親無し小太り取り柄無しな田舎娘がある日突然獣人伯爵の運命の番になった話

syarin

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41: 特別な呼び名と朝ルーティン

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もそもそとラートンの腕の中でイオンウーウァが小さく動く。
それだけでラートンはとても幸せになれた。

「ねぇ、イオンウーウァ…?僕の可愛い番さん……。」

良い感じに疲労が性欲を脳の奥の奥底に封じ込め、ラートンはうとうとしかけるのを何とか耐えながらイオンウーウァに声をかけた。
もう後少しで寝そうだが、何としても眠る前に伝えなければいけない事があったのだ。

「僕だけがイオンウーウァってお名前で呼べるのかと思ってたら、皆が君の事をお名前で呼ぶんだもん……僕はちょっとジェラシーだよ…。
ねぇ、可愛いイオンウーウァ?僕だけが呼ぶことを許された、特別な愛称で呼んでも良いかい?」

枕にした腕の筋肉に優しく響く低い声にうっとりしながら眠りかけていたイオンウーウァが、ちょっと拗ねた声色にパチリと目を開いてラートンの顔を見上げる。

「愛称…?」

「そ、僕だけが呼ぶ、ね…。」

少しドキドキしながらイオンウーウァが頷けば、ラートンがやった♡と小さくガッツポーズして見せる。

「……ウーァって呼んでも…?」

囁く様にいうラートンに、イオンウーウァがこくりと頷く。
さらりと揺れる髪を、そっと後ろに流し、その指通りの滑らかさを味わいながらラートンは微笑んだ。

「良い?…嬉しいな♡……僕だけだからね?ウーァって呼んで良いの…」

「…うん……ラー様だけ……。」

イオンウーウァの肯定の言葉に、ラートンが歓喜してギュッ♡とイオンウーウァを抱き締める。

「嬉しいな♡僕の可愛いウーァ♡♡ウーァちゃん♡……ねぇねぇ、僕の事もラァトって呼んでよ…♡」

様は要らないよぉ…と布団の中でバタバタと尻尾を暴れさせながらラートンが言えば、イオンウーウァがにこりと頷く。

「らぁと……。」

「ウーァ……♡」


「……ラァト♡」

「うーぁ♡」


「…ラァト♡♡」

「ウーァ♡♡」


クスクス…もそもそと、二人は何度も互いを呼び合い、鼻と鼻で突っつき合い、眠気の限界まで啄むように互いの唇にキスし合った。

「おやすみなさい、ラァト♡」「おやすみ、ウーァ♡♡」


その日は二人とも、見た夢まで甘かった。






ーーーーーー
ーーー


「おはよう、ウーァ♡♡僕の可愛い番さん♪」

「…ぁふ………ぉぁょぅ…ラァト…」

早朝、優しい声と顔面に降るキスの雨で夢の中から浮上したイオンウーウァが半ば夢を見つつもにゃもにゃと挨拶を返す。

そんなイオンウーウァをメイド達がテキパキと起こしてベッドから出して身繕いしていく。
その様子を愛しそうに眺めながらラートンは首に掛けただけだったタイをさっと結んでいく。だが、メイドの一人が慌ててほどいて一から結び直した。

「若様、下手に結んだらシワが付きますからちゃんとグーマ様達か私共メイドに結んでもらってくださいね!」

「後……そろそろ、お出掛けが長くなってもイオンウーウァ様が耐えれる程お元気になられて来ましたし、専属侍女を探してくださいませ…。」

付き掛けたシワをキレイに伸ばしてからシュルシュルと結んでいくメイド。
口が暇だったのか、そうそう、と思い出したようにラートンにイオンウーウァの侍女を雇えと言い出した。
ああ、そうだねぇ、とラートンが相槌を打つと、途端に他のメイド達の口からも賛同の意見が滝の様に溢れてきた。

「そうそう、お屋敷を出る時はこうやって私共が整えられますが、お泊まりした際や途中で装いが乱れてしまった際に直せる人が付いてないと…。」

「それだけなら誰かを専属メイドにすれば済みますが、そろそろ毟り取ったものの管理も必要でございましょう?」「そうそう!」「そうよね!」「任せられる専属侍女を雇うか、専属メイドと執事にするのか、何かしらご判断頂かないとだわ。」「そうよそう!」


「「「「なるはやですよ、若様のお仕事ですからね!!」」」」


イオンウーウァの髪を結ったり、ドレスの背中を留めたりしながら盛り上がり、最後に声を揃えてラートンに詰め寄ったメイド達に、ラートンは耳を寝かせて頷いた。

「わ、判った。なるべく早く対応するよ……。」



そうして乗り込んだ馬車で、ラートンは眠りこけるイオンウーウァを抱き締めながら、とっくりと物思いに耽るのだった。




「侍女かぁ……う"ーーーん……。」




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