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84: イタチ系獣人達がアップを始めました。
しおりを挟む街と街を繋ぐ街道沿い、夜になれば点々と旅人や商人、冒険者達の夜営の灯りが両脇に続く。
そんな光景がここ最近は少し賑やかになっていた。
ぷぶぉ~~……。ぶぉぉぉ~~♪タンタン……キュッ……ギリギリ…トントントン……。
夜になれば、何処からともなく、誰からともなく……といってもイタチ系獣人からなのだが、楽器を手入れする音が聞こえてくる。
音程を合わすように、二、三度鳴らしてはキリキリ、トントンと調整していく。
そうやって皆、自慢の骨やら角から作った笛を吹き鳴らし、そんな獣人が二人集まればリズムが生まれ、三人集まれば楽曲が始まる。
そのうちに手拍子や足拍子、舞踏で参加するものも現れ、イタチ系獣人でなくても小笛やちょっと懐に忍ばせていた楽器で参加するものもあり、最近の夜の街道は何処も賑やかだった。
太鼓かバイオリンを持つものが現れたらそれはもう宴の始まりで、こうなれば、イタチ系であるなし関係なく、猫も杓子も歌って踊って奏でて、飛び跳ねて体の錆を落とし、鈍っていた音楽センスと舞踏センスに磨きをかけて婚約式の日を楽しみにしていた。
イオンウーウァの名前が菫と葡萄だと聞いて、獣人達の一張羅に菫と葡萄の刺繍や染め抜きが施されていく。葡萄の蔦と菫を描く者、葡萄唐草の様な菫の図案を編み出す者。
革のズボンや腰巻を紫に染める者……。
市場に行けば、葡萄や菫の刺繍の美しいリボンがこぞって店頭に並べられ、美しい深緑や菫色のスカーフや布地が飛ぶように売れていく。
暇さえあれば太鼓を叩き笛を吹き、踊りの輪が出来る賑やかな市場で、酔っぱらいの銅鑼声に負けじと商人たちが声を張り上げる。
「菫と深緑ばっかピカピカで、小伯爵の黄金と紫紺は二十年程前のくすんだ色で良いのかい!?駄目だろう!?さあさあ、見てってくれよ!!」
「さあさあ、どうだい?ほらぁ、この生地良いだろう?こうやって舞えばこんなに艶やかに光るんだ!!」
商人達の人を呼び込む為の拍手が、段々あちこちの笛や太鼓のリズムと呼応してくる。
気が付けば、布地の見本と踊る商人が現れ、商売道具の木箱を叩いて唄いながら商品を説明する商人が現れ……。
「菫菫菫菫菫太鼓違う菫菫菫菫…♪」「布布布布~♪ふーぃ♪布布布~ハッ♪」
「あ~~♪二日酔いに喉荒れ何でもござれ♪ハルピュイアも大好き美声喉飴はセイレーン印~~~♪」
婚約式の二月前には、モフーラ国の何処の市場も、それはそれは賑やかな有り様だった。
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