親無し小太り取り柄無しな田舎娘がある日突然獣人伯爵の運命の番になった話

syarin

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43: ポロリと侍女候補

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「はっ…!」

船に設置されたビーチチェアの上でグーマが目を覚ました時には、既に日は高く、昼飯時になってしまっていた。

「おや、起きなすったか…。グーマの兄さん、おはよう。」

声を掛けてきたサーペントの世話係を見て、グーマはそっと額の濡れ布巾に触れ、大体の状況を察した。

(気絶したのか……。やれやれ…。)

「グーマの兄さんは相変わらずだねぇ…。番様はあの後、第二大漁丸も呼び出して一人で騎獣できる様になったよ♪流石若様の運命の番だねぇ!」

気の良い中年ラッコ獣人がニッカリ笑って指差す先ではラートンとイオンウーウァが仲良くサーペントに乗って波間をポンポンと弾むように進んでいた。

「キャーー!」ザッブーーン!!

「おっと、又番様がポロリしちまった!」

揺れに耐えれなかったらしきイオンウーウァが第一大漁丸の背中からコロリと転がり、派手な音を立てて海面に落ち、サーペントの世話係が声をあげた。

「やめろ。語弊がある!」

慌ててグーマが世話係を怒るが、残念ながらポロリ呼称はかなり浸透してしまっていた。
イオンウーウァは何故か本当に、ころっ、とか、ぽろっ、といった感じで落ちるので、ポロリという表現がピッタリだと船の人員の誰もが思っていたのだ。

「あ、起きたんですか、グーマ様!番様、大分騎獣がお上手になりましたよ!」

「どんだけポロリしても水に落ちるだけだから怪我しなくて良いですよね♪メキメキ上達してらっしゃいます♪」

「はぁ、落ちても大丈夫だと判ってても見てると肝が冷えるよ……。だが、一人でも騎獣出来る様になればそろそろ泊まりの外出も出てくるぞ、イオンウーウァ様の侍女をどうするか決めねば…。」

グーマの言葉に、心配性ですね、と言いながら執事見習い達は侍女か、と考え込んだ。

「心配性とかではなくてだな。考えて見てくれ…鎖帷子の性能アピールとかで絶対に大丈夫だと判っていても目の前で魔導チェーンソーで袈裟斬りされてる人を見たら、何かこう色々縮み上がるだろう?それと一緒だ……。
専属メイドよりは、番様の事業の補佐というか管理なども任せたいから侍女を雇うのが望ましいだろうな…。」

「えー?絶対に大丈夫なら、寧ろワクワクして凝視しない??
うーーん。事業の管理なら、やっぱりお前の妹位しか候補がないんじゃないか?」

心配性ではないと言うグーマに、執事見習いの一人、赤毛のアンズが笑いながら返し、侍女候補の話題を隣の黒白ヘアのバジルに振る。
実はアンズはアナの10男、バジルはバジャーの8男で、どちらもグーマの可愛い甥っ子である。

「シフォンですか?…確かに、あの子は男と同じ様に商会で働かせて欲しいと何度も若様に直談判しては突っぱねられてた位なので、あちこち飛び回って忙しくなりそうな侍女ってのはピッタリな気もしますが……色々頑固で癖が強いので不安ですね……。」

グーマは、バジルの妹であり可愛い姪っ子である令嬢を脳裏に浮かべた。
侍女やメイド職は嫌だ、私は兄達の様に荷物運搬の護衛として遠征したり、交渉や書類作成等の仕事がしたいんだと熱く語っては、危ない、大変だと周りからダメ出しされ、口をへの字にしていた姿がありありと思い返される。

(遠征に着いていくイオンウーウァ様のお世話、とかじゃ駄目かなぁ…。いや、私共執事も若様の業務補助から着替えや入浴補助までするし、その辺りを主張すれば……。)

輝く太陽と青い空、白い雲。

遊ぶのにもってこいな天候の中、三人はう"ーーんと呻き、考え込むのだった。
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