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第5章 ファイナイト
5-25 建築家
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雨が降り頻る中、頭上から振り下ろされたエッジクラッシャーの腕を、蹴りで弾き返したシクスは颯爽と地面に降り立った。
「シクス、助けに来てくれたの? ありがとう」
僕の言葉にシクスは頷く。
「おー! しっくんじゃないかー! 頼りになるねー!」
遥か高いビルの屋上からは、トロイの大声が聞こえた。
「し、しっくん?」
シクスは戸惑っているが、恐らくトロイが勝手につけた渾名だろう。
「シクスさん、あのロボットは先程とは比べ物にならないエネルギーを放出しています。どうか、お気をつけくださいませ」
「ミルティーユさん。ご心配には及びません。あなたも、どうか無理なさらないように」
ミルと言葉を交わしたシクスは走り出した。
シクスは右手にウィンチェスターのライフル、左手にレミントンのライフルを出現させ、雨が降る路面を駆けながらウィンチェスターを撃ち、レバーアクションで次弾を装填させながらレミントンを撃つ。こちらはセミオートで次弾が装填されているようだ。
ショットガンの反動は大きいが、幽霊のシクスにはそれも関係ない。一連の動作を繰り返しながら次々にショットガンを連発し、空中に浮かぶエッジクラッシャーへ、確実にダメージを与え、あの強靭なボディを少しずつでありながらも削っていく。
「シクスさん!? 来ていたのですね」
エッジクラッシャーの背後で倒れていたドルティエさんは既に起き上がり、先程の拳銃でエッジクラッシャーを撃ちながら走り出していた。
「ドルティエさん、無理しないでください。と言っても、伝説の英雄に私の心配は無用ですね」
エッジクラッシャーの左側に回っていたシクスは両手に持つショットガンを連発しながらそう言う。
『なんだあいつは……どこから現れた? まぁいい。何人増えようと、このエッジクラッシャーの敵ではない』
フィア・ファクターがそう言うと、プラズマを纏い続けるエッジクラッシャーは、その両腕を斜め下に向け、その先端にある大きな砲口から拡散型のプラズマレーザーを放った。
雨は今も尚振り続け、僕達の頭上からその雨とプラズマレーザーの雨が降り注ぐ。僕はドドとミルを守るためにも頭上に軍事車両3台を浮かせて防御する。だが、あまりのレーザー量で、長くは持たない。
「想! なんとか持ち堪えてください!」
シクスはあのレーザーの雨の中を走り抜けながら言った。レーザーは周りのビルも破壊していくが、ドルティエさんもレーザーとビルの瓦礫を見事に回避して駆け抜けていく。
「ったくよー! 俺は乗り物じゃねーぞ!」
頭上からトロイの声が聞こえた。見上げると、サイドワインダーに乗って飛ぶトロイの右腕のマニピュレーターの上に、レグネッタさんが腰を落として乗っていた。
「黙って運転しろ」
そう言ってレグネッタさんは空中から緑光の大きな弾丸をエッジクラッシャーの背後に向けて撃った。
激しいドライブスピンの弾丸を背後から受けたエッジクラッシャーは高度が下がり、レーザーのリズムが途切れる。
「そこだ」
レーザーが途切れた瞬間を逃さなかったシクスが飛び出す。跳躍し、空中に出現させた手榴弾をサッカーボールのように蹴り飛ばす。豪速球の手榴弾はエッジクラッシャーの左腕先端の砲口にシュートされ、内部で爆発する。
「行きます」
