親無し小太り取り柄無しな田舎娘がある日突然獣人伯爵の運命の番になった話

syarin

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67: ちょっと見てみたかったから。

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「ふぅん………これが噂の運命の番かぁ。ああ、深い森のすぐそばで、ずっと一人で暮らして、森の恵みで命を繋いでいたから……こんなに妖精や精霊との親和性が高いんだね♪へぇ~……今は幸せそうだ。良かったじゃないか♪」

イオンウーウァの記憶を読み取ったらしき妖精が呟けば、沢山の小さな妖精達が物珍しそうにイオンウーウァを覗き込む。

"最近、遊歩道にやってくる獣人達が何かと噂する、1つの人族の村から出た二人の運命の番を見てみたい"

イオンウーウァがこんな妖精の森の奥深くに導かれたのは、たったそれだけの理由だった。

好奇心旺盛で噂好きな妖精達が、そう囁き合ってた所にひょっこり現れた噂の主。
ちょっと近くで良く見てみたいな~、と気軽に連れてくる。それが妖精のやり方だった。

因みに、蝶にイオンウーウァの幻影をくっつけて迎えに来させてるラートンを、様々な妖精達が転ばそうとしたり、川に落とそうとしたりと悪戯しまくってるのも、ただ面白そうだからである。

それが妖精という生き物だった。

「いやぁ、片っぽだけでも見れて良かったねぇ♪凄いね、♂の方も懸命に♀を追っかけて来るじゃないか♪面白いねぇ♪楽しいねぇ♪」

泉の水面に、必死に粘土板をかい潜って進むラートンの姿が映し出される。

妖精達はそれをとても嬉しそうに眺めた。

「あははははは!こいつ中々川に落ちないなぁ!誰かもっと上手く突き飛ばして来いよ!」

「あの爪結構痛いし、アイツ勘が良いんだよな…。てか、お前が行けよ!」

「そーよそーよ!私達はもう行ったわ!避けられて私が川に落ちたのよ!」

一人の妖精の言葉にあちこちから声が上がる。あの不思議な長方形の粘土板は妖精が変化した姿だったのだ。

「はいはい、割と楽しんだし、そろそろ返してあげようね♪生き物は揶揄い過ぎると死んじゃったり、怒って本気で攻撃してきたりするから気を付けないと……。森を燃やされたら流石に困るよ…。」

「え~~?もう??」「ちぇっ……つまんなーい!」


「お、いたいた、へーこれが?へー♪」「おお、これが噂のへぇーー!」


ぷーぷーと文句を言う妖精達を宥める大きな妖精のもとに、ふわりと光が集まったと思ったら同じ大きな妖精が数人出現し、これまた物珍しそうにイオンウーウァを眺めた。

「可愛いー♪えいっ、ぷにぷに♪」

時に頬をぷにぷにとつついてみたりして、満足すれば去っていく。

それはまるで道で子猫を見つけたと聞いて見に来たり触りに来たりと子供が集まってくるような感覚だった。

「♂の方はもう良いの??」

イオンウーウァを抱いている虹色の蝶の羽の妖精が聞けば、数人の大きな妖精たちがニコニコと頷く。

「うん、十分楽しませてもらったよ♪可愛いんだ~♡♀を心配して一生懸命追い掛けて来るんだよー!」

「あんまりイジメちゃ可哀想だからね、そろそろ此処に着くよ。」

「冷たい水に落ちて慌てるところ見たかったんだけどなー…」

口々に言う妖精たちがチラリと1つの方向を見ると、イオンウーウァ!!待って!!というラートンの声が遠くそちらの方から聞こえてくる。

「もう来た、必死で可愛いなぁ♪♪」

「ふふふ、話題の運命の番、中々面白かったねー。」

アハハあははははフフフ……

妖精たちはイオンウーウァをそっと柔らかい苔の絨毯の上に寝かせると、笑い声だけを残して消えていった。



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