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第5章 ファイナイト
5-34 共闘
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間違いない。以前、峡峰で敵対した、あのサターンズ・リングだ。
と、そのサターンはキョロキョロと辺りを見回す。
「おい……剣精は、いねぇよな?」
不安そうに僕に向かってそう声を掛けた。以前、峡峰での戦いでシルベーヌさんに右腕を切断されたため、怯えているのだろう。その右腕は綺麗に元通りになっている。
「シルベーヌさんならいない。でも、なんでお前がここにいるんだ!? それに、力を貸すってどういう事なんだ?」
サターンは確かに先程「力を貸す」と言った。俄に信じ難い言葉に僕は自分の耳を疑っている。
周りを見ると、海上の人工島施設にいた一般人達が混乱状態になりながら逃げ、周囲の道路では慌てるように一般車が走り去っていく。
「エイシストさんに頼まれちまったからな。いいか? 今回だけだ」
サターンは僕の質問にそう答えた。
「サターン! ひっさしぶりだなー! 元気にしてたか?」
と、そこへトロイが声を掛ける。同じ組織内の人間なのだから、やはり面識があったのだろう。
「おう! トロイ! 元気なわけあるか。こいつらの仲間に腕ぶった斬られちまったんだぜ?」
「タハハハ! 笑えねー! ま、流石うちの医療班は優秀だな。斬られた腕も綺麗に結合してくれたな」
2人は旧知の友との再会を果たすかのように、肩を叩きあって笑っている。
「おい、どうなってんだ? あの、サターンだよな? 本当に俺達の味方になってくれんのか?」
僕の隣にドドが並ぶ。先程ファイナイトの光の刃で身体を切り刻まれ、その傷跡が痛々しく目に付く。
「おう、でけぇのもいたか! なんか、変な感じだな。あの樹海で戦ったお前とも協力するってのは」
サターンはトロイと共に僕達の方へとやって来た。
「僕はまだ現実感がないよ。まさか、君が本当に助けてくれるなんて。でも、一時的とはいえ助かる」
僕は事態を素直に受け止め、サターンと視線を交わした。ミルがテリファイアを封じられ、レグネッタさんとドルティエさんも負傷した今、戦力を補えるのは正に幸運だ。ひょっとすると、あのエイシストがこうなる事態を予知していたのかもしれない。
「お仲間なのですか? 私も、まだ戦えます」
そこへドルティエさんがやってくる。両腕から血を流し、足も負傷しているのか引き摺っている。
「ドルティエ、無理しないでくれ。それよりミルとレグネッタさんを頼む。大丈夫だ、ここは俺達4人に任せろ」
ドドの言葉にドルティエさんは反論しかけたが、彼の強い眼差しを受け、了承して後方で様子を見ていたミルの元に戻る。
レグネッタさんはまだ気絶しているようで、ミルは手錠を掛けられた腕でレグネッタさんの身体を抱きかかえていた。
「作戦会議は終わったか? 我はもう既に回復を終えたぞ」
ファイナイトが宙に浮かびながらそう言った。すっかり奴の存在を忘れてしまっていた。立体駐車場の前に奴は立っている。
「おうおう! お前が世間で大人気のファイナイト様か? いいぜ、始めようか。ぶちのめしてやる!」
サターンはこの状況を楽しむように、両手を広げ、その上に土星の環を出す。
「ふん。あの愚かな組織の者がまた1人増えたか」
「俺達をみくびるなよー? 根性みせてやる!」
サターンの右隣に立つトロイがマニピュレーターを出して構える。
「あぁ、その通りだ。地を這い蹲る人間の底力、お前にぶつけてやる!」
僕の左隣に立つドドが手の平を拳で打ち、地面を強く踏みしめて構える。