エッジクラッシャーの右手側に回っていたドルティエさんは、目にも留まらぬ瞬足で走り、倒れた軍事車両、街路樹、信号機へと跳び移り、エッジクラッシャーの右腕に跳び乗る。
あの太い腕の僅かに空いた隙間に拳銃を押し込み、3発発砲した後、さらにそこから上へ跳び、瞬時に持ち替えた包丁でエッジクラッシャーの右腕を切り刻む。
今までのダメージが蓄積していたのか、あの頑丈な腕の装甲が砕かれていく。
「まだまだ!」
ドルティエさんはまた更に上へ跳び、エッジクラッシャーの肩を蹴る。榴弾が収納されていた場所に穴が開き、ドルティエさんがそこに拳銃を撃つとエッジクラッシャーの肩は爆発した。英雄ライトニング・ボルト、その強さはこの雨の中でも凄まじい。
「おっしゃ! 想、頼む!」
ビルの瓦礫にドドが乗り、それを僕のグラインドで動かす。猛スピードでそれはエッジクラッシャーの胸部目掛けて飛び、ドドはそのスピードを活かし、絶妙のタイミングで跳び上がる。
「おぉらぁ!」
空中後ろ回し蹴りでエッジクラッシャーの胴体を蹴り、更にもう1発肘打ちを捩じ込むように叩き付け、エッジクラッシャーの胴体内部は剥き出しになる程に破壊された。
『こっ、こいつら!? 本当に人間か!?』
「もちろん! わたくし達はみな人間ですわ!」
圧倒されていたエッジクラッシャーの背後にミルが現れる。エッジクラッシャーのジェットエンジン目掛けてダイナマイトを釘バットで打ち放つ。シクスのサッカーに対し、ミルは野球だ。
直後にミルはドドを連れて素早く僕の隣に戻ってきた。エッジクラッシャーは爆発を起こして近くのビルへと激突していく。
『おーのれー! この街もろとも貴様ら吹き飛ばしてくれるわ!』
ビルに埋め込まれていたエッジクラッシャーが両腕を伸ばす。破壊されつつある砲口は爆発を起こしながらも、青白く発光し、両腕からプラズマ粒子砲が放たれていた。
「防いでやるとも!」
トロイのドッペルがエッジクラッシャーの前に何人もずらりと現れ、右腕の大きなマニピュレーターでそのプラズマ粒子砲を防いでいた。弾かれたプラズマ粒子が辺りに飛び散り、電撃が走ると共に爆発が次々に発生し、建物を破壊する。
「トロイ、合わせろ!」
トロイのドッペル群の背後には、本体のトロイに乗ったレグネッタさんがいた。黒い拳銃から黄光のビームを放ち、それに合わせるようにトロイはサイドワインダーを射出した。プラズマ粒子砲を防いだドッペル群も続いてサイドワインダーを放ち、エッジクラッシャーはビルもろとも爆発した。
「私、ついウズウズして出て来ましたが……出る幕ありませんでしたね」
シクスが僕の隣にやってきて静かにそう言ったので僕は困ったように苦笑する。シクスとドルティエさんの攻撃は最小限の被害で済むが、レグネッタさんとトロイの攻撃は規模がでかい上に、2人ともあの性格なため容赦はしない。
『くっそが! なぜだ!? なぜこんなゴミどもに負ける!?』
ビルの瓦礫に埋もれ、エッジクラッシャーは再び動こうと試みるが、その駆動部は火花を散らし起き上がることが出来ない。
「終わりましたね。お嬢様、銃をありがとうございました」
ドルティエさんもやって来て、先程の拳銃をミルに返そうとしていた。
「ドルティエ、よい働きでしたわね! 銃は預けておきますわ。まだファイナイトがいますもの!」
そうだ。ミルの言う通り、僕達は突然の邪魔者を排除したに過ぎず、本命のファイナイトはこれからだ。
「よし。それじゃ、官邸に向かおう」
僕がそう言い、足を踏み出した瞬間。
――――ドォーンッ!
