40 / 66
ここから番外編(腹黒王が割と出ます)
02: そしてヴィランは、来なかった世界を夢に見る。
しおりを挟む「それにしても、今更そんな記事眺めてどーした?エンゼル。故郷が懐かしい?」
「別に。只、国が強くなったらしいから、警備とかも強化されてたらビクトール様拐う難易度上がりそうだなって思っただけ。」
「まぁた、ビクトール様だよ!もー、そんなヤツ忘れて俺にしなよ~♡俺も結構優良物件だよ?」
「見るからに遊び人でワルい事もしてそうなのに良く言う。」
「遊び人のワルだけど、優良物件だよ♡ワルい優良物件なの♡」
「意味が判らない。」
「あーあ。俺だったら、そのまんまのエンゼルを愛してあげるのにな~。
なぁ、折角こないだのダンジョンで特級ポーションGETしてピカピカエンゼルになったんだ、インキュバスの秘薬なんか探さなくてもイーじゃん!俺とこのまま新婚旅行しようぜ~♪」
「ハッ、何度も言ってるだろ。ビクトール様はそのまんまの僕を愛してくれてるよ。僕が、今の僕を許せないんだ。嫌ならゴートは着いてこなくてイイヨ♪僕一人で行くから。」
ニッコリ笑顔でバイバイ♪と手をヒラヒラさせて言えば、
「もー!こんなキュートなエンゼルを一人で行かせれるワケ無いじゃーん!判ってて言うんだから、この小悪魔め!ホント可愛い♡」
なんて大袈裟に溜め息付きながら抱き着いてくる。
ハン、チョロいぜ。そして抱き着くな鬱陶しい。
「僕一人じゃ攻略に時間かかるだろうから、嬉しいよ。ぐんぬぬぬ…ゴート、ありがとうね♪だーい好き♡」
言っとけ言っとけ。言うだけはタダだ。
僕は然り気無く?絡み付く腕から逃れようと渾身の力で…くぅ~!ビクともしねぇ!!…身を捩りつつ、こてん、と小首を傾げて微笑んだ。
インキュバスの秘薬。
修道院にいる時から色々調べてやっと巡り合った秘薬。
これさえ飲めば、僕は昔の可愛さを取り戻せるんだ…!
それだけじゃない。魅了や幻惑、誘眠から飛行に解錠などの魔法も手に入るから、王城攻略に役立てられるだろう。
(……ビクトール様はきっと、一番セキュリティの厳重なトコに居るだろうから…!)
秘薬が出る可能性のあるダンジョンに潜れるレベルに、こないだやっと到達したので、後は見つけるまでダンジョンを攻めるのみだ。
王子達とまともにやれば相変わらず敵わないだろうが、別に王子とやりあうつもりはない。
怪盗気取れる位に華麗にビクトール様だけ頂いて、吠え面かかせてやる!
なんてったって、ワルだからな!僕は!
思わずハハハ!と高笑えば、
「御機嫌エンゼルだ♪可愛いーね♡」
なんてゴートに頬っぺたツンツンされた。おまえ、いつまで抱き着いてるんだよ、はーなーせーー!
「暴れちゃって♡かーわいーんだから♡♡」
(はぁ、ゴートの腕力にも敵わないなんて、まだまだレベルあげないとだな……。)
それにしても、と僕はゴートの腕の中でぐったりしながら考えた。
(僕が悪役になる時点で、ゲームから大分ズレてるんだけど……それでも、ヒルトゥームが戦争に勝つなんて予想外だったな……。)
だってゲームではヒルトゥームはハレムナィトに負けてたから。
アモネイ攻略ルートだけで、だけど、彼は隠しキャラでゲーム後半になって出てくるし、他のルートだと、そこまでの未来がストーリーで描かれてなくて。
だから、戦争に負けるのは確実な未来なのかと思ってた。
だから、ぶっちゃけ、ビクトール様とのラブラブライフの為に、戦争前に何とかして王様にハレムナィトが戦争しようとしてるって知らせようと作戦とか立ててたんだよね。
でもさ、僕は修道院行き、ビクトール様は近衛としてあの糞王子共の手中に、ってなったら、戦争に負けた方がビクトール様を拐いやすいかなって。
「思ってたんだけどなー。は~ぁ。」
まさか、ヒルトゥームが戦争に勝っておっきくなるわ、ハレムナィトの王様がサミュエル・コートニーて。
(実質、ハレムナィトもヒルトゥームみたいなもんてコトでしょ??)
僕は、あの日の、王子とサミュエル・コートニーの仲の良さを思い出した。
まるで兄弟みたいなコト言ってた……。あの日のコトを……。
(ぅ……ビクトールさまぁ…あいたぃ…)
「はぁ、世の中上手くいかないもんだなぁ…。」
「おいおい、エンゼル。まぁたビクトール様患いか?そんな事よりとっとと飯喰って寝ないと、明日からのダンジョンでオダブツだぞ?」
「はぁ、判ってるよ…。ダンジョンは万全の態勢で挑まないと、何が起こるか判らない、だろ?」
なんてったって、ダンジョンコアと同化するヤツとかも世の中には居るしな。ほんと、何が起こるか判らない。
僕は、差し出されたゴートの手をペチンとはたいてむさ苦しい男が集まってるであろう食堂へと向かった。
そして夜、ギシギシ揺れるおんぼろ船の音を子守唄代わりに早めにベッドに潜り込んだ僕は、秘薬を手に入れたらどんなシチュエーションでビクトール様の前に登場しようか、なんて妄想に酔いしれながら眠りについた。
百万本の薔薇を集めた部屋に、ウェイターに化けて案内して、ビクトール様が驚いた瞬間に……なーんちゃってなーんちゃって!
なーんちゃって……!
なーん……ちゃ……て……
そして僕は、不思議な夢を見た。
23
お気に入りに追加
6,664
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?
麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。