「そうさ。僕達は、どんなに不利だろうと、お前を粉砕してみせる! ドド! トロイ! サターン! 行こう!」
僕がそう声をかけると、サターンは両手からその土星の環を飛ばす。それは高速回転しながらファイナイトを左右から襲う。
「うぬっ!?」
ファイナイトは左右の手から光のブレードを出して土星の環を受け止めたが、切断できずにいた。
「どうだ白髪のガキ! 俺の環は宇宙の力を宿してる! お前の力と同じなんだよ!」
サターンは道路を走りながら更に土星の環を飛ばしていく。
「くっ!」
ファイナイトは両手のブレードで土星の環を下方に弾き飛ばしながら上昇する。
そこへ僕のグラインドで飛ばした街灯が2本回転しながら飛ぶ。だが、そこをお構い無しにサターンの環が飛び交い、僕が飛ばした街灯を切断してしまった。
「ちょっと、サターン!」
「邪魔だったからよ! どうせあいつのブレードに斬られてただろ?」
全く。まぁ、確かにそうだな。気を取り直し、僕は切断された街灯の破片を全てファイナイトに向けて飛ばす。
サターンの環と共に街灯の破片がファイナイトを襲い、奴は宙を飛び交いながら光のブレードを振り回す。
「おーらよ! こっちにもいるぜ!」
ドドはトロイのサイドワインダーに乗り、ファイナイトの背後へと垂直に飛び上がっていた。空中でファイナイトの後頭部に向けて膝蹴りを放つと、奴の腕を掴んで頭上に放り投げる。
そこへ先程ドドが乗っていたサイドワインダーが襲撃をかけ、ファイナイトは空中で爆発する。
「この程度じゃまだまだだ」
僕はそう言い、立体駐車場に放置されてたと思しき一般車を爆炎の中にいるファイナイトへとぶつける。
「徹底的に叩き潰せばいいんだろ? ならこれでどうだ!」
サターンは巨大な環を飛ばす。空中で車を受け止めたファイナイトを中心にし、1つの土星の環が回転する。そして、その環から中心のファイナイトに向けて氷の矢が次々に放たれる。
「こんな技も持っていたのか」
峡峰では見ていない技だ。そして、明らかにあの時よりもサターンの環は威力が増している。氷の矢をファイナイトに放ちながら、その環をみるみる縮めていき、僕が飛ばした車を巻き込んで破壊し、ファイナイトの身体を締め付けた。
「なんだ、このグラインドは!?」
ファイナイトが顔を歪ませていた。回転する環で締め付けられ、それに触れた身体の部分は傷つきながらも凍り付いていく。
「どうだ、俺のグラインド、『サターンズ・リング』の力は。そのまま凍り付け!」
しかし、ファイナイトの身体が輝きを放ち、そのエネルギーの熱量で氷を溶かし始めた。
「サターン、まだまだ詰めが甘いなー。あいつ、バケモンなんだぜ?」
そう言ってトロイがファイナイトの周囲の空中にドッペルを出現させ、そのドッペル達が一斉にサイドワインダーを射出した。
だが、その爆発の中から何本ものレーザーが飛び出す。
「はっ! バケモンだ、確かに」
サターンは土星の環に乗って宙を飛びながらレーザーを回避していく。ドドはアスファルトの道路を走り、トロイはサイドワインダーに乗り、僕は別の車のルーフに乗ってそれを飛ばし、それぞれレーザーの雨を掻い潜っていく。
「この程度の力で我を倒すだと? 笑わせるな」
笑うことなどないファイナイトはそう言い放ち、光の球体を撒き散らし始め、周囲では爆発が次々に巻き起こる。
「くっ! こいつはやべぇ。おい、青緑! 何とかしろ!」
空中で土星の環に乗るサターンは、新たな環をファイナイトに向けて飛ばしながらも僕に言った。
「何とかって……くっ!」
周囲で巻き起こる爆発に翻弄されながらも、宙を飛ぶ車に乗って思案していた僕は、眼下に見えた物を飛ばす。
それは金属でできた巨大な半月型の板だった。トンネルの掘削に用いたシールドマシンの一部をモニュメントとして展示していた物だ。
