親無し小太り取り柄無しな田舎娘がある日突然獣人伯爵の運命の番になった話

syarin

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77: 三者三様の夕べ。

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「そんな……お食事はイオンウーウァ様と若様のお二人だけでなさるなんて……。」

隣室でアメリがシクシクと嘘泣きしながらステーキをザクザク切り分けて頬張っていく。

「私もイオンウーウァ様にお肉あーーん♡ってして差し上げたかった…!」

「イヤイヤ、そんなこと、するどころか言っただけで若様にめっためたに噛まれますよ…。」

「ていうか、アメリってそんな性格だったんですか??」

アメリの言葉にバジルが噛まれますよ、と苦笑いし、アンズが邸での澄ました態度とのギャップに驚く。

「まぁ、アナ姉さんからして、仕事の時は普段の肝っ玉おばさんキャラを大分抑えてるらしいから、アメリも他のメイドも、皆素を抑えて仕事していたのかも知れないな……。」

「………イオンウーウァ様にあーーん♡……私もしたい。」

「「「シフォン!お前まで……!」」」

グーマがそれらしい事を言い、シフォンの呟いた言葉に男性陣が驚いたり……。今日も使用人サイドは楽しい晩餐を繰り広げていた。


ーーーーー
ーーー


「………と言うわけで、大人しいものの、道は壊す、作物は荒らしちゃう、ちょっと昼寝…と寝転んで建物を壊す、と厄介者だったホワイトグラスドラゴンだったんだけど、それ以来、こうやって食べて数を調整することで解決しているのさ♪」

「へぇ~~。美味しい解決法だわ♪」

一方、イオンウーウァとラートンの二人も、まったりとドラゴンステーキと会話を楽しんでいた。

最初は切り株の様なその見た目に恐れをなしていたイオンウーウァだったが、ラートンが食べやすい大きさに切ってくれていたのもあり、気がつけば結構な量を胃に納めていた。

今は自分の分のステーキを食べきったラートンに時々お肉をあーーん♡しながらまったりと会話と肉を堪能していた。

「この少し苦い葉野菜のサラダ、美味しいわ♪」

「ふふ、光鬼灯とチーズのカプレーゼも美味しいよ♪ほら、あーん♡」

「ふふふ、ありがとう、ラァト♪あーん♡」

給仕の兎獣人達を胸焼けさせつつ、二人はまったり料理を楽しんだ。


ーーーーー
ーーー


「はぁぁ……どうしてこんな事に……。」

イオンウーウァとラートンがステーキをイチャイチャしながら堪能している頃、懐かしのサピエン国、モの領、スモモ村で、一人の男が溜め息を吐いていた。

暗い室内、月明かりで必死に読んだ手紙には無情にも、娘のマリローズに今後手紙を送るな、と書かれていた。

セイロン領に住まわせて貰えれば、と思ったが、それもダメらしい。
賠償金の援助も断られた。

「まるで、マリローズを忘れて貧しく生きろと言わんばっかりじゃないか……。」

可愛いマリローズ。スモモ村の美しいお姫様。私の可愛い娘。

マリローズの父、ゴーヨクは呟くと、汚い布切れで涙を拭いてからチン!と鼻をかんだ。

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