親無し小太り取り柄無しな田舎娘がある日突然獣人伯爵の運命の番になった話

syarin

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83: 乱痴気騒ぎお祭り騒ぎ。

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バサッバサリッ………


ハルピュイアの国際便が海を渡り、世界各所の魔塔や城へと伝書を運ぶ。

~~♪バドワイザの時期当主~♪
黄金のラートンに~菫の妖精の様な運命の番が~~♪

歌う事が大好きなハルピュイア達が、道中、山奥の修道院の天辺や灯台等に止まって休みながら歌えば、そっとそれに耳を澄ます者がいる。

そうやって、あちこちに流行り歌を届けながら、ハルピュイア達は遠国へと、ラートンとイオンウーウァの婚約式と結婚式の日程を届けた。


ーーーーー
ーーー


「なんと!我らが巣穴の次期守り人に運命の番が……!」


ミャーミャーと海鳥鳴く港で、報せを聞いた隻眼の大男が感慨深げに声を張り上げる。

「野郎共!!武器を磨き、楽器を磨き、身体を磨け!!!
バドワイザの婚約宴まで猛特訓だぁぁ!!!」


   !!!!!応!!!!!


男の声に応え、あちこちで屈強な男共が石斧で貝を打ち鳴らした。



ーーー
ーーーーー


「おおう!我らと同じ穴の貉、バドワイザの次期当主に運命の番となーー!!」

世界の東の果て、秘境と呼ばれる国でも大きな狸の獣人が、ハルピュイアからの伝書に歓喜の声を挙げた。

喜びと共にドン!と自慢の腹鼓を叩いて白木の床をずかずかと進む。

「応!応!貴様ら、急いで酒を集めて参れ!貢ぎ物を!!太鼓を磨いて腕も磨け!!遠国じゃ!連れていけるのは太鼓の上手いヤツだけじゃぁぁぁ!!!」

   「「「はっ!!」」」

嬉しそうに叫ぶ古狸の言葉に、狸獣人の城は上を下への大騒ぎとなった。


ーーーーー
ーーー



そうしてハルピュイアが、吟遊詩人が、ラートンとイオンウーウァの婚約式と結婚式の日程を広めて暫く。

各地では様々な獣人達が祭りの準備に勤しんでいた。

イタチ系獣人達は楽器を磨き、一張羅を磨き、染め直し、刺繍を足したりする。
そうすれば、糸が売れる、染め粉が売れる、布が売れる。
武器屋鍛冶屋が儲かる。となれば、炭が売れる、鉄が売れる。

皆で楽器を吹いて練習すれば話が弾み、宴会になる。
酒が売れる。
肉が売れる。

運命の番おめでとう!と叫べば酒場もいつもの倍儲けが出る。

そうやって、売れる売れる稼げ稼げとイタチ系獣人でなくても好景気に湧き、仕事を頑張っていれば、何だか目出度い気分になって自分達も宴会したくなってくる。

「運命の番様々だ!」

と機嫌良くエールを呷れば、運命の番乾杯!イオンウーウァ様に乾杯!とイタチ系獣人達が次から次へと酒を注いでくれる。

猫も杓子も、連日お祭り騒ぎだった。



「いやぁ、本当におめでたい話だねぇ。」

牛獣人の女将が、厨房で一息入れつつ呟いた。

「全く……休む暇がないよ……。」

「私……こんなに肉団子作ったの初めてよ……!!」

注文をこなしながらヒイヒイと牛獣人のコックが言い、その横でウサギ獣人の見習い娘が泣き言を言う。

「懐かしいね……。今の当主が結婚した時も、次期当主が生まれた時も、こんなだった。そうそ、私も初めての時は腕がパンパンになってあんたみたいに泣き言を言ったもんサー♪」

ささっと洗えるものを洗い、洗ったコップを綺麗に拭いた女将がエールをコップに満たしてカウンターに並べながら言えば、ウサギ獣人がへにょんと耳を垂れさせて嘆いた。

「ふぇーーん!ボーナスと時給アップするからシフト増やせって……こういう事だったんですねー!ふぇーーん!」

「アッハッハ!割に合う給料だろ??頑張っとくれよ!」

そう言うと、女将は出来立ての揚げ物や炒め物を持って颯爽と客席へと出ていき、声を張り上げた。

「あいよー!イタチの旦那!お待ちどうさま!唐揚げセットだよー!番様のバンザーーイ!!」

「「「うおおおー!番様バンザーーイ!!」」」

「「イオンウーウァ様ーーアーー♪♪」」


こうして、各地でお祭り騒ぎを起こしながら、イタチ系獣人達はじわじわとバドワイザの地に集まりつつあった。


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