視線の先にあった官邸の建物が爆発した。その大きな爆発に釣られるように、何度も爆発が立て続けに起こる。
「あの坊主か!? まさか、もう来ていたって言うのか!?」
少し離れた所にいるトロイが驚きながら声を発していた。その直後、空に1つの白い光が飛ぶ。遠目からでもわかる。間違いなくファイナイトだ。
宣言を果たしたからか、ファイナイトは僕達の方に来る事もなく飛び去ってしまった。
「そんな……!? わたくし達、防げなかったのですか?」
ミルの口から言葉が漏れる。
その時、僕達の背後に近付く気配があった。
「残念だったな。貴様らの負けだ」
男がいた。金髪のサラサラした髪は首筋まで伸びている。身長180cm程で、白いTシャツの上に黒のパーカーを着ており、雨の中でも傘を刺さずにパーカーのフードを被っている。
「アーキテクツ!? なぜお前がここにいる!?」
振り向いたトロイが声を上げた。
「フォールン・トロイ。教主から話は聞いてるが、本当にそいつらと一緒にいるとはな」
低く、静かな声でその男、「アーキテクツ」は言った。
「トロイ、お前が知ってるって事は、こいつはゼブルムの奴か?」
ドドがトロイを横目で見ながら聞く。
「あぁ、そうだ。建築家『アーキテクツ』だ。あの爾栄のヴェグザのビルを作ったのもお前なんだろ?」
と、トロイはそのアーキテクツに問いかける。
「あぁ、そうだ。あの少年に壊されたのは腹立たしいが、今はもうどうでもいい。お前達にぶつける」
そう言ってアーキテクツが手を伸ばすと、トロイが立っていた地面が盛り上がる。まるで生き物のように、上に向かって膨れ上がり、それは岩山となってトロイは吹き飛ばされた。
『おぉ、アーキテクツよ! 来てくれたか』
動かなくなったエッジクラッシャーからフィア・ファクターの声がし、その方向を見てアーキテクツは憐憫の笑みを浮かべる。
「なんだこいつ!? トロイは味方じゃねぇのか!?」
ドドがそう言って走り出す。だが、アーキテクツの足元から、アスファルトの地面がドドに向かって斜めに伸びる。
咄嗟の判断でドドは回避を試みるが、身体の横側にその衝撃を受けて地面に打ち付けられた。
「敵ですね。排除します」
ドドの後ろからは既にドルティエさんが走り出していた。アーキテクツの足元から再び地面が伸びていたが、ドルティエさんは身を屈めて最小限の動きで跳躍して回避すると、その伸びたアスファルトの塊の上を走り、次の瞬間にはもうアーキテクツの目の前にいた。その両手に細いスティックを持って。
「くっ! まさか、本当にライトニング・ボルトがいるとはな」
アーキテクツの横側から伸びた地面がドルティエさんのスティックを受け止めていた。だが、ドルティエさんは瞬時に地面を蹴り、アーキテクツの背後に回るとその背をスティックで殴る。
「私もまだ暴れ足りないので加勢します」
シクスはいつの間にかアーキテクツの頭上にいた。サブマシンガンを連射しながら落下してくる。
ドルティエさんの攻撃によって体勢を崩していたアーキテクツだったが、冷静にシクスの銃弾を、盛り上げた地面で防御する。アスファルトはアーキテクツを覆い被さる屋根のようになっていた。
「アーキテクツ! 今、戦うべき相手は俺達じゃないだろ!」
トロイがマニピュレーターでアスファルトの壁を破壊しながらそう言う。そこにシクスが透かさず拳銃を撃つ。
「そうでもないさ。いっそ、お前達がいない方があのファイナイトも自由に動けるだろ?」
横に跳んでシクスの銃弾を回避したアーキテクツがそう言う。
「どういうことだ? まさか、あのファイナイトと手を組んだのか?」
タバコを吸いながら拳銃を構えているレグネッタさんがそう言いながら歩み寄る。アーキテクツはその言葉を鼻で笑う。
「まさか。ただ、オリジンがこの日本にいる今となっては、いっそこの国を破壊してくれた方が我々にとっても都合がいいのだよ」
アーキテクツが言ったその言葉の意味を、僕は一瞬理解できなかった。ゼブルムは、この国の壊滅を望んでいるのか?
