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ここから番外編(腹黒王が割と出ます)

02: そしてヴィランは、来なかった世界を夢に見る。

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「それにしても、今更そんな記事眺めてどーした?エンゼル。故郷が懐かしい?」

「別に。只、国が強くなったらしいから、警備とかも強化されてたらビクトール様拐う難易度上がりそうだなって思っただけ。」

「まぁた、ビクトール様だよ!もー、そんなヤツ忘れて俺にしなよ~♡俺も結構優良物件だよ?」

「見るからに遊び人でワルい事もしてそうなのに良く言う。」

「遊び人のワルだけど、優良物件だよ♡ワルい優良物件なの♡」

「意味が判らない。」

「あーあ。俺だったら、そのまんまのエンゼルを愛してあげるのにな~。
なぁ、折角こないだのダンジョンで特級ポーションGETしてピカピカエンゼルになったんだ、インキュバスの秘薬なんか探さなくてもイーじゃん!俺とこのまま新婚旅行しようぜ~♪」

「ハッ、何度も言ってるだろ。ビクトール様はそのまんまの僕を愛してくれてるよ。僕が、今の僕を許せないんだ。嫌ならゴートは着いてこなくてイイヨ♪僕一人で行くから。」

ニッコリ笑顔でバイバイ♪と手をヒラヒラさせて言えば、

「もー!こんなキュートなエンゼルを一人で行かせれるワケ無いじゃーん!判ってて言うんだから、この小悪魔め!ホント可愛い♡」

なんて大袈裟に溜め息付きながら抱き着いてくる。
ハン、チョロいぜ。そして抱き着くな鬱陶しい。

「僕一人じゃ攻略に時間かかるだろうから、嬉しいよ。ぐんぬぬぬ…ゴート、ありがとうね♪だーい好き♡」

言っとけ言っとけ。言うだけはタダだ。

僕は然り気無く?絡み付く腕から逃れようと渾身の力で…くぅ~!ビクともしねぇ!!…身を捩りつつ、こてん、と小首を傾げて微笑んだ。

インキュバスの秘薬。

修道院にいる時から色々調べてやっと巡り合った秘薬。
これさえ飲めば、僕は昔の可愛さを取り戻せるんだ…!

それだけじゃない。魅了や幻惑、誘眠から飛行に解錠などの魔法も手に入るから、王城攻略に役立てられるだろう。

(……ビクトール様はきっと、一番セキュリティの厳重なトコに居るだろうから…!)

秘薬が出る可能性のあるダンジョンに潜れるレベルに、こないだやっと到達したので、後は見つけるまでダンジョンを攻めるのみだ。
王子達とまともにやれば相変わらず敵わないだろうが、別に王子とやりあうつもりはない。
怪盗気取れる位に華麗にビクトール様だけ頂いて、吠え面かかせてやる!
なんてったって、ワルだからな!僕は!

思わずハハハ!と高笑えば、

「御機嫌エンゼルだ♪可愛いーね♡」

なんてゴートに頬っぺたツンツンされた。おまえ、いつまで抱き着いてるんだよ、はーなーせーー!

「暴れちゃって♡かーわいーんだから♡♡」

(はぁ、ゴートの腕力にも敵わないなんて、まだまだレベルあげないとだな……。)

それにしても、と僕はゴートの腕の中でぐったりしながら考えた。

(僕が悪役になる時点で、ゲームから大分ズレてるんだけど……それでも、ヒルトゥームが戦争に勝つなんて予想外だったな……。)

だってゲームではヒルトゥームはハレムナィトに負けてたから。

アモネイ攻略ルートだけで、だけど、彼は隠しキャラでゲーム後半になって出てくるし、他のルートだと、そこまでの未来がストーリーで描かれてなくて。
だから、戦争に負けるのは確実な未来なのかと思ってた。

だから、ぶっちゃけ、ビクトール様とのラブラブライフの為に、戦争前に何とかして王様にハレムナィトが戦争しようとしてるって知らせようと作戦とか立ててたんだよね。

でもさ、僕は修道院行き、ビクトール様は近衛としてあの糞王子共の手中に、ってなったら、戦争に負けた方がビクトール様を拐いやすいかなって。

「思ってたんだけどなー。は~ぁ。」

まさか、ヒルトゥームが戦争に勝っておっきくなるわ、ハレムナィトの王様がサミュエル・コートニーて。

(実質、ハレムナィトもヒルトゥームみたいなもんてコトでしょ??)

僕は、あの日の、王子とサミュエル・コートニーの仲の良さを思い出した。
まるで兄弟みたいなコト言ってた……。あの日のコトを……。

(ぅ……ビクトールさまぁ…あいたぃ…)

「はぁ、世の中上手くいかないもんだなぁ…。」

「おいおい、エンゼル。まぁたビクトール様患いか?そんな事よりとっとと飯喰って寝ないと、明日からのダンジョンでオダブツだぞ?」

「はぁ、判ってるよ…。ダンジョンは万全の態勢で挑まないと、何が起こるか判らない、だろ?」

なんてったって、ダンジョンコアと同化するヤツとかも世の中には居るしな。ほんと、何が起こるか判らない。

僕は、差し出されたゴートの手をペチンとはたいてむさ苦しい男が集まってるであろう食堂へと向かった。



そして夜、ギシギシ揺れるおんぼろ船の音を子守唄代わりに早めにベッドに潜り込んだ僕は、秘薬を手に入れたらどんなシチュエーションでビクトール様の前に登場しようか、なんて妄想に酔いしれながら眠りについた。

百万本の薔薇を集めた部屋に、ウェイターに化けて案内して、ビクトール様が驚いた瞬間に……なーんちゃってなーんちゃって!

なーんちゃって……!

なーん……ちゃ……て……




そして僕は、不思議な夢を見た。



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