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103: 叩き落とされる。
しおりを挟む「イェーー!!アッハッハッハ!!」
飲み慣れない高級酒に酔い、仲間がいることでとても気が大きくなった四人は、奇声を発しながら上空へと飛び出した。
熱を帯びる体に風が気持ち良く、叫ぶ度楽しくなってくる。
思わずアポローロがファイアブレスを吐けば、未明の空にパチパチと火花を散らすブレスが流星のようで。
獣達が驚いて眼下の森がざわめくのが面白くて。
バイライトもブレスを吐き、赤々とした炎の筋を作る。
アクァリズとロックウォータも負けじとウォーターブレスを吐くが、光らないから地味だな、なんて笑いころげ、一同はバドワイザ領上空に侵入した。
バドワイザ領の一番端っこの村でさえまだ森の向こうで見えなかった。
だが、イタチどもはバカ騒ぎする俺達の存在なんて当の昔から気付いていたんだろう……。
アクァリズはそう振り返り、ゆっくり下唇を噛んだ。
ヒュッと何かが風を切る音を聞いた気がする。
キラリと何かが光った気がする。
違和感とも呼べない様な小さな違和感にアクァリズが反応するより早く、後方でドン!ドン!と音がしてアポローロが驚いた顔で失墜した。
「アポローロ!?」
驚いたバイライトが直ぐ様尻尾を掴み、アポローロも完全龍化してバタバタと羽を動かす。
「ぐわっ!!」
アポローロの羽が穴だらけだ、とアクァリズが認識したと同時に、前方でロックウォータが呻き、ゆっくりと墜ち始める。穴だらけになった羽は片方が凍り付き、肩に幾つかの石がめり込んでいた。
咄嗟に完全龍化してバリアを張ろうとしたのだが、その前に攻撃されてしまったのだ。
三人の中で一番頑丈さを誇るロックウォータを貫く氷と石の塊に、アクァリズの肝がサァァっと冷える。
慌ててアクァリズも龍化し、ロックウォータを掴んで高度を保った。
どうやら何某かの毒攻撃を喰らったらしく、目を回しているロックウォータを揺すりながら、バイライトとアポローロを窺う。
「ロック!しっかりしろ!ロック!!くそっ!バイライト!アポローロは大丈夫か??」
「ケェェーー!ケェェ!!」
「ダメだ!羽が完全に潰された!!何処かに一度着り…グァァッ!!」
パニックになってるらしきアポローロは羽をバタつかせてケーケーと叫ぶばかりだった。
そんな彼の尻尾を握ったバイライトが、着陸場所を探そうと部分龍化した途端、集中砲火を浴びる。氷と石の塊以外にも、毒弾と炎弾が撃ち込まれたらしく、一瞬にしてボロボロになったバイライトがゆっくりと高度を失っていく。
アクァリズも砲火を浴びたが、どうやらロックウォータが朦朧としながらも小さなバリアを前方に張ってくれたらしい。
「きゅっキェーー!ケェェーー!ケェェ!!キェー!」
「ダメだ!やめろ、アポローロ!!俺達は攻撃するつもりは……!」
パニックになってる上に目の前でバイライトが撃沈し、恐怖心が最高潮になったのだろう。アポローロが涙目で口にブレスを溜める。
「ギャブッ!!」「アポローロ!!」
勿論、この状況下でその様な事が許される筈もなく、あっという間に飛んで来た氷の塊がアポローロの口を塞ぎ、ブレスが口元で暴発したのが見えた。
ブレスを口内で暴発させるのはそれ程ヒドイ怪我にはならないが、舌が傷だらけになり、後、やられた側は凄く怖い。
そう言ってたのは伯父の一人だったか。
アクァリズは脳味噌の片隅でそんなことを思い出しながらバイライトを片足で掴んだ。
意識を失いかけながらもしっかりアポローロの尻尾を掴んで離さないバイライトの真下で、羽と胴体の半分程を氷漬けにされたアポローロがプラプラ揺れる。
(早くバドワイザ領から出よう!!)
そう考えてアクァリズは踵を返そうとしたが、時既に遅く。
羽にドスドスという衝撃と、燃えるような熱を感じたと思った時には彼の羽は穴だらけになって飛行能力を潰されており、彼は音もなく失墜していた。
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