完結【R18】魔王様カッコイー！抱いて♡って思ったら、え、俺が勇者？！

4: 我、魔王。此度の勇者はちょっと変！？

魔王ヨルノダールは城に入り込んだ異質な気配を感じ取り、静かに玉座に座り、その時を待った。

凝った闇が形作る異形の身。
瞳も、二本の禍々しく歪に伸びた角も髪も肌も爪も牙も…全てが闇で出来た存在は、何処に居てもまるで其処にぽっかりと深い穴が空いている様に見える。
例え腹心の部下であっても、近くに寄ればその濃すぎる闇の毒気にやられ、深淵の様な魔王の闇に魅入られ、吸い込まれて闇に喰われてしまう。
勇者の紋章を持つ者以外は触れることすら叶わない不可侵。
ヨルノダールはそっと黒い唇から闇の吐息を洩らした。

(随分と早いが……まぁ、構うものか。)

創世の時より幾度となく繰り返される、凝った闇が意思を持ち、世界を闇に包もうとするも女神の使者である勇者に討ち滅ぼされ、世界に還元していく茶番劇。

決して世界を闇に包める事は無いと知っていても、歴代の魔王達と同じ様に、ヨルノダールも又、渇望に突き動かされて世界を闇に包む為の努力をするだけだった。
実力不足の勇者が飛び込んできても、きっと良いところで助けが入り、仕留める前に逃げ出されてしまう。

判っていても、今度こそは、と思ってしまう。

今度こそは……。と。

「来たか……。」

扉の前の気配に、魔王ヨルノダールはその漆黒の長い睫毛を上げた。

バァン！！と扉を開けて、黒で埋め尽くされた室内に、随分と軽装の若者が飛び込んでくる。
麦藁色の髪をキラキラと輝かせて、若葉色から菫色に収束していく美しい瞳で此方をひたと見詰める、小麦色の肌の女神の愛し子。

(ぐちゃぐちゃにしてやりたくなる……。)

「よく来たな勇s「魔王様万歳！！」気を讃え、貴様が泣いて赦しを乞うまで甚振り、更に嬲り、苛み、責め続けてやろ、う……？」

(今、……なんと？…興奮で滑舌が悪かったのか、変な風に聞こえたな……。)

勇者の迸る魂の叫びが途中、「魔王様万歳」と聞こえた気がして、魔王はそっと首を傾げた。
勇者を見れば、実力差を理解したのか、ふるふると震えながら潤んだ瞳で此方を見上げている。

(少し熱に浮かされたような、恍惚の表情に見えるがきっと気のせいだろう。)

そう思い直して魔王は何故かぐんぐん歩み寄ってくる勇者を悠然と見下ろした。

「魔王ヨルノダール様♡」

勇者が背負っていた布袋をおもむろにひっくり返し、中からゴロゴロと幹部達の生首が転がり出てくる。

「はっ、手土産ということか。だが、そやつらは幹部達の中でも一等取るに足らぬ雑兵…」

「はいっ！手土産に幾つかの拠点の奸臣を成敗し、その配下の中で一番魔王様への忠誠心に溢れた者にすげ替えてきました。あ、コレは俺がチェックした拠点のリストで、各幹部の魔王様への忠誠心も5段階評価してます！魔王様♡！お願いです！俺を魔王様のお側に置いて下さい！なんでもします！腹心の部下になれるよう誠心誠意お仕えします♡♡！好きです♡！一目惚れなんです！魔王様♡好き♡♡！！」



「　はぁ？　」