目の前に立つフードを被った建築家を、僕は驚愕しながら見詰めていた。
「シクス、助けに来てくれたの? ありがとう」
僕の言葉にシクスは頷く。
「おー! しっくんじゃないかー! 頼りになるねー!」
遥か高いビルの屋上からは、トロイの大声が聞こえた。
「し、しっくん?」
シクスは戸惑っているが、恐らくトロイが勝手につけた渾名だろう。
「シクスさん、あのロボットは先程とは比べ物にならないエネルギーを放出しています。どうか、お気をつけくださいませ」
「ミルティーユさん。ご心配には及びません。あなたも、どうか無理なさらないように」
ミルと言葉を交わしたシクスは走り出した。
シクスは右手にウィンチェスターのライフル、左手にレミントンのライフルを出現させ、雨が降る路面を駆けながらウィンチェスターを撃ち、レバーアクションで次弾を装填させながらレミントンを撃つ。こちらはセミオートで次弾が装填されているようだ。
ショットガンの反動は大きいが、幽霊のシクスにはそれも関係ない。一連の動作を繰り返しながら次々にショットガンを連発し、空中に浮かぶエッジクラッシャーへ、確実にダメージを与え、あの強靭なボディを少しずつでありながらも削っていく。
「シクスさん!? 来ていたのですね」
エッジクラッシャーの背後で倒れていたドルティエさんは既に起き上がり、先程の拳銃でエッジクラッシャーを撃ちながら走り出していた。
「ドルティエさん、無理しないでください。と言っても、伝説の英雄に私の心配は無用ですね」
エッジクラッシャーの左側に回っていたシクスは両手に持つショットガンを連発しながらそう言う。
『なんだあいつは……どこから現れた? まぁいい。何人増えようと、このエッジクラッシャーの敵ではない』
フィア・ファクターがそう言うと、プラズマを纏い続けるエッジクラッシャーは、その両腕を斜め下に向け、その先端にある大きな砲口から拡散型のプラズマレーザーを放った。
雨は今も尚振り続け、僕達の頭上からその雨とプラズマレーザーの雨が降り注ぐ。僕はドドとミルを守るためにも頭上に軍事車両3台を浮かせて防御する。だが、あまりのレーザー量で、長くは持たない。
「想! なんとか持ち堪えてください!」
シクスはあのレーザーの雨の中を走り抜けながら言った。レーザーは周りのビルも破壊していくが、ドルティエさんもレーザーとビルの瓦礫を見事に回避して駆け抜けていく。
「ったくよー! 俺は乗り物じゃねーぞ!」
頭上からトロイの声が聞こえた。見上げると、サイドワインダーに乗って飛ぶトロイの右腕のマニピュレーターの上に、レグネッタさんが腰を落として乗っていた。
「黙って運転しろ」
そう言ってレグネッタさんは空中から緑光の大きな弾丸をエッジクラッシャーの背後に向けて撃った。
激しいドライブスピンの弾丸を背後から受けたエッジクラッシャーは高度が下がり、レーザーのリズムが途切れる。
「そこだ」
レーザーが途切れた瞬間を逃さなかったシクスが飛び出す。跳躍し、空中に出現させた手榴弾をサッカーボールのように蹴り飛ばす。豪速球の手榴弾はエッジクラッシャーの左腕先端の砲口にシュートされ、内部で爆発する。
「行きます」
エッジクラッシャーの右手側に回っていたドルティエさんは、目にも留まらぬ瞬足で走り、倒れた軍事車両、街路樹、信号機へと跳び移り、エッジクラッシャーの右腕に跳び乗る。