「いけー!」
巨大な半月板を回転させながらファイナイトへと飛ばす。それは爆発さえも切り裂きながら突き進む。
「なっ!?」
ファイナイトはその巨大な半月板を身体の正面から受け、爆発の勢いが途絶える。
「今だ! サターン!」
サイドワインダーに乗ったトロイがファイナイトに向けて飛び、サターンに声を掛けた。
「あぁ! おらよ! トロイ、全力でかませよ!」
僕が飛ばした半月板と挟み込むように、同じ大きさの環をサターンはファイナイトの背後から飛ばしていた。
「くあっ! こ、小賢しい!」
半月板と土星の環に挟まれたファイナイトが、身体を光り輝かせながら巨大な半月板を押し戻そうとする。僕は更に半月板へと力を注ぎ、ファイナイトの力に対抗する。
そこへトロイが突撃する。
「くらえ! マニピュレーター最大出力だ!」
トロイの右腕の上に掲げられた巨大な機械のアームが、電気を帯びながら赤く燃えていた。
「ぐおっ!」
トロイの最大出力マニピュレーターの拳を受け、ファイナイトは呻く。
「青緑! 力緩めんじゃねぇぞ!」
「あぁ! わかってるさ!」
トロイの拳が放たれても尚、僕は半月板を回転させながら、ファイナイトへ押し付ける。
3つの巨大な力を受け、ファイナイトは手の打ちようがなかった。その筈だった。
ファイナイトはそこで自分の身体を眩く輝かせながら爆発した。
「なんだと!?」
僕の半月板と、サターンの環、そしてトロイはその爆発に弾き飛ばされる。そして、ファイナイト自身もその爆発によって弾き飛ばされ、あの窮地から脱したのだ。
「あとは任せろ!」
いつの間にかドドが走っていた。爆風で飛ばされたファイナイトに向かって爆走し、手摺りに飛び乗ってそこから跳躍する。
「ぶっ飛べー! うおーらぁ!」
飛ばされたファイナイトに向け、ドドは空中で身体を後回転させ、逆さまの姿勢でファイナイトの顔面を蹴り飛ばした。
「ぬおぉあっ!」
ファイナイトは叫び声を上げながら海へと落とされた。
「やるじゃねぇかでけぇの! あの時より強いな」
ドドの隣に降り立ったサターンが肩を叩きながら言った。
「手応えはあった。だが、それでもあいつはくたばっちゃくれねぇだろ」
僕とトロイが降り立つと、ドドはそう言ってファイナイトが落ちた海面を見つめている。
闇夜の中、暗い海面が輝き出し、そこから光り輝くファイナイトが飛び上がる。
「全て、破壊してくれる」
そう告げると、僕達がいる人工島の至る所で光の柱が上がって大きな爆発が次々に発生した。
「おい! これはさっきの比じゃねぇ! まずいぞ!」
サターンはそう言って再び土星の環に乗る。だが、その背後にすっとファイナイトが現れる。
「弾け飛べ」
サターンが引き攣った顔で背後を振り返った瞬間、ファイナイトの手から至近距離で光の球体が放たれ、一瞬で爆発が起きた。
「サターン! ぬおっ!?」
サターンの名を呼んだトロイの目の前に、ファイナイトは一瞬で移動し、真正面からレーザーを放射状に発してから爆発させた。
「ファイナイト、てめぇ!」
そのファイナイトに向けてドドが拳を振り上げる。だが、ファイナイトが光り輝く拳でドドの拳を殴ると、そこに爆発が生じ、更にドドの腹に向けて拳を打ち付け、大きな爆発を起こしてドドの巨体を吹き飛ばした。
「ドドー!」
ドドの身体は海上まで投げ飛ばされ、僕は慌てて近くの車を飛ばし、それで彼の身体を受け止めて地上に降ろした。
「仲間の心配をしている場合か?」
振り返るとファイナイトがいた。奴は僕に向かって容赦なく光の球を飛ばして爆発させた。
「ぶぐはぁっ!」
爆発に飛ばされながらも、遠くの景色が目に飛び込む。光の柱が上がっていたのはこの周囲だけではなかった。遠くの陸地、更にその向こう。四方八方至る所で光の柱が上がり、爆発が起きていた。
