親無し小太り取り柄無しな田舎娘がある日突然獣人伯爵の運命の番になった話

syarin

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24: グーマの反省と緑の唇カップル

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「すみません、番様…。いけませんね、小さい頃から世話をさせて頂いていたせいか、このグーマ、若様がいつまでもヤンチャ坊主に見えてしまいます…。
もう大人で、大切な番様を危険に晒さない分別はついてらっしゃるというのに……。」

しんみりとした笑みを浮かべて言うグーマに、ふと、イオンウーウァは昔祖父が父に小言を言っていたのを不意に思い出した。

(そう言えば、初めてあったおじいちゃまは私には優しかったけど、パパにはすぐお説教ばかり言って、でも、とっても仲良しなのよってママが……。ずっと忘れてたのに、最近パパやママのこと、思い出すな…。)

そんな事を考えながらイオンウーウァがグーマに微笑めば、グーマがほっとしたように笑ってから、抹茶金時パフェを小さなスプーンの中に如何にバランス良く配合して掬うか奮闘しているラートンへ

「まぁ、でも、気を付けてたってこっちが泡吹く様な事平気でするんですから!もうちょっと穏やかにしてとお説教するくらい罰は当たりません!」

と言って締め括った。

その言葉に、先日グリフィンに乗った時に二人でフォール&キャッチを楽しんでいたら下が騒がしかったのを思い出したラートンが、

「グリフィンの事か……」

と苦笑すれば、イオンウーウァはニコニコと頷いた。

「あれ楽しかったわ♡ピューーンって落ちて、キャッチ!って♪またやりたい♡」

なんて嬉しそうに言うものだから、するなと言えなくなってしまったグーマに、ラートンは苦笑した。

「グーマ、次からはあれをやる前に魔法か何かで報せるよ…。」

そう言ってラートンは、会話の間にぐんぐんと体積を減らしていった宇治金時抹茶パフェの最後の一口をイオンウーウァの口に運ぶと、その緑色に染まった唇を愛しそうにぺろりと舐め上げた。

「よぉし!僕の可愛いお姫様♡次は西側を攻めるよ!西側は高級服や家具、寝具や宝石店が多いんだ!楽しみだね♪」

「さっきのお話のキノコの家具が見てみたいわ!」

ラートンの言葉にイオンウーウァが今流行のキノコを模した家具シリーズが見たいとはしゃぎ、グーマはイオンウーウァのその明るい笑顔にホッと嬉しい気持ちになった。

(番様、最近本当に良く笑われる様になったな……。)

「ふぅむ……これだけの明るい性格を見る影もなく潰していたんだ、やはり此処は900とか言わずに1500位請求しておこう。と、すると、モ領の中でも辺境のスモモ村等では購えない金額になるからして……。しゃしゃり出てくる領主はこの件の不手際で……ブツブツ」

「ぅゎ……聞いたか…?グーマ様、ギュウギュウに搾り取った後の滓まで利用する勢いだぞ♪」

「楽しみだな♪何処まで搾り取れるのか…。」

今やバドワイザ邸のアイドルとなったイオンウーウァの為の報復としても、執事見習いとしてグーマの手腕が学べる機会としても楽しみだと囁きながら、使用人2人もグーマと一緒にラートンとイオンウーウァの後に続いた。


先頭で緑の唇をした二人がイチャイチャしているのをまるで、春の花を束ねたブーケでも眺めるかの様に穏やかな笑顔で眺める三人の部下の姿は「バドワイザ小伯爵の運命の番は人族だが、使用人達とも良好な関係を築けているようだ」とこれまた好奇と賞賛の意を持って人々の口に登り、瞬く間に国中に広まった。



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