67 / 128
67: ちょっと見てみたかったから。
しおりを挟む「ふぅん………これが噂の運命の番かぁ。ああ、深い森のすぐそばで、ずっと一人で暮らして、森の恵みで命を繋いでいたから……こんなに妖精や精霊との親和性が高いんだね♪へぇ~……今は幸せそうだ。良かったじゃないか♪」
イオンウーウァの記憶を読み取ったらしき妖精が呟けば、沢山の小さな妖精達が物珍しそうにイオンウーウァを覗き込む。
"最近、遊歩道にやってくる獣人達が何かと噂する、1つの人族の村から出た二人の運命の番を見てみたい"
イオンウーウァがこんな妖精の森の奥深くに導かれたのは、たったそれだけの理由だった。
好奇心旺盛で噂好きな妖精達が、そう囁き合ってた所にひょっこり現れた噂の主。
ちょっと近くで良く見てみたいな~、と気軽に連れてくる。それが妖精のやり方だった。
因みに、蝶にイオンウーウァの幻影をくっつけて迎えに来させてるラートンを、様々な妖精達が転ばそうとしたり、川に落とそうとしたりと悪戯しまくってるのも、ただ面白そうだからである。
それが妖精という生き物だった。
「いやぁ、片っぽだけでも見れて良かったねぇ♪凄いね、♂の方も懸命に♀を追っかけて来るじゃないか♪面白いねぇ♪楽しいねぇ♪」
泉の水面に、必死に粘土板をかい潜って進むラートンの姿が映し出される。
妖精達はそれをとても嬉しそうに眺めた。
「あははははは!こいつ中々川に落ちないなぁ!誰かもっと上手く突き飛ばして来いよ!」
「あの爪結構痛いし、アイツ勘が良いんだよな…。てか、お前が行けよ!」
「そーよそーよ!私達はもう行ったわ!避けられて私が川に落ちたのよ!」
一人の妖精の言葉にあちこちから声が上がる。あの不思議な長方形の粘土板は妖精が変化した姿だったのだ。
「はいはい、割と楽しんだし、そろそろ返してあげようね♪生き物は揶揄い過ぎると死んじゃったり、怒って本気で攻撃してきたりするから気を付けないと……。森を燃やされたら流石に困るよ…。」
「え~~?もう??」「ちぇっ……つまんなーい!」
「お、いたいた、へーこれが?へー♪」「おお、これが噂のへぇーー!」
ぷーぷーと文句を言う妖精達を宥める大きな妖精のもとに、ふわりと光が集まったと思ったら同じ大きな妖精が数人出現し、これまた物珍しそうにイオンウーウァを眺めた。
「可愛いー♪えいっ、ぷにぷに♪」
時に頬をぷにぷにとつついてみたりして、満足すれば去っていく。
それはまるで道で子猫を見つけたと聞いて見に来たり触りに来たりと子供が集まってくるような感覚だった。
「♂の方はもう良いの??」
イオンウーウァを抱いている虹色の蝶の羽の妖精が聞けば、数人の大きな妖精たちがニコニコと頷く。
「うん、十分楽しませてもらったよ♪可愛いんだ~♡♀を心配して一生懸命追い掛けて来るんだよー!」
「あんまりイジメちゃ可哀想だからね、そろそろ此処に着くよ。」
「冷たい水に落ちて慌てるところ見たかったんだけどなー…」
口々に言う妖精たちがチラリと1つの方向を見ると、イオンウーウァ!!待って!!というラートンの声が遠くそちらの方から聞こえてくる。
「もう来た、必死で可愛いなぁ♪♪」
「ふふふ、話題の運命の番、中々面白かったねー。」
アハハあははははフフフ……
妖精たちはイオンウーウァをそっと柔らかい苔の絨毯の上に寝かせると、笑い声だけを残して消えていった。
0
お気に入りに追加
422
あなたにおすすめの小説


【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。

【完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。
ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの?
お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。
ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。
少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。
どうしてくれるのよ。
ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ!
腹立つわ〜。
舞台は独自の世界です。
ご都合主義です。
緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。
政略結婚だと思っていたのに、将軍閣下は歌姫兼業王女を溺愛してきます
蓮恭
恋愛
――エリザベート王女の声は呪いの声。『白の王妃』が亡くなったのも、呪いの声を持つ王女を産んだから。あの嗄れた声を聞いたら最後、死んでしまう。ーー
母親である白の王妃ことコルネリアが亡くなった際、そんな風に言われて口を聞く事を禁じられたアルント王国の王女、エリザベートは口が聞けない人形姫と呼ばれている。
しかしエリザベートの声はただの掠れた声(ハスキーボイス)というだけで、呪いの声などでは無かった。
普段から城の別棟に軟禁状態のエリザベートは、時折城を抜け出して幼馴染であり乳兄妹のワルターが座長を務める旅芸人の一座で歌を歌い、銀髪の歌姫として人気を博していた。
そんな中、隣国の英雄でアルント王国の危機をも救ってくれた将軍アルフレートとエリザベートとの政略結婚の話が持ち上がる。
エリザベートを想う幼馴染乳兄妹のワルターをはじめ、妙に距離が近い謎多き美丈夫ガーラン、そして政略結婚の相手で無骨な武人アルフレート将軍など様々なタイプのイケメンが登場。
意地悪な継母王妃にその娘王女達も大概意地悪ですが、何故かエリザベートに悪意を持つ悪役令嬢軍人(?)のレネ様にも注目です。
◆小説家になろうにも掲載中です

どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話
下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。
御都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのにいつのまにか溺愛ルートに入りそうです⁉︎
sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。
遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら
自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に
スカウトされて異世界召喚に応じる。
その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に
第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に
かまい倒されながら癒し子任務をする話。
時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。
初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。
2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。

【完結】政略結婚はお断り致します!
かまり
恋愛
公爵令嬢アイリスは、悪い噂が立つ4歳年上のカイル王子との婚約が嫌で逃げ出し、森の奥の小さな山小屋でひっそりと一人暮らしを始めて1年が経っていた。
ある日、そこに見知らぬ男性が傷を追ってやってくる。
その男性は何かよっぽどのことがあったのか記憶を無くしていた…
帰るところもわからないその男性と、1人暮らしが寂しかったアイリスは、その山小屋で共同生活を始め、急速に2人の距離は近づいていく。
一方、幼い頃にアイリスと交わした結婚の約束を胸に抱えたまま、長い間出征に出ることになったカイル王子は、帰ったら結婚しようと思っていたのに、
戦争から戻って婚約の話が決まる直前に、そんな約束をすっかり忘れたアイリスが婚約を嫌がって逃げてしまったと知らされる。
しかし、王子には嫌われている原因となっている噂の誤解を解いて気持ちを伝えられない理由があった。
山小屋の彼とアイリスはどうなるのか…
カイル王子はアイリスの誤解を解いて結婚できるのか…
アイリスは、本当に心から好きだと思える人と結婚することができるのか…
『公爵令嬢』と『王子』が、それぞれ背負わされた宿命から抗い、幸せを勝ち取っていくサクセスラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる