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5: 我、魔王。初めての頭痛にドキドキ。耳の調子も良くないかもしれぬ。
しおりを挟むいつの間にか魔王の足元に跪き、爪先に触れんばかりの距離から此方を見上げて懇願してくる勇者に、魔王は混乱した。
組んだ足の爪先が勇者に触れそうで、何と無く避けるように爪先を上げれば、勇者はその爪先をそっと手に取り、口付けしてくる。
余りの事態に魔王が思考停止に陥るも勇者は止まらず、足の甲に口付けし、指を一本一本丁寧にねぶり、舐め、口付けしていく。
(ハァハァ…魔王様♡凄い、何処もかしこも黒薔薇の花弁の様にマットで滑らかな舌触り。ハァハァ…この足で踏まれたい……魔王様♡…ヨルノダール様♡……俺を見て…♡…俺を滅茶苦茶にしてっ♡♡)
足をベロベロに舐め尽くされ、勇者の舌が脛を這い上がって来た事で我に返った魔王は慌てて勇者を制止した。
「ちょっと待とうか、勇者よ。何をしている?」
「あっ、すみません……てっきり御褒美に足を舐めさせて戴けたのかと……。」
「御褒美に……足を、舐め……?」
魔王は訳も判らず、目の前で縮こまる勇者を観察した。
(コレは本当に勇者だろうか…。今、我に仕えたいとか言ってなかったか?)
「ちょっと、右手の甲を見せてごらん?ああ、やっぱり紋章がある。うむ。勇者だ。うむ。我に触れて平気なのは勇者だけだものな。」
「魔王様♡…俺はリンデールって言います。ユーシャって誰ですか?…魔王様♡俺を見て…!」
(あたまがいたい)
魔王は世に存在して以来初めて攻撃以外で精神的ダメージを受けた。
「そうではなく、貴様が勇者だと言ってるんだ…。
誰かに言われなかったかね?歴代勇者達は皆、加護や祝福を受けたり仲間を連れて魔王と対峙していたぞ?」
「俺が勇者…?
……そう言えば、何か老害がそんなことを近くで叫んでました。後、夢に出てくる変な女も勇者とやらを目覚めさせようとしてました。え、俺、勇者なんですか?魔王様♡と戦う?」
魔王の言葉をきょとんとした顔で聞いていた勇者が漸く自分が勇者であることを自覚したようなので、魔王は安堵した。
「そうだ。貴様は勇…「負けました!参りました!敗北しました!俺は魔王様♡の虜です♡完全敗北です!平伏します!服従します!屈服します!隷属でも何でもします!好き♡魔王様♡好き♡♡下働きでも奴隷でも何でも良いです!お側に置いてぇ♡!」
(あいたた……頭痛が…。勇者め、今の攻撃は効いたぞ……。此れはきっと精神攻撃だ。そうに違いない。こいつは聖剣を振りかざすだけの勇者ではない。……ん?まてよ。)
「そう言えば、勇者よ、聖剣を持ってなくないか??聖剣はどうした??」
勇者の力を何倍にも増幅させる勇者の必須アイテムは何処だ、まさか遠隔で死角に潜りこませているのか、と焦る魔王に勇者は立ち上がると、そっとズボンの前を寛げて見せた。
そっと恥じらうように顔を反らす勇者とは反対に、元気に反り返りひくひくと脈打つソレは見られて嬉しいとばかりに体積を増していった。
「俺の淫らな性剣はここです……♡」
「……はっ、まさかその粗末なもので我を貫こうとでも…「魔王様♡抱いて!ふにゃふにゃのフニャチンになるくらい激しく抱いてっ♡♡俺の聖剣を役立たずにして、俺を魔王様♡の雌にしてぇ!淫乱な雌奴隷にしてっ♡♡♡」
シャツを捲り上げて口に咥え、体をくねらせて胸筋を手で寄せ上げる勇者に魔王は砂を吐く思いだった。
「あっ、そーーきたか。そっかー。そっちかー。」
魔王はズキズキ痛むこめかみをそっと押さえて呻いた。
(どうしよう。ついていけない。)
歴代魔王の記録にも載ってない新しい展開に、魔王は頭がクラクラしている。
(いや、怯むな。向こうから望んで我が手に堕ちると言っているのだ。望み通りに雌奴隷だか何だかにしてやれば良いのだ……。)
もし此れが何らかの企みなら、本当に雌奴隷にされそうなら抵抗する筈。そう考え、魔王はしっかりと玉座に凭れて不敵に笑った。
勇者はその笑顔だけで生きていける、とばかりに蕩けた顔で笑っている。
魔王はそっとこめかみを揉んだ。
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