親無し小太り取り柄無しな田舎娘がある日突然獣人伯爵の運命の番になった話

syarin

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99: 少しだけ進んだ関係。

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「素敵な布が一つ、素敵な布が二つ、素敵な布が………
……ああ~…一つ足らない~~!!」

シフォンが大量の貢ぎ物を一つ一つ目録と照らし合わせては発狂している頃、ラートンとイオンウーウァはグリフィンによる空中散歩を終え、見晴らしの良い丘の木陰で休んでいた。

木の幹に凭れるラートンの腕の中に、すっぽりと収まったイオンウーウァがふかふかの胸筋を味わうようにぐりぐりと頭を押し付ける。

そんなイオンウーウァの耳元近くで、ラートンが穏やかな低音でとりとめの無いことを話す。

「僕の可愛い奥さんはちっちゃいね♪すっぽり僕の中に収まってしまう♡」

その声はとても穏やかで、耳にくすぐったく、イオンウーウァはそっと首を傾げて耳を囁きから逃がそうとした。

そんなイオンウーウァの行動に、悪戯心を起こしたラートンがくすり、と笑う。

「どうしたの?可愛いウーァ♡可愛い僕の運命の番さん♡♡」

「ぅゎゎっ??」

囁きから逃れた耳の代わりに無防備になった反対側の耳に唇が付く位の位置でラートンに囁かれ、そのゾクゾクとした感覚にイオンウーウァが焦った声を出す。

その、小動物の様な動きに、ラートンの中の肉食獣としての本能がむくむくと膨らんでいく。

「フフフ、どうしたの?ねぇねぇ、どうしたの??僕の可愛い奥さん♡♡」

チュ♡と、軽くリップ音を立て、逃げるイオンウーウァの耳を右や左と唇で擽るラートンに、イオンウーウァがモゴモゴと身動ぎする。

それが可笑しくて、可愛くて、愛しくて……。

ラートンの太い腕がするするとイオンウーウァの体に絡み、顔から耳から首筋から真っ赤にしているイオンウーウァの耳を食み、キスを落とし、吐息を吹き込む。

「フフフ、ウーァ、可愛い♡」「ふ、ゎ。」

いつもの蕩けた優しい声ではない、何処か捕食者の獰猛さを感じさせる低い囁き声に、思わずイオンウーウァから甘い声が洩れる。

そうなれば抑えが効かなくなるのが男子のサガというもので。

「きゃ、ぁ、ぁあっ……!」

ペロリとラートンの熱い舌が耳殻をなぞり、獣人らしい犬歯が甘噛みして吐息を吹き込む。

甘い悲鳴と共に、背筋を駆け抜けるぞわぞわとした快楽に身を捩るイオンウーウァだったが、ラートンは逃亡を許さず、分厚い筋肉の檻に彼女を閉じ込めたまま、追撃していく。

「ちょ、…ラァ、ト……ヒァッ…ぅう~~!ぁ!ゎぁ!」

身を捩っても可愛い抵抗だと歯牙にもかけられず、攻めの手を緩めないラートンの腕の中、イオンウーウァは初めての感覚に翻弄されていく。

「ふふ、かーわいい♡♡僕の可愛い奥さんは耳が弱点だったんだなぁ♡」

満足したラートンがそう呟いた頃には、イオンウーウァはくったりと彼に背を預け、息も絶え絶えだった。

いつの間にか、そらは茜と紫に彩られ、眼科の小川が赤赤とした光に煌めいている。

「そろそろ、帰らなきゃだけど……もう少しだけ、こうしていたいな…。」

言葉と共にラートンの唇が、酸素を求めて喘ぐイオンウーウァの唇に近づいてくる。

イオンウーウァはそっと目を閉じ、菫色に染めた指先でラートンの唇を己の唇へと誘導した。


空が菫と紫紺に彩られる頃。
ラートンとイオンウーウァは少しだけ大人の関係へと踏み込み、温め直した夕食を頬を染め合って食べた。







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