親無し小太り取り柄無しな田舎娘がある日突然獣人伯爵の運命の番になった話

syarin

文字の大きさ
上 下
37 / 128

37: 帰宅

しおりを挟む


「おかえり~!ラートン!お嫁さん!久し振りに二人の顔を見れた気がするね!もう毎日飛び回っちゃって…、私は淋しいよ~。お嫁さんは今日も可愛らしいね♪ラートンたら幸せ者d「ギャァァウウウウ…!僕のイオンウーウァを見るな!近寄るな!父上あっちいけ!!」

好みが似ているであろう血が近い貴方が番ちゃんを褒めたらラートンが威嚇するって、何回囓られたら覚えるのかしらね……。番ちゃん♪今日もお疲れ様ねぇ~。さ、お夕飯に行きましょ♡」

バドワイザ邸についたラートンとイオンウーウァを、朗らかな笑顔で伯爵夫妻が迎える。

少し余計な事を言ってラートンに囓られているが、伯爵の言う通り、最近ラートンとイオンウーウァの二人は各地を忙しく飛び回っていた。

勿論理由は、ラートンが片時もイオンウーウァと離れがたく、そして体力を使いきって倒れる様に眠らないと色々我慢出来ないからである。

毎朝、夜明けと共に起きるラートンが、朝の鍛練やちょっとした書類仕事に朝食を終えて出掛ける直前にイオンウーウァは起こされ、メイドたちが目にも止まらぬ早さで身繕いし、韋駄天丸や明けの明星丸や馬車に乗せられて二度寝したり食事をしたりして目的地まで揺られていく。
最近、その様なスタイルがイオンウーウァの日常になりつつあった。

ラートンが仕事で行く先々にイオンウーウァも一緒に行き、その近隣で観光と種々のアクティビティ、グルメを楽しむのだ。
毎日がデートで、毎日が旅行だった。

そうして仕事とデートで充実した一日を送り、イオンウーウァを抱いたり背中に乗せたりして負荷をプラスした筋トレで体力を使い果たしてから入浴。
そして最後、寝る前にイオンウーウァをたっぷりマッサージして、イオンウーウァ成分をたっぷり補給したらベッドに飛び込んであっという間に眠りにつく。

これが紳士ラートンの大好き♡♡なイオンウーウァを襲わない為に編み出した秘策だった。

毎日、同じベッドで眠りにつくものの、抱き締めてキスを軽く交わすだけで耐えれるのは、偏にラートンの、襲う気が起きない様体力を0にする圧倒的努力と色々な忍耐の賜物だったのだ。


「今日は何処に行ってきたの?」

ラスカリー伯爵夫人の問い掛けにイオンウーウァは少し思い出すようにしながら答えた。

「えっと……チーズの産地のお山で……。」

「ああ、アルペソね♪じゃぁ、私の好きなウォッシュチーズとグーズの好きなミモレットと一緒に、アルペソのしょっぱーいブルーチーズもアペリティフに出しましょうか。」

「勿論、心得ております…。」

ラスカリーがニコニコと言えば、隣に付き従っていたメイドの一人がニッコリ返す。
どうやら、従業員にも土産として配られるブルーチーズが凄く楽しみなのを隠せない様子だった。

「フフフ、アルペソのブルーチーズは少し香りの強い草を食べる山羊の乳で作られててね、酔っ払うかと思う程に強い香りとしょっぱさ、そしてザラリとした青カビがたっぷりで……♡とっても美味しいのよ~♡♡って、番ちゃんは今日アルペソで沢山試食してきたんだったわね、どう?好みのチーズ屋さんはあった??」

ラスカリーの言葉にイオンウーウァがニッコリ頷けば、じゃぁ、今夜は貴方の好みも知れるのね♪嬉しいわ!っと笑いながら食堂の扉を開けた。

ラスカリーのその言葉を何だか嬉しく思いながら、イオンウーウァは口を開いた。

「ラスカリーお、お義母様…?……あの、実は……。」


「んまぁぁぁ!!!私の事をラスカリーおかぁさまって呼んでくれたわぁぁぁ!!!」

「な、何だってーーーーー!??」



イオンウーウァと呼んで欲しい。

イオンウーウァはそう伝えたかったのだが、ラスカリーとグズーリヤの絶叫に阻まれ、伝えるにはもう暫く待たなければならなかった。



しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

転生したらチートすぎて逆に怖い

至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん 愛されることを望んでいた… 神様のミスで刺されて転生! 運命の番と出会って…? 貰った能力は努力次第でスーパーチート! 番と幸せになるために無双します! 溺愛する家族もだいすき! 恋愛です! 無事1章完結しました!

【完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る

金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。 ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの? お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。 ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。 少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。 どうしてくれるのよ。 ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ! 腹立つわ〜。 舞台は独自の世界です。 ご都合主義です。 緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

処理中です...