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10: 番と金の尻尾とお菓子の山
しおりを挟む「ただいまー!僕の奥さん♡可愛い奥さん♡」
シャシャーー!と相変わらずのスライディングでベッド際にきたラートンがぽてりとベッドに顎を乗せれば、もそりと布団が動いて小さなトンネルが出来る。
「……ラー様…おかえりなさい。」
眠たそうな声が応え、ラートンはアナグマ族にしては長めのふさふさの金の尻尾をブンブン振って喜んだ。
「やぁ、奥さん!ハィ♡奥さん!お菓子を買ってきたよ!沢山買ってきてベッドに乗らないからテーブルに用意させるよ!出ておいで奥さん♡可愛い僕の奥さん♡♡」
「……ラー様、尻尾があるわ。」
(ふさふさ…触りたい…)
「ああ、人族の国に出入りする時は魔法で隠してたんだよ!時々獣人嫌いがいるからね、有名な猛獣族以外は隠してた方が色々楽なのさ♪はい、このワンピースを着ると良いよ♡」
思わず尻尾を触ろうとして布団から出てきたイオンウーウァの両腕にスルリとラートンが軽い生地で出来たワンピースドレスを通す。
そのままラートンが後ろを向いてテーブルを整えている間に、イオンウーウァが頭を通したワンピースをメイド達がさっと整え、ふわりとカーディガンを羽織らせ、足を出した瞬間にシャッ!とパンツを履かせてイオンウーウァの準備が整った。
「僕の可愛い奥さん!好きなだけ食べてね!」
「うわぁぁぁぁ♡♡」
置いてあったテーブルに乗り切らず、ワゴンやら追加のテーブルやらに所狭しと並べられたケーキや焼き菓子、砂糖菓子など、ありとあらゆる甘味に、イオンウーウァが歓声をあげる。
そこからはもう、目眩く二人だけの世界だった。
((一体、私は何を見せられてるんだろう……。))
置くところが無いからと椅子にまでトレイを置いて、一つだけ残した椅子に座り、膝の上にイオンウーウァを座らせるラートン。
ティーカップを置く所がないと二人で一つの紅茶を飲むラートン。
ティーカップを置く所がないと常に右手でソーサーを持ち、左腕でイオンウーウァを然り気無く抱き締めて悦に入るラートン。
テーブルに置かれた五段ケーキスタンドの上が見えないイオンウーウァの為に片膝を付き、己の太腿を踏み台にさせるラートン。
イオンウーウァにケーキを食べさせるラートン。
イオンウーウァにケーキを食べさせて貰うラートン。
紅茶を飲ませるラートン。
紅茶を飲ませて貰うラートン………。
~~だから、こうしよう!とラートンが言えば何でもコクリと頷いてイオンウーウァが従うのを良いことに、椅子になったりテーブルになったり踏み台になったり、メイドや使用人達の入る隙なくラートンにイチャイチャされてしまい、かといって退室するのも躊躇われた使用人一同は余す所無くそのイチャイチャを目撃し、砂を吐く思いだった。
だが、漸くそれも終わる。イオンウーウァが満腹になったのだ。
この膨大な残りの菓子はどうしよう。これが毎日続くのだろうか…。そんな事を考えていた使用人達の耳に、イオンウーウァの満足の溜め息が聞こえた。
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