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91: 堅苦しいのは終わり、乱痴気騒ぎが始まる。
しおりを挟む「では、此処で、お二人の婚約の儀を致しますので、それぞれ、指環の交換をどうぞ…。」
外の喧騒というか地響きというか、を重厚な扉と石組みの分厚い壁で阻み、教会内は静かで厳かな雰囲気で満たされていた。
神前に誓うとの事で、伯爵夫妻は扉の前で待ち、ラートンとイオンウーウァのみが入室し、青と白を基調とした天井が抜ける様に高い教会の中央を静かに進む。
教会内には、種々の青で表現された神の象徴の巨大ステンドグラスから差し込む爽やかな光が満ちていた。
しずしずと、青白いローブを頭から目深に被った神官達がホールの両端に整列し、その間をラートンとイオンウーウァが静かに祭壇に進む。
そうして大神官の前まで来た二人に、大神官がゆっくりと言ってから指環を差し出した。
ラートンに菫色の魔石の付いた指環をイオンウーウァが嵌め、ラートンが濃い色のサファイアが付いた指環をイオンウーウァに嵌める。
「僕の可愛い♡可愛い♡ウーァさん……此れからも宜しくね♪」
「ラァト…宜しくね♡」
感極まったラートンがイオンウーウァの指先にキスをし、指にキスをし、手の甲にキスを長めにする。
そのまま二人は見つめ合い、段々とその瞳に熱が帯びてくる。
ふるり、とイオンウーウァの唇が震え……。
「では、此れにて婚約の儀を終わります。」
そんな二人の雰囲気をリセットするかのように大神官が声を張り、婚約式は恙無く幕を閉じた。
晴れ渡る空の下、イタチ系獣人達が汗を迸らせ、踊り唄う。
屈強な裸の上半身に豊かな胸毛。
縄の様になった髭や毛髪に、燻銀の小さな髑髏や模様を刻んだ飾り玉を通し、あちこちにピアスを開けたり刺青を入れた猛者が、皮のロングスカートや喇叭ズボンを翻して回転し、雄叫び混じりの唄を唄う。
巨獣の皮で作った太鼓を様々なテンポで叩いてリズムを刻み、歪な骨のホルンや笛がびょーびょーと独特の旋律を紡ぐ。
その噎せる様な熱気の中、舞台では刺繍が沢山施された民族衣装で沢山の男女がくるくると踊っていた。
無事に婚約式も終わり、ここから1ヶ月、お祝いの期間となる。
ラートンの腕くらいはあるかという太いソーセージ、グリルされたソーセージ、ハーブの入ったソーセージ。
ソーセージだけでも様々な種類と驚く量が供され、イオンウーウァは目を丸くしてそれらを見つめた。
鶏肉がゴロゴロ入ったサラダやロティサリー、丸焼きなど、次から次へと運ばれて来て、あっという間に大きなテーブルを御馳走で覆い隠してしまった。
「さあさあ、巣穴に帰りし同胞よ!巣穴を共に守りし同胞よ!杯を乾かせ!皿を空に!祝おう!!!」
「「「祝おう!同胞よ!!」」」
グズーリヤ伯爵の言葉に、雷鳴の如く獣人達が杯を掲げて叫ぶ。
こうして、婚約式の宴は始まり、招待客達が凄い勢いで料理を吸い込んでいった。
銅鑼の様な笑い声、地鳴りの様な熱狂。飛び交う肉に乱れ飛ぶ杯。
だが、イオンウーウァはもうすっかり馴れて、ラートンと一緒に肉にかぶりついた。
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