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ここから番外編(腹黒王が割と出ます)
18: こうして天使は……。
しおりを挟む「おー。なんやヤル気満々やな、エンゼリヒト。ほな旦那と一緒に身を粉にして働いてもらおか♪」
なんて、人が気合入れてたらすぐ茶化す。タンスィート様は相変わらずだ。
「もー!タンスィート様ってば、馬車馬みたいにこき使う気だぁ。」
「あったり前やーん。俺ももう王様やでぇ、下々をこき使ってこき使ってカスカスになるまで搾り取ったるでぇ♪」
僕が笑えば、タンスィート様は更に被せてくる。
まぁ、本当にこき使われるんだろうけど、それ以上にタンスィート様自身が働くクセに、なんて思ってしまう。
精々、お役に立たなくちゃ……と、そこで僕ははた、と気付いた。
そう、王様……。
「……そういえば、ハレムナィトの王様だった人って何処行ったんですか??」
そう言えば、玉座にはヒルトゥームの王様、現帝様が居てて、僕、元王様は見てないのだ。昨日処刑された人達の中にも居なかった。
アモネイは玉座を空にしたとは言ってたけど、殺したとは言ってなかったし、島流しとかしたのなら言いそうだけど何も言ってなかったし……。
元々の王様はどうなったんだろう??
「あー、ハレムナィト王な。アモネイは帰ってきてからハレムナィト王に即位のやり方を聞く予定やってん。
ほんで、アモネイがヒルトゥームに居てる内にパリやんがバーンと王宮乗り込んで、王に、見た目を変えて安全に王宮から出すんと引換えに即位の仕方聞いて即位。
王になって約束通り見た目変えたってポイーッや。
なんや墓参りしてから放浪の旅に出るとかで、ちょっとの金と平民の服で出てったらしいで。」
「ええっ!?」
「なんや、えらいあっさりしたモンやったらしいで。まぁ、好きで王やってたワケちゃうかったんちゃうかなぁ。」
何だか勢い良く放り出された様な口振りに驚いたけど、どうやら本当に勢い良く放り出された感じらしくて僕は驚いた。
あの王宮の豪華さを見て、王様から一転何の身分もない状態なんて絶対に嫌がって、何としてでも地位にしがみつこうとしそうだと勝手に思っていたから。だって、王子達は皆一代限りだけど公爵位だし……。
きっと望めば王様は見た目を変えて身分も保証してくれたと思う。だから、タンスィート様の言う通り、好きでハレムナィトの王だったワケじゃないのかもしれない。
「王様って、色んな人がいるんですねぇ……。」
僕の中の王様のイメージがこの数日でバッキバキに砕け散り、更に今、トドメを刺された気がして、溜め息混じりに呟く。
「ほんまやなぁ、パリやんみたいなんがおれば、ハレムナィト王みたいなんや、傀儡の王、強欲な王もおる。ほんで、俺ら兄弟もまさかの三人とも王様や。」
そんな僕の呟きに、タンスィート様がのーんびり頷いて、僕はその言葉にぐっと気合いを入れ直した。
「頑張りましょうね!僕、頑張りますから!」
気張って言えば、タンスィートが少し嬉しそうに笑う。
僕達の王様は、どんな王様になるんだろう。ちょっと、ワクワクしてくる。
「せやなぁ、取り敢えず、コンにぃに勝つでー!」
「国の名前も考えないとですよ♪」
ワクワクのままに言えば、
「せやねん!どーしょー??コンにぃよりバチコーン☆センスええ超絶格好ええ国名考えてーな、エンゼリヒトぉ♪」
なんておどけて難題を吹っ掛けてくる、僕らの王様。困ったなぁ、え、本当に困るんだけど!!ええ!?どうしよう!?
「ええっ!??僕ですか!??……うーーんうーーん、自然豊かだし、翳らない繁栄を願って、じょ、常緑ヨルダルーム王国とかどうですか??」
「えっ!?何で常緑とか着けたん??クソダサやん、今頃全知全能の14歳??え?真面目にやってる??」
急に言われて焦って絞り出せば、口にした途端、タンスィート様の笑顔が信じられないものを見たかの様に凍り付く。
僕は、その表情に全てを読み取り、一気に顔から火が出る気持ちになった。
なのに、タンスィート様の追い討ち!もう、もう、恥ずかしいーー!
「ひ~~ん!恥ずかしい!酷いやタンスィート様!格好良いのとか言うから頑張って考えたのにぃ!」
「アハハハハハ…おい、皆聞いてや、今エンゼリヒトがさー「わーー!やめてください!言い触らさないで!」
僕が羞恥で悶えてるのに、この王様は涙を溢すくらい笑いながら、更に言い触らそうとしてきて。
僕は思わずタンスィート様をポカポカ叩いたり口を塞いだりした。それが楽しいのか、タンスィート様は言い触らせない位に笑い転げてしまい、僕もつられて笑い転げる。
「ハハハハハ!」「アハハハハハ!」
「何してるんだよ、お前達。ハハハ…!」
「全く、何がそんな面白いんですか?フフフ…ダメだ、感染ってきた…フフフフ…」
「アハハ!タンスィート、泣いちゃってるじゃん、大丈夫?息できてる?アハハハハハ!」
「フフ、ハハハハ!ダメだ、俺も感染ってきたよ。」
僕達の笑い声に何事かと集まってきたアモネイやウィンストン様、ジューン様、ビクトール様までもが、気が付けば一緒に笑い転げていて、それが又、何故か凄く面白くて。
僕達は暫く笑い転げた。
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