「弖寅衣 想。残念だな。ぬしはここまでだ」
道路へ打ち付けられた僕に、ファイナイトは光のブレードを振り下ろし、僕の腹を斬りつけた。
と、そのサターンはキョロキョロと辺りを見回す。
「おい……剣精は、いねぇよな?」
不安そうに僕に向かってそう声を掛けた。以前、峡峰での戦いでシルベーヌさんに右腕を切断されたため、怯えているのだろう。その右腕は綺麗に元通りになっている。
「シルベーヌさんならいない。でも、なんでお前がここにいるんだ!? それに、力を貸すってどういう事なんだ?」
サターンは確かに先程「力を貸す」と言った。俄に信じ難い言葉に僕は自分の耳を疑っている。
周りを見ると、海上の人工島施設にいた一般人達が混乱状態になりながら逃げ、周囲の道路では慌てるように一般車が走り去っていく。
「エイシストさんに頼まれちまったからな。いいか? 今回だけだ」
サターンは僕の質問にそう答えた。
「サターン! ひっさしぶりだなー! 元気にしてたか?」
と、そこへトロイが声を掛ける。同じ組織内の人間なのだから、やはり面識があったのだろう。
「おう! トロイ! 元気なわけあるか。こいつらの仲間に腕ぶった斬られちまったんだぜ?」
「タハハハ! 笑えねー! ま、流石うちの医療班は優秀だな。斬られた腕も綺麗に結合してくれたな」
2人は旧知の友との再会を果たすかのように、肩を叩きあって笑っている。
「おい、どうなってんだ? あの、サターンだよな? 本当に俺達の味方になってくれんのか?」
僕の隣にドドが並ぶ。先程ファイナイトの光の刃で身体を切り刻まれ、その傷跡が痛々しく目に付く。
「おう、でけぇのもいたか! なんか、変な感じだな。あの樹海で戦ったお前とも協力するってのは」
サターンはトロイと共に僕達の方へとやって来た。
「僕はまだ現実感がないよ。まさか、君が本当に助けてくれるなんて。でも、一時的とはいえ助かる」
僕は事態を素直に受け止め、サターンと視線を交わした。ミルがテリファイアを封じられ、レグネッタさんとドルティエさんも負傷した今、戦力を補えるのは正に幸運だ。ひょっとすると、あのエイシストがこうなる事態を予知していたのかもしれない。
「お仲間なのですか? 私も、まだ戦えます」
そこへドルティエさんがやってくる。両腕から血を流し、足も負傷しているのか引き摺っている。
「ドルティエ、無理しないでくれ。それよりミルとレグネッタさんを頼む。大丈夫だ、ここは俺達4人に任せろ」
ドドの言葉にドルティエさんは反論しかけたが、彼の強い眼差しを受け、了承して後方で様子を見ていたミルの元に戻る。
レグネッタさんはまだ気絶しているようで、ミルは手錠を掛けられた腕でレグネッタさんの身体を抱きかかえていた。
「作戦会議は終わったか? 我はもう既に回復を終えたぞ」
ファイナイトが宙に浮かびながらそう言った。すっかり奴の存在を忘れてしまっていた。立体駐車場の前に奴は立っている。
「おうおう! お前が世間で大人気のファイナイト様か? いいぜ、始めようか。ぶちのめしてやる!」
サターンはこの状況を楽しむように、両手を広げ、その上に土星の環を出す。
「ふん。あの愚かな組織の者がまた1人増えたか」
「俺達をみくびるなよー? 根性みせてやる!」
サターンの右隣に立つトロイがマニピュレーターを出して構える。
「あぁ、その通りだ。地を這い蹲る人間の底力、お前にぶつけてやる!」
僕の左隣に立つドドが手の平を拳で打ち、地面を強く踏みしめて構える。
「そうさ。僕達は、どんなに不利だろうと、お前を粉砕してみせる! ドド! トロイ! サターン! 行こう!」
僕がそう声をかけると、サターンは両手からその土星の環を飛ばす。それは高速回転しながらファイナイトを左右から襲う。
