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22: そして伝説へ。(モブ回)
しおりを挟む「あら、知らないのも無理ないわ。」
テレサの疑問に、私は知ってるけど♡と自分の情報通ぶりにニンマリしながらルイーザは話し出した。
「テレンス様から聞いたんだけど、ライオン獣人なのにたてがみが無くて…。此処だけの話、そのせいで公爵家での扱いも要らん子扱い、いつまで経っても子供扱い&縁談も皆無。本人もコンプレックスから社交の場には一切出てこない。何年も前に辺境伯騎士団に入団してそれから一度も王都には帰ってなかったけど、今回は辺境伯から言われて渋々模擬試合に参加してたんですって。ずっと兜を被って顔を隠してたみたいだけど、ぶつかった衝撃で顔を隠してた部分が取れてね、それで、ラミテル様はアナグマ獣人だけど、ラーテル獣人の隣国辺境伯の血が超濃いあの気性でしょ?で、たてがみが無いとか、気にするのは同じライオン獣人だけじゃない?そんな訳で、運命の番って訳ではないけど、種族を越えた一目惚れだったらしいラミテル様がぐいぐい口説いて婚約に漕ぎ着けたんですって♡ラミテル様が持ってる騎士爵か余ってる爵位を貰って独立して、レモンド様が婿入りするんですって♡♡イタチ系獣人はたてがみなんか気にしないから、レモンド様もその方が絶対良いわよね~♪………ふぅ。」
一気にそこまで喋ると、ルイーザは紅茶のおかわりをグイーーッと飲み干し、満足の溜め息を吐いた。
ラミテルとレモンドの出逢いを目撃して以降、婚約者のテレンスに口止めされ、ずっと誰かに話したくてウズウズしていたのだ。
先程、騎士団に顔を出し、二人は婚約したので誰かに話しても良いよ、とテレンスから解禁を言い渡され、早く誰かに言いたいと家路を急いでいた時に聞こえた妹の笑い声。
此処であったが百年目!とばかりにうら若き乙女達の輪に乗り込み、喋り散らしたルイーザは今、非常に満足していた。
そんなルイーザの前に、ビッグニュースの御礼とばかりに、テレサの友人達や他の客、果てはカフェの支配人からもサービスとして、様々なケーキや焼き菓子、紅茶のおかわり等が運ばれて来る。
それに気を良くしたルイーザは、美味しそうなマカロンを一つ頬張りながら、ゆったりと口を開いた。
もう一つ、とっておきを教えてあげることにしたのだ。……といっても、それはもしかしたら既出かもしれないネタだったが……。
「そう言えば、もう知ってるかもだけど、そのスモモ村、運命の番が2人も出たってので、近いしちょっと見に行ってみるかと物見遊山で見に行った他国の狐獣人貴族が、手前で同じく物見遊山で来たこれ又別の国の狐獣人と番ったそうよ。本人達は運命の番だって言ってるけど、それはちょっと、"自称"かなって言われてるそうだけどね…。
後、同じくスモモ村に行こうとした羊獣人が、途中で出会った行商人の羊獣人と運命の番だったんですって。」
「わぁ~…。おめでたい話が続きますね…♪」
言葉を切って、意味ありげに見てくるルイーザに、マリサがふんわり感想を述べると、ルイーザはそれはそれは小馬鹿にした顔でマリサを見ながらふんぞり返った。
「ハン!ほんっとあんたは鈍チンね…。今の話を聞いてそんな事しか思わなかったワケ~?」
「え~~?じゃあ、どういう事?教えてよ、お姉ちゃ~ん」
心の中で拳にはぁ~と息を掛けながら、テレサが下手にでると、ルイーザは勿体振って紅茶を飲んでから答えた。
「……つまり!スモモ村を見に行こうとすると高確率で良い相手に出逢うって事よ!!」
「「「「な・・・何だってーー!!?」」」」
考えてみれば、運命の番を気にするのは皆、まだ将来の伴侶が決まってない適齢の番う習性を持った令嬢令息ならびに子女なワケだし、物見遊山で見に行ったりと同じ行動を取ると言うことは性格や発想、感性等が似ているという事である。
そして、普段の行動範囲から外れればそれだけ今までとは違う出逢いが増えるのは当然である。
考えれば考えるほど、当然の結果なのだが、
ドーーン!!と衝撃的事実を突き付けるルイーザに、子狐令嬢達だけでなく、カフェ内の全ての獣人が思わず立ち上がり叫んでいた。
こうして、スモモ村に行けば運命の番に出逢えるという噂は、このカフェ・ド・フルールから国の隅々、更には各国へと爆発的な勢いで拡がり、出逢いを求めた獣人や龍人達がスモモ村を目指して大移動し、国境なきお見合い会場と化した道中やスモモ村で無数の出逢いが発生し、その噂が更に適齢の獣人龍人果てはエルフや人族まで呼んで……。
あっという間にスモモ村は良縁の低エントロピースポットとして世界中から人が押し寄せる場所になったのだった。
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