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110: その時、レモンドは胸がズキュン♡としました。
しおりを挟む馬車から降りてきた弟は、辺境伯騎士団で鍛えられて立派に育ち、更にバドワイザ領に来てからはその豊かさから毎日辺境伯騎士団に居た頃の数倍栄養豊富な食事を存分に摂取していた。
そんな高栄養状態で伸び伸びとラミテルと過ごし、止まったと思った身長が成長痛に悩ませられる程伸び伸びするという事態に見舞われたレモンドは今や、にょっきりと大型肉食獣人の中でも高身長に育っていた。
そして、ラートン程ではないがしっかりと筋肉の付いた屈強な肉体は艶々と肌艶も良く、鬣が無い故に長くするのを躊躇われ、ずっと短髪にしていた髪は少し伸ばしてラミテルとお揃いのコーンロウヘアだ。
更に、髪にも、首や腕、指など、身体の随所に厳つい装飾品が光り、美しく柔らかな毛皮と分厚い革で出来たラミテルと揃いのラーテル風礼服は、彼に掛けられた金銭がレオベルの自由に出来る金なんか吹き飛ぶ様な金額だと見て取れた。
そして、レモンドがラミテルを見つめる表情は心からラミテルを愛し、現在とても幸せだと物語っていて、ラミテルは全身全霊でレモンドを愛していると物語っていた。
ギリギリとレオベル自慢の牙が音を立て、そっと近くに居た栗鼠獣人が離れていく。
王族の血が濃い、天下のダンデリォン公爵家とは言え六男四女の四男ともなれば、それなりに扱いがぞんざいで。
そんな中、レオベルはいつもレモンドを見て溜飲を下げてきた。
レモンドはいつもレオベルより不幸でなければならないのだ。
どんなに剣や勉学で優秀でも、その実力を正当に評価されることもなく、両親や親戚、周囲から愛されず、惨めに、みすぼらしく俯いていなければいけないのだ。
政略結婚で、互いに、こんなものか、という顔をしたレオベルとその婚約者より互いに想い合って幸せそうなのが許せなかったし、予算内で出来るだけ高く見せれるよう、等という狡っ辛い思惑など微塵も感じさせない最高級の礼服をさらりと着こなしているのも許せなかった。
「……レオベル様?何処へ行くんです?」
苛立ちを隠さずぐんぐんバドワイザ御一行に近づくレオベルに、婚約者が声を掛けるが、レオベルの苛立ち伏せた丸耳には届かなかったようだ。
どうやってヤツの幸せそうな顔を惨めにみすぼらしく正してやろう、それだけを考えて、敵対心剥き出しに近付くレオベルに一番始めに気付いたのはラミテルだった。
「貴様!我が番をどうするつもりだ!それ以上近付けば容赦はせんぞ!!」
王族も出席する行事故帯剣はしていないが、レオベルが何か言うより速く拳を構えてラミテルは吼える。
そして、そんなラミテルの声に直ぐに反応したのは腹黒オコジョハーフのテニーだった。
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