバーは未だ健在だったんだな…。))
ラートンの投げキスをパクリと食べて笑うイオンウーウァにラートンが骨まで溶けてるだろうという顔でニコニコする。
その二人だけの世界に入り浸る様子に、周囲は戦慄しつつも何処か憧れを抱くのだった。
「ちょっと!!聞いてるの?!パパに土地とお金を返せって言ってるのよ!パパは村長なのよ!?」
「わ!ウーァ危ない!」「邪魔すんじゃないわよ!」
「ちょっと!私のラァトに何するのよ!」
そんな二人だけの世界に入り浸りかけたラートンとイオンウーウァに、我慢の限界が来たマリローズがイオンウーウァに掴みかかる。
だが、イオンウーウァを庇ったラートンに阻まれ、ラートンをぎゅうぎゅうと押したり引っ張ったりしながらマリローズはギャンギャンと吠えた。
そんなマリローズにラートンに何するとイオンウーウァが怒り、わちゃわちゃと団子になっていると、周囲の固唾を飲んで見守る小型獣人を薙ぎ払って長身痩躯の男が現れた。
「おい!何してるんだ貴様ら!俺の番だぞ!!」
マリローズの運命の番、リュート・セイロンだった。
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