「うぬっ!?」
ファイナイトは左右の手から光のブレードを出して土星の環を受け止めたが、切断できずにいた。
「どうだ白髪のガキ! 俺の環は宇宙の力を宿してる! お前の力と同じなんだよ!」
サターンは道路を走りながら更に土星の環を飛ばしていく。
「くっ!」
ファイナイトは両手のブレードで土星の環を下方に弾き飛ばしながら上昇する。
そこへ僕のグラインドで飛ばした街灯が2本回転しながら飛ぶ。だが、そこをお構い無しにサターンの環が飛び交い、僕が飛ばした街灯を切断してしまった。
「ちょっと、サターン!」
「邪魔だったからよ! どうせあいつのブレードに斬られてただろ?」
全く。まぁ、確かにそうだな。気を取り直し、僕は切断された街灯の破片を全てファイナイトに向けて飛ばす。
サターンの環と共に街灯の破片がファイナイトを襲い、奴は宙を飛び交いながら光のブレードを振り回す。
「おーらよ! こっちにもいるぜ!」
ドドはトロイのサイドワインダーに乗り、ファイナイトの背後へと垂直に飛び上がっていた。空中でファイナイトの後頭部に向けて膝蹴りを放つと、奴の腕を掴んで頭上に放り投げる。
そこへ先程ドドが乗っていたサイドワインダーが襲撃をかけ、ファイナイトは空中で爆発する。
「この程度じゃまだまだだ」
僕はそう言い、立体駐車場に放置されてたと思しき一般車を爆炎の中にいるファイナイトへとぶつける。
「徹底的に叩き潰せばいいんだろ? ならこれでどうだ!」
サターンは巨大な環を飛ばす。空中で車を受け止めたファイナイトを中心にし、1つの土星の環が回転する。そして、その環から中心のファイナイトに向けて氷の矢が次々に放たれる。
「こんな技も持っていたのか」
峡峰では見ていない技だ。そして、明らかにあの時よりもサターンの環は威力が増している。氷の矢をファイナイトに放ちながら、その環をみるみる縮めていき、僕が飛ばした車を巻き込んで破壊し、ファイナイトの身体を締め付けた。
「なんだ、このグラインドは!?」
ファイナイトが顔を歪ませていた。回転する環で締め付けられ、それに触れた身体の部分は傷つきながらも凍り付いていく。
「どうだ、俺のグラインド、『サターンズ・リング』の力は。そのまま凍り付け!」
しかし、ファイナイトの身体が輝きを放ち、そのエネルギーの熱量で氷を溶かし始めた。
「サターン、まだまだ詰めが甘いなー。あいつ、バケモンなんだぜ?」
そう言ってトロイがファイナイトの周囲の空中にドッペルを出現させ、そのドッペル達が一斉にサイドワインダーを射出した。
だが、その爆発の中から何本ものレーザーが飛び出す。
「はっ! バケモンだ、確かに」
サターンは土星の環に乗って宙を飛びながらレーザーを回避していく。ドドはアスファルトの道路を走り、トロイはサイドワインダーに乗り、僕は別の車のルーフに乗ってそれを飛ばし、それぞれレーザーの雨を掻い潜っていく。
「この程度の力で我を倒すだと? 笑わせるな」
笑うことなどないファイナイトはそう言い放ち、光の球体を撒き散らし始め、周囲では爆発が次々に巻き起こる。
「くっ! こいつはやべぇ。おい、青緑! 何とかしろ!」
空中で土星の環に乗るサターンは、新たな環をファイナイトに向けて飛ばしながらも僕に言った。
「何とかって……くっ!」
周囲で巻き起こる爆発に翻弄されながらも、宙を飛ぶ車に乗って思案していた僕は、眼下に見えた物を飛ばす。
それは金属でできた巨大な半月型の板だった。トンネルの掘削に用いたシールドマシンの一部をモニュメントとして展示していた物だ。
「いけー!」
巨大な半月板を回転させながらファイナイトへと飛ばす。それは爆発さえも切り裂きながら突き進む。
「なっ!?」