あの太い腕の僅かに空いた隙間に拳銃を押し込み、3発発砲した後、さらにそこから上へ跳び、瞬時に持ち替えた包丁でエッジクラッシャーの右腕を切り刻む。
今までのダメージが蓄積していたのか、あの頑丈な腕の装甲が砕かれていく。
「まだまだ!」
ドルティエさんはまた更に上へ跳び、エッジクラッシャーの肩を蹴る。榴弾が収納されていた場所に穴が開き、ドルティエさんがそこに拳銃を撃つとエッジクラッシャーの肩は爆発した。英雄ライトニング・ボルト、その強さはこの雨の中でも凄まじい。
「おっしゃ! 想、頼む!」
ビルの瓦礫にドドが乗り、それを僕のグラインドで動かす。猛スピードでそれはエッジクラッシャーの胸部目掛けて飛び、ドドはそのスピードを活かし、絶妙のタイミングで跳び上がる。
「おぉらぁ!」
空中後ろ回し蹴りでエッジクラッシャーの胴体を蹴り、更にもう1発肘打ちを捩じ込むように叩き付け、エッジクラッシャーの胴体内部は剥き出しになる程に破壊された。
『こっ、こいつら!? 本当に人間か!?』
「もちろん! わたくし達はみな人間ですわ!」
圧倒されていたエッジクラッシャーの背後にミルが現れる。エッジクラッシャーのジェットエンジン目掛けてダイナマイトを釘バットで打ち放つ。シクスのサッカーに対し、ミルは野球だ。
直後にミルはドドを連れて素早く僕の隣に戻ってきた。エッジクラッシャーは爆発を起こして近くのビルへと激突していく。
『おーのれー! この街もろとも貴様ら吹き飛ばしてくれるわ!』
ビルに埋め込まれていたエッジクラッシャーが両腕を伸ばす。破壊されつつある砲口は爆発を起こしながらも、青白く発光し、両腕からプラズマ粒子砲が放たれていた。
「防いでやるとも!」
トロイのドッペルがエッジクラッシャーの前に何人もずらりと現れ、右腕の大きなマニピュレーターでそのプラズマ粒子砲を防いでいた。弾かれたプラズマ粒子が辺りに飛び散り、電撃が走ると共に爆発が次々に発生し、建物を破壊する。
「トロイ、合わせろ!」
トロイのドッペル群の背後には、本体のトロイに乗ったレグネッタさんがいた。黒い拳銃から黄光のビームを放ち、それに合わせるようにトロイはサイドワインダーを射出した。プラズマ粒子砲を防いだドッペル群も続いてサイドワインダーを放ち、エッジクラッシャーはビルもろとも爆発した。
「私、ついウズウズして出て来ましたが……出る幕ありませんでしたね」
シクスが僕の隣にやってきて静かにそう言ったので僕は困ったように苦笑する。シクスとドルティエさんの攻撃は最小限の被害で済むが、レグネッタさんとトロイの攻撃は規模がでかい上に、2人ともあの性格なため容赦はしない。
『くっそが! なぜだ!? なぜこんなゴミどもに負ける!?』
ビルの瓦礫に埋もれ、エッジクラッシャーは再び動こうと試みるが、その駆動部は火花を散らし起き上がることが出来ない。
「終わりましたね。お嬢様、銃をありがとうございました」
ドルティエさんもやって来て、先程の拳銃をミルに返そうとしていた。
「ドルティエ、よい働きでしたわね! 銃は預けておきますわ。まだファイナイトがいますもの!」
そうだ。ミルの言う通り、僕達は突然の邪魔者を排除したに過ぎず、本命のファイナイトはこれからだ。
「よし。それじゃ、官邸に向かおう」
僕がそう言い、足を踏み出した瞬間。
――――ドォーンッ!
