親無し小太り取り柄無しな田舎娘がある日突然獣人伯爵の運命の番になった話

syarin

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21: ルイーザは見た!(モブ回)

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「ほら、私ってば婚約者が騎士団にいるでしょう??」

ルイーザが赤縦ロールを再び後ろに払って得意気に言う。
彼女の婚約者は伯爵家の三男で騎士爵を賜って独立した、かなり赤みの強いオレンジの毛並みを持つ狐獣人だった。

単に、個性的過ぎるルイーザへの求婚がその烈火の様な赤毛と性格に一目惚れした彼だけだったのに対し、引く手数多なテレサの婚約は父母によって慎重に吟味されているだけなのだが、そんなことは露も知らないテレサはそっと俯いた。

「いいなぁ……私もイイヒトが欲しい…。運命の番が欲しい……。」

そのいじらしい姿に周囲がほっこりするが、お構い無しにルイーザは語りだした。

「ほら、私の婚約者のテレンス様はこないだまで遠征してたでしょ??それで、こないだ帰ってきて初めての模擬試合だったのね。で、応援に顔を出したんだけど、その帰りにね、ラミテル・バドゲル伯爵令嬢をお見かけしたのよ!女騎士の!!
彼女、バドワイザ小伯爵様と再従姉妹で家柄も釣り合ってるし、血も近すぎないし、仲も良好だし、何度か夜会にパートナーとして二人は参加してたし、きっと婚約するだろうって言われてたでしょ??
それに、彼女も満更じゃなさそうだったじゃない??」

「そうだった……確かに、小伯爵様は婚約者はおられなかったけど、ラミテル様とゆくゆくは……って皆思ってたわよね……。」

ルイーザが言葉を切り、テレサに注いで貰った紅茶をゴクゴク飲む間にマリーが確かに、と呟いた。

皆それぞれ、夜会やガーデンパーティー等で見た、温厚そうな笑みを浮かべたラートンと、その横でキリリと凛々しい顔でシンプルなドレスを着こなす美しい女騎士を思い出す。

そうだ、彼女は一体どうなったのだろう……、と。

子狐令嬢達が揃って頷き合い、続きを期待してゴクリと唾を飲み込んだ。

今や、カフェ中の獣人が耳をそばだてていた。

「あら、ラミテル様だわーって私が挨拶しようとしたら、後ろから凄い勢いで走ってきたイタチ系獣人が、びゅん!って私を抜かしてラミテル様に走り寄ったの!
お嬢様!ラートン様が運命の番と出逢われたそうです!!ハァハァ…竜人の番が出た、人族の…同じ村でッ……!!
急いで来たらしくて酸欠で喘ぎながら言うその獣人に、ラミテル様はそれを聞いた途端、目をカッ!!と見開いて!」

バン!と語りに熱が入ったルイーザがテーブルを叩き、ガチャン!ティーセットが弾む。

「ガバッ!とそのイタチ系獣人の両肩を掴んだラミテル様!
なぁにぃ!!?そ、それは本当なのか?!!
ハイ!セイロン家嫡男から番に贈る貢ぎ物行脚の商人達の護衛で、サピエン国モ領スモモ村という所に行くとは聞いていたんですが、その同じ村に、ラートン様の運命の番も住んでらしたそうです。……グーマ様の目から見ても、運命の番としか思えない様な反応だったそうで…、その、お二人の婚姻は確実だそうです……。
説明しながらも!段々声が頼りなく、小さくなっていくイタチ系獣人。肩を掴むラミテル様の手がブルブル震えていて…。チラッとイタチ系獣人がラミテル様の様子を伺った瞬間!


ツ、ツガイィィィィィーーー!!


般若みたいな顔で、そんな声出るのかって位、普段のハスキーボイスとはかけ離れた金切声で叫んだと思ったら、いきなりこっちに爆走してきたラミテル様!!
その目は血走ってて、え、これ、轢かれる!!と思った私はビターーン!と回廊の壁に張り付いて回避!
お嬢様!?どちらへ!??と焦って追い掛けながら叫ぶイタチ系獣人!
スモモ村ァァ!!私もツガイィィィィィ!!と叫ぶラミテル様!!と、

ドーーン!!

回廊を走り抜けようとしたラミテル様に、通路の一つから出てきた人が思いっきり衝突!!散らばる紙束!駆け寄るイタチ系獣人と私!!
なんと!思いっきり跳ね飛ばされて目を回してたのは、模擬試合に辺境伯騎士団から選抜されて来てた、ダンデリォン公爵家の五男、レモンド様だったの!!
イタタタタ……申し訳無い…。そういって起き上がったラミテル様が、レモンド様に手を貸そうとして、ハッ…!とした顔してレモンド様を見つめたと思ったら、
君、名前は?独身かな?婚約者は既に居るのかな??
キリリとした顔で矢継ぎ早に質問するラミテル様!
……そんな…僕に婚約者なんか……。
俯きながらそう応えるレモンド様に手を貸しながら、
や、すまない。名乗りもせずにいきなり無礼な質問ばかり…。取り敢えずお互い医務室に行こうか、頭を打ってるかもしれないからな…。
なんて言って二人で歩いて行ったのだけど、今日、テレンス様にさっきお会いして聞いたら、あのお二人婚約したんですって!!」

ジャジャーーン!と口で言ってデラックスな樽ボディを嬉しそうに揺らすルイーザに、聴衆はポカンとした顔を返した。

「ダンデリォン公爵家のレモンド様ってどんなお方だったかしら……?」

テレサの疑問に、皆がうんうんと頷く。





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