ファイナイトはその巨大な半月板を身体の正面から受け、爆発の勢いが途絶える。
「今だ! サターン!」
サイドワインダーに乗ったトロイがファイナイトに向けて飛び、サターンに声を掛けた。
「あぁ! おらよ! トロイ、全力でかませよ!」
僕が飛ばした半月板と挟み込むように、同じ大きさの環をサターンはファイナイトの背後から飛ばしていた。
「くあっ! こ、小賢しい!」
半月板と土星の環に挟まれたファイナイトが、身体を光り輝かせながら巨大な半月板を押し戻そうとする。僕は更に半月板へと力を注ぎ、ファイナイトの力に対抗する。
そこへトロイが突撃する。
「くらえ! マニピュレーター最大出力だ!」
トロイの右腕の上に掲げられた巨大な機械のアームが、電気を帯びながら赤く燃えていた。
「ぐおっ!」
トロイの最大出力マニピュレーターの拳を受け、ファイナイトは呻く。
「青緑! 力緩めんじゃねぇぞ!」
「あぁ! わかってるさ!」
トロイの拳が放たれても尚、僕は半月板を回転させながら、ファイナイトへ押し付ける。
3つの巨大な力を受け、ファイナイトは手の打ちようがなかった。その筈だった。
ファイナイトはそこで自分の身体を眩く輝かせながら爆発した。
「なんだと!?」
僕の半月板と、サターンの環、そしてトロイはその爆発に弾き飛ばされる。そして、ファイナイト自身もその爆発によって弾き飛ばされ、あの窮地から脱したのだ。
「あとは任せろ!」
いつの間にかドドが走っていた。爆風で飛ばされたファイナイトに向かって爆走し、手摺りに飛び乗ってそこから跳躍する。
「ぶっ飛べー! うおーらぁ!」
飛ばされたファイナイトに向け、ドドは空中で身体を後回転させ、逆さまの姿勢でファイナイトの顔面を蹴り飛ばした。
「ぬおぉあっ!」
ファイナイトは叫び声を上げながら海へと落とされた。
「やるじゃねぇかでけぇの! あの時より強いな」
ドドの隣に降り立ったサターンが肩を叩きながら言った。
「手応えはあった。だが、それでもあいつはくたばっちゃくれねぇだろ」
僕とトロイが降り立つと、ドドはそう言ってファイナイトが落ちた海面を見つめている。
闇夜の中、暗い海面が輝き出し、そこから光り輝くファイナイトが飛び上がる。
「全て、破壊してくれる」
そう告げると、僕達がいる人工島の至る所で光の柱が上がって大きな爆発が次々に発生した。
「おい! これはさっきの比じゃねぇ! まずいぞ!」
サターンはそう言って再び土星の環に乗る。だが、その背後にすっとファイナイトが現れる。
「弾け飛べ」
サターンが引き攣った顔で背後を振り返った瞬間、ファイナイトの手から至近距離で光の球体が放たれ、一瞬で爆発が起きた。
「サターン! ぬおっ!?」
サターンの名を呼んだトロイの目の前に、ファイナイトは一瞬で移動し、真正面からレーザーを放射状に発してから爆発させた。
「ファイナイト、てめぇ!」
そのファイナイトに向けてドドが拳を振り上げる。だが、ファイナイトが光り輝く拳でドドの拳を殴ると、そこに爆発が生じ、更にドドの腹に向けて拳を打ち付け、大きな爆発を起こしてドドの巨体を吹き飛ばした。
「ドドー!」
ドドの身体は海上まで投げ飛ばされ、僕は慌てて近くの車を飛ばし、それで彼の身体を受け止めて地上に降ろした。
「仲間の心配をしている場合か?」
振り返るとファイナイトがいた。奴は僕に向かって容赦なく光の球を飛ばして爆発させた。
「ぶぐはぁっ!」
爆発に飛ばされながらも、遠くの景色が目に飛び込む。光の柱が上がっていたのはこの周囲だけではなかった。遠くの陸地、更にその向こう。四方八方至る所で光の柱が上がり、爆発が起きていた。
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