視線の先にあった官邸の建物が爆発した。その大きな爆発に釣られるように、何度も爆発が立て続けに起こる。
「あの坊主か!? まさか、もう来ていたって言うのか!?」
少し離れた所にいるトロイが驚きながら声を発していた。その直後、空に1つの白い光が飛ぶ。遠目からでもわかる。間違いなくファイナイトだ。
宣言を果たしたからか、ファイナイトは僕達の方に来る事もなく飛び去ってしまった。
「そんな……!? わたくし達、防げなかったのですか?」
ミルの口から言葉が漏れる。
その時、僕達の背後に近付く気配があった。
「残念だったな。貴様らの負けだ」
男がいた。金髪のサラサラした髪は首筋まで伸びている。身長180cm程で、白いTシャツの上に黒のパーカーを着ており、雨の中でも傘を刺さずにパーカーのフードを被っている。
「アーキテクツ!? なぜお前がここにいる!?」
振り向いたトロイが声を上げた。
「フォールン・トロイ。教主から話は聞いてるが、本当にそいつらと一緒にいるとはな」
低く、静かな声でその男、「アーキテクツ」は言った。
「トロイ、お前が知ってるって事は、こいつはゼブルムの奴か?」
ドドがトロイを横目で見ながら聞く。
「あぁ、そうだ。建築家『アーキテクツ』だ。あの爾栄のヴェグザのビルを作ったのもお前なんだろ?」
と、トロイはそのアーキテクツに問いかける。
「あぁ、そうだ。あの少年に壊されたのは腹立たしいが、今はもうどうでもいい。お前達にぶつける」
そう言ってアーキテクツが手を伸ばすと、トロイが立っていた地面が盛り上がる。まるで生き物のように、上に向かって膨れ上がり、それは岩山となってトロイは吹き飛ばされた。
『おぉ、アーキテクツよ! 来てくれたか』
動かなくなったエッジクラッシャーからフィア・ファクターの声がし、その方向を見てアーキテクツは憐憫の笑みを浮かべる。
「なんだこいつ!? トロイは味方じゃねぇのか!?」
ドドがそう言って走り出す。だが、アーキテクツの足元から、アスファルトの地面がドドに向かって斜めに伸びる。
咄嗟の判断でドドは回避を試みるが、身体の横側にその衝撃を受けて地面に打ち付けられた。
「敵ですね。排除します」
ドドの後ろからは既にドルティエさんが走り出していた。アーキテクツの足元から再び地面が伸びていたが、ドルティエさんは身を屈めて最小限の動きで跳躍して回避すると、その伸びたアスファルトの塊の上を走り、次の瞬間にはもうアーキテクツの目の前にいた。その両手に細いスティックを持って。
「くっ! まさか、本当にライトニング・ボルトがいるとはな」
アーキテクツの横側から伸びた地面がドルティエさんのスティックを受け止めていた。だが、ドルティエさんは瞬時に地面を蹴り、アーキテクツの背後に回るとその背をスティックで殴る。
「私もまだ暴れ足りないので加勢します」
シクスはいつの間にかアーキテクツの頭上にいた。サブマシンガンを連射しながら落下してくる。
ドルティエさんの攻撃によって体勢を崩していたアーキテクツだったが、冷静にシクスの銃弾を、盛り上げた地面で防御する。アスファルトはアーキテクツを覆い被さる屋根のようになっていた。
「アーキテクツ! 今、戦うべき相手は俺達じゃないだろ!」
トロイがマニピュレーターでアスファルトの壁を破壊しながらそう言う。そこにシクスが透かさず拳銃を撃つ。
「そうでもないさ。いっそ、お前達がいない方があのファイナイトも自由に動けるだろ?」
横に跳んでシクスの銃弾を回避したアーキテクツがそう言う。
「どういうことだ? まさか、あのファイナイトと手を組んだのか?」
タバコを吸いながら拳銃を構えているレグネッタさんがそう言いながら歩み寄る。アーキテクツはその言葉を鼻で笑う。
「まさか。ただ、オリジンがこの日本にいる今となっては、いっそこの国を破壊してくれた方が我々にとっても都合がいいのだよ」
アーキテクツが言ったその言葉の意味を、僕は一瞬理解できなかった。ゼブルムは、この国の壊滅を望んでいるのか?
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