親無し小太り取り柄無しな田舎娘がある日突然獣人伯爵の運命の番になった話

syarin

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17: 一路、王都へ。

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キュケーーィ!どかどかどかどかどか…キューーン!どかどか…

ハーーッハッハッハッハッハ……☆

「わぁー!凄ーい!速い速い♪」


長閑な朝の街道に響き渡る大蜥蜴の驚喜する鳴き声と野太い高笑い、黄色い歓声に農民達が慌てて道を譲り、商人達が荷馬車の手綱を緩めて何だ誰だと視線を送ってくる。

その間をすり抜け、時に脇道を地響き轟かせて爆走する、一頭のショッキングピンク&黄色がどぎついヒョウ柄というド派手なリザードランナー、それが豹紋リザードランナーの韋駄天丸だった。

背中にラートンとイオンウーウァという決して軽くない、いや、どちらかと言うと割と重い二人をタンデム仕様で乗せながら、全く重さを感じてないような素晴らしい疾走りを見せる韋駄天丸に、周囲の馬や牽竜達から賞賛の眼差しが送られる。

「わ!?凄い大きなリザードランナ…ぁあっ!?目がぁ!目がぁ!ぐわぁぁ…」

「見ろよ…凄い綺麗なリザードラン…あうっ!眩しい!??」

一方で、護衛や運送を主な生業とするバドワイザ家リザードランナー牧場の最高傑作にして疾走する芸術品、美しい韋駄天丸のショッキングピンクに輝く鶏冠と黄色がキラキラ煌めく豹柄の鱗に道行く人々が目潰しや目眩ましを喰らい、あちこちで呻き声が上がる。

(アア…ウツクシイッテ、ツミダナ…。)

単に目に痛いカラーリングの生き物が愛情たっぷりにお世話された艶々の鱗で光を反射しまくってるだけなのだが、生来賞賛しかされたことがない韋駄天丸は全て自分の美しさのせいだと思い、得意気にスピードを増す。

そうして、豹紋リザードランナーの中でも群を抜いた巨体と発達した脚力から齎される驚異的なスピードで、韋駄天丸は王都に二時間掛からず到着したのだった。

「グッボーイ、韋駄天丸♪自己ベスト更新じゃないか!ヨーシャシャシャシャシャシャ…!イイコで待ってるんだぞー?」

けこけこけこ…♪(イッテラッシャイ♪イッテラッシャイ♪)

大好きなラートンから撫でさすられ、沢山のおやつを貰い、イオンウーウァにも沢山撫でて貰い、満足気に岩場で昼寝する韋駄天丸を残して、ラートンとイオンウーウァは王都城下街へと向かった。

そこからは怒涛の買い物行脚だった。

~in ブティック~

「わぁー!凄い!こんなに沢山のドレス初めて見たわ!どれもお花みたいに綺麗ね!」

「そぉ?じゃぁ、記念にここのドレス全部買っとこう♡♡」


~in 香水ショップ~

「わぁ、これとっても素敵ね!でも此方も良い匂い♪……ラー様はこれ似合いそう…。」

「可愛い奥さん♡♡嬉しいな♪僕ってこんなイメージなの?嬉しいな♡♡……あ、そこのスタッフ、僕の可愛い番さんが良い匂いって言ったヤツ全部買います!」


~in 雑貨店~

「わぁ、これ綺麗!光る!凄いわ!妖精の羽ってこんな綺麗な色なのかしら…あ、これは何??これは??ラー様!あれ見てあれ!キャァァ♡ラー様!あれ!凄いの!」

「うんうん、凄いね♪可愛いね♪僕の可愛い奥さんが可愛い♡♡うんうん♡もう全部買っちゃおうね♡♡うん、それも買おうね♡♡いいね!僕の可愛い番さんを更に可愛く引き立ててるね♡♡」

と、どの店でも楽しそうにはしゃぎ、素敵なもの、綺麗なもの、可愛いものを二人して買い漁った。




「わ!コレ、中の人形ラー様にそっくり!キラキラ星や雪が降ってるみたい……。」

ふと、陳列棚の片隅にあったスノードームを手にとってイオンウーウァが目をキラキラさせる。
と、そこへ職員用扉から出てきた一人の職員が後ろ手に何かを隠しながら猛スピード早歩きで近付き、そっと、今棚から手に取った様な態度で1つのスノードームを差し出した。

「…これはこれは…お嬢様のお髪は素敵なお色味をしてらっしゃって……。こ、此方なんか…お二人にそっくりじゃないかなー…なんて…。ハァハァ…ゼェゼェ…」

スノードームを見てうっとりするイオンウーウァに、雑貨店スノードーム担当の職員が裏で急いで作った高級ビーズや貴重な妖精の羽をふんだんに使った特製スノードームを見せれば、途端にイオンウーウァが喜びの声をあげる。

「まぁ、コレ!私とラー様そっくり♪」

(イヨッシャァァァ!!)

二人が色々な店で爆買いしていると聞いて急いで特別仕様のスノードームを作った商魂逞しい職員は、イオンウーウァの反応に内心ガッツポーズで小躍りしてポールダンスでオーディエンスにキスを振り撒く位喜んだ。
定番過ぎて売上が低迷してるこの頃、店内で肩身が狭かったが、これが一個売れたら今月は大分大きな顔が出来ると思ったのだ。


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