親無し小太り取り柄無しな田舎娘がある日突然獣人伯爵の運命の番になった話

syarin

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92: イタチの乱痴気騒ぎに馴染んだ者、馴染めなかった者。

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獅子が来れば死ぬまで戦おう。

 虎が来れば戦う為に戦おう。

 象が来るならば、憤怒の形で戦おう。

 ラーテルが来れば、我らは戦い、我らは滅ぼう。
 
フー! フー! フー! フー! フー! フー! 

「フー!フー!フー!フー!!」

街の中心の広場が特設の会場となり、貴族も平民も入り乱れ、様々なイタチ系獣人とその他の獣人達がワイワイと宴を楽しんでいた。
隣国辺境伯を筆頭としたラーテル獣人達が、轟く低音で歌い、剣や槍を掲げて何度も掛け声を放つ。

その猛々しさに痺れたイオンウーウァが楽しそうに拳を突き上げ、一緒に叫ぶ。
その姿をラートンは蕩ける笑顔で見つめて言った。

「ウーァ♡僕の可愛いフィアンセさん♡♡踊ろうよ!」

フーフーと楽しそうに叫ぶイオンウーウァにラートンが手を差し伸べ、舞台に誘う。
その手を迷い無く掴んだイオンウーウァはラートンと一緒にニコニコと舞台に乗り込んだ。

どうやら、演舞的な部分が終わり、他にも何人かのイタチ系獣人が嬉しそうに舞台に上がる。


獅子が来れば死ぬまで戦おう。

 虎が来れば戦う為に戦おう。

 象が来るならば、憤怒の形で戦おう。


共に口ずさむ者、各々得意な躍りでリズムを合わせて踊る者、皆思い思いに楽しんで、宴は延々と続いていった。

夜も更け、深夜になっても宴は盛況で、人々は入れ替わり立ち替わり歌ったり踊ったりと楽しむ。

イオンウーウァもすっかり基本的な舞踊のステップを覚え、ラートンにブン回されようが放り投げられようがニコニコと浮遊感を楽しむ迄になっていた。

「ラァト!もう一回!」「ほいきた♪何度でも♡♡」

ラーテルやウルヴァリン、オコジョにテンにカワウソにラッコ達。

それぞれがそれぞれの舞踏や歌を披露して楽しむ中、イオンウーウァのムッチリボディがブンブンくるくると回転する。

その好奇心旺盛で何でも楽しむ姿はすっかりアナグマ獣人のそれで、それが又、イタチ系獣人達を喜ばせ、宴はますます盛り上がっていった。



「ビア!ほら!踊ろう!!お前さんだって何か熊の躍り踊れるんだろう??行こうぜ!」

踊っていたと思ったら急にテーブルに帰ってきて、がふがふと肉とパンを食べてがふがふとワインを飲み干したケインが休憩終わり!とばかりに笑顔で言って熊獣人ビアの手を引っ張った。

一方、暫く前から席取りの荷物と化していたビアはどろりと濁った瞳でケインを見上げた。

「オマエラ、何時間ぶっ通しで踊ってるんだ、勘弁してくれ……もう、眠い。イタチ共の体力舐めてた……。俺は此処で寝てるよ…。」

「えーー?なんだよ、さては食い過ぎたな??じゃぁ、俺は踊ってくるよ!また後でな!」

そういっていそいそと躍りに行ったケインを見送っていると、近くに突っ伏していたキリン獣人がのそのそと起きてきた。

「俺………イタチ系獣人舐めてたわ………。」

彼は幼馴染みのオコジョ獣人と一緒に来たらしい。げっそりとした顔で、ビアが差し出した水を呷る。

「これを1ヶ月なんだろ……?すげーよなぁ………」

キリン獣人とビアが疲れきった瞳で見つめる先で、オコジョとラーテルの獣人が楽しそうに躍り狂っていた。



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