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71: そして日常に戻る。
しおりを挟むそんなイオンウーウァの感動に気付かず、フクロウ獣人の支配人はアセアセとグーマとラートンに話し掛ける。
「ホよ!妖精のお土産は貴重さが判りにくい場合もあります!鑑定士をお呼びしましょうか??ホフゥ……」
「おお、流石妖精の森の近くなだけあって皆反応が早いな、頼むよ。後……「お待たせしました!」「お待たせしましたぁ!!」「今晩は!ハァハァ絵師を急ぎで所望とか!ハァハァ」
フクロウ支配人の提案にラートンが頷いた所に、バタバタと外から幾人もの獣人達が駆け込んできた。皆一様に紙やら筆やら画材を抱えて息を切らしている。
「ハァハァ…い、急いだが…三着か……ハァハァ…う"っ脇腹が…!!」「…ハァハァ、お待たせ…てクソッ間に合わなかったかぁ…ゼェハァ……」
後から後から、続々と絵師達が駆け込んでくる。
彼等は、妖精の森を出た辺りでラートンが近くの商人に金を渡して集めて貰った絵師達で、早い者勝ちという言葉を聞いて皆急いで来たのだった。
「おお、ご苦労様、早く来てくれて助かるよ♪早速だが僕の奥さんのこの美しいドレス姿を余すところ無く記録してくれ!枯れる前に記録して、後で画家に大きな絵画にして貰うんだ♪♪
だから、各部詳細に頼むよ!お金はとりあえず金貨一枚、後は素描一枚毎に値段をつけるよ!」
ラートンの言葉に絵師達からおお、と歓喜の声が上がる。
こうして、沢山の絵師達を従えて、ラートンとイオンウーウァは宿の一室へと向かったのだった。
ーーーーー
ーーー
ー
「ふぁ………流石に眠い。」
「うひぇっ!……若様、おはようございます。」
明け方、夜中まで絵師達にあれこれ注文を付けていたラートンがのそりと背後に現れ、バジルは飛び上がった。
「んーー……おはよう。可愛い僕のイオンウーウァが起きる前に書類を片付けたいから、バジル、手伝ってくれるかい?」
かしこまりました、とバジルが慌てて書類を出してくる間に、ラートンがささっとお茶を二人分淹れてテーブルに腰かける。
「おや、若様おはようございます。今日はお早いですね?」
そこにやってきたグーマが意外そうな声を出した。
「んー。昨日妖精の森でシゴかれちゃったからね…。朝の鍛練は休んだんだよ……。」
本来なら、外出先であっても朝の鍛練を欠かさないラートンだったが、昨日妖精の森で激しい運動をした上、夜中まで絵師達にあれやこれや注文を付けていたので、流石に今朝は眠そうだった。
いつもとは違う覇気の無い喋り方に、バジルはクスリと笑ってしまった。
(スッゴク眠そうなのに、鍛練は休んでも仕事は先に片付けたいんだな……。)
イオンウーウァと日中ゆっくり過ごしたい為に、どんなに眠くても仕事は先に終わらせたい。
そんなラートンの根性に感心しながらバジルは手元の書類を選り分けた。
「それにしても、昨日のドレスは凄かったですな……。保存できないのは残念ですが、すべて貴重な薬草だそうで……。またイオンウーウァ様の資産が増えました♪フフフ、順調に増えてますぞぉ♪♪」
お金を増やすことが大好きなグーマが、イオンウーウァの昨日のドレスと髪に生えていた花々を鑑定した目録を見詰めてニマニマと笑う。
「若様の尻尾に付いてた精霊の粉とやらや雫なんちゃらも凄かったですし、いやぁ、いやぁ、この0の多さ堪りませんなぁ♡」
そう言うグーマの笑顔は狒々親父そのものだったので、幾ら金が好きでも俺はあんな顔しないように気を付けよう、とバジルは心に刻み込んだ。
「まぁ、素敵なベールも貰えたし、貴重な花も沢山貰ったから良いんだけど、その金額に見合う苦労はした気がするよ……。」
ゲンナリした顔で呟くラートンをカラカラと笑ってグーマとバジルは書類を片付けて行った。
その後、寝ぼけ眼のイオンウーウァと一緒にゆっくり朝食を食べたラートンは、馬車でゆらゆら揺られながら爆睡し、折角の時間を無駄にしてしまったと嘆きつつ邸に戻ったのだった。
「まぁまぁ、婚約式までまだまだ時間がありますし、婚約した後も時間はたっぷりあるんですから、焦らず色んな所に行けばよろしいでしょう。」
だが、そう慰めるグーマに、そうだ!婚約式の準備をしなきゃね!とすぐに立ち直ったラートンは、弾む足取りで執務室へと吸い込まれていき、そんな感じでバドワイザ家の日常は進んでいった。
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