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ここから番外編(腹黒王が割と出ます)

07: 腹黒王改め腹黒帝。

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「……どうしてヒルトゥームの王が此処に居る。」

やっと口を開いたアモネイの強張った声に、楽しそうにお喋りしていた三王子がパッと此方に注目する。

(…そっか。アモネイはハレムナィトの王子として王様に会った事があるから…。そして、そしてやっぱりヒルトゥームの王様なんだ、あの人……。)

嫌な予感が大体現実になったようで、僕は覚悟を決めてアモネイの腕に僕の腕を絡ませた。
ギュッと握り締めれば、一瞬哀しそうな顔をしてから…それでもアモネイは僕の手を取って握り返してくれる。

君と一緒なら……。

大丈夫。これは、僕が自ら選んだ道だもの。

「ハィ、どーもー♪初めましてぇ、神聖ハレムナィト帝国の帝、パーリエス・スルトゥム・ヒルトゥームでぇっす♡」

にこやかに名乗る王様に、…いや、帝様に、僕は短い人生をそっと振り返った。

悔いの無い人生だったと言えるだろう。
処刑方法は苦しまないヤツが良いかな~…なんて、ハハッ。

と、ハレムナィト王国が神聖ハレムナィト帝国に国名まで変えられている事に、嗚呼、アモネイにヒルトゥーム攻め込ませてその隙にハレムナィトを陥落させたとかなんだろうな、と察して死を覚悟した僕だったが、アモネイは色々と納得の行かない点が多いみたいだ。
アモネイの固い腕が、僕の腕の中でブルブルと震える。

「……お、俺が……ヒルトゥームに行った隙を突いたのか…?」

「てぇかぁ、そもそもお前に王位を狙わせたんもパリやんってぇかぁ。」「本当に欲しいものがあるなら、本気になってみたらどうだ?アモネイ……とかってぇくっさい台詞タンタンに言わせたんもパリやんやしなぁ。」「せやから、お前が学園落としに来るのんダァレも邪魔しに来んかったしぃ、俺も無抵抗で令息達船に積み込んだやろ?」「いやいや、タンタンのアレはちょっと不自然過ぎてアゼルめっちゃ怒っとったで!」「演技が棒どころやあらへんヤッツケやったんやて??」

アモネイの絞り出す様な問いに三王子から誰が誰だか判らない似た声でワチャワチャと一気に返ってくる。
正直うるさいし気が抜ける。

でも兎に角、アモネイはずっと掌で転がされていたってことなんだろう。
本人か!?と思うほどいつもと違う西訛り口調も、三王子と王様の親子四人で繰り広げられると何だか逆にこれが彼等の本性なのだという説得力が有った。

「でもまぁ、アモネイがホンマに欲しかったもんはちゃんと手に入ったみたいやんけ……。」

ふと、何処か寂しそうな声に顔を上げて見れば、タンスィート様が少しだけ寂しそうな顔で此方を見詰めていた。
途端に、学園での楽しい生活が鮮やかに蘇る…。

正直に言えば、皆大好きだった。あのままずっと続けば良いと思っていた。

でも、僕は選択したし、アモネイは、友情という一線を越えて僕を本気で求めてくれた。

「割とガチで好きやってんけどな……まぁ、ビクトールでも可愛がって我慢しよかな。」

「ええー!ビクトール、お兄ちゃんも気に入っててんけどな」「ハッ!?そんなん俺もやし!タンタン♡独り占めはずっこない??」「はぁ!?なんやお前!カスコンク!タンタンに喧嘩売っとんのか!」「何やねんバローのバーロー!ちょっと皆で遊ぼーや♪ゆーてるだけやんけ!何なん何なん!大体最初にビクトール気に入ってるん言うたんバローやんけ!」「何やねん何やねん!文句あんのかカスコンク!」「えー、バロにぃコンにぃ喧嘩せんとって。仲良ぅしょーや♪ビクトール体力あるからイケるやろ♪」「「さっすが!タンタン!おっとこ前やわぁ~♪」」

「…ハッ!?何で俺!?えっ?ぇえっ!??」

タンスィート様がしんみりと僕を見詰めて呟くところからのワチャワチャで、気付けばビクトール様の貞操が凄い危機に瀕しており、ビクトール様が慌てる。

そんなビクトール様もやっぱりお美しくて、僕は、貞操どころか寿命が危機に瀕してるのも忘れて、それもちょっと見てみたいかもしれない、とか思ってしまった。
ヒルトゥーム1の美男子故に、ビクトール様はどんな展開もアリかな?とか思わせてしまう魅力があるんだ。

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