親無し小太り取り柄無しな田舎娘がある日突然獣人伯爵の運命の番になった話

syarin

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72: これがモカの一週間。

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日曜日に着の身着のまま~
置いてかれて馬車に詰め込まれた~♪

テュリャ テュリャ テュリャテュリャ テュリャ テュリャリャ~♪
テュリャ テュリャ テュリャテュリャリャ~♪

月曜日はおふろに入れず~
火曜日は水汲みさせられた~♪

水曜日は説教ばかり~
木曜日はドレスを焚付にされた~♪

金曜日は泥んこになり~
土曜日は洗濯させられた~♪

お姉様よこれが私の~
一週間の出来事でした~♪

テュリャ テュリャ テュリャテュリャ テュリャ テュリャリャ~♪
テュリャ テュリャ テュリャテュリャリャ~♪


ーーーーー
ーーー


「………ぃ、…おい!モカ!起きろ!!もう着くぞ!」

「ほわっ!?」

肩をぐいぐいと揺すられて、モカは眠い目をパチパチさせながらキョロキョロと周りを見回した。

どうやら、ぐっすり眠り込んで夢を見ていたようだった。
何だか切ないメロディで歌っていた気がするが、どんな夢だったかはラーテル獣人のがなり声で吹き飛んでしまった。

そんなモカにお構いなしにラーテル獣人のケインが鞄をぐいっと押し付ける。

「ほわっ!じゃねぇ、そろそろ荷物を纏めておけよ!」

(え…着く!?……やっとおうちに着くの!?)

現状を認識したモカは、じわじわと広がる喜びに打ち震えた。

急いで荷物を纏めるが、少ない着替えもラーテル獣人が気を利かして洗濯を手伝ってくれて細片になってしまったり、ボロボロなのを何とか広げて乾かすも風に飛ばされてぐちゃぐちゃになって間違えて焚付にされてしまったりと、様々な理由で色々な持ち物が消えていったので、すぐに纏めることが出来た。

ガラガラと懐かしい邸宅の門を潜る荷馬車からそわそわしながらエントランスを見つめる。

バジャーの妻でモカ達の母であるモーリーが、そのモカを老けさせて横に広げたような巨体を揺らして出迎えてくれていた。
その事に、モカは飛び上がるほど嬉しくなる。

(わぁーーん!ママ!会いたかった!!
この熊とラーテルにどんだけ酷い目に遭わされたかゼーーンブ話してしっかり罰を受けさせて貰わなきゃ!!)

なんて思ったものの、モカの思惑はすぐに潰れるのだった。

「まぁまぁ、冒険者様方!!うちの我が儘じゃじゃ馬娘を連れてきて下さり有り難うございます!!ささ、お疲れでしょう!?どうぞ休んで行って下さいまし!ささー♡」

「初めまして!ずっとバドワイザに訪れたかったんです!温かい歓迎を有り難うございます!」

「ああ、これはこれはどうも、有り難うございます…。」

モーリーの言葉にラーテル獣人のケインがガチガチに緊張しながら嬉しそうに大声で良い、熊獣人のビアがへこりと頭を下げる。

そうして和やかに三人が屋敷に入り、モカは一人エントランスに取り残されてしまった。

「ま、まま……?」

使用人が荷馬車を裏に運んで行き、メイドがモカを遠巻きにして荷物を運んでいく。

モカは、暫く放心していたが、我に返ってのしのしと自室まで一人で帰った。

「く、悔しくなんかないもん!悔しくなんか!ないもぉぉん!!」

部屋に戻ったモカはすぐに風呂に入りたいと駄々を捏ね、風呂場に半日閉じ籠って何度もお湯を替えさせたが、メイド達は一切文句を言わず、お湯に垢が浮かばなくなるまで根気よくモカに付き合った。

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