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第4章 ナターシャ
4-20 乱舞
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シクスが最後の力を使い、大量の手榴弾によって生じた大爆発は凄まじい爆音を立て、その爆風に僕達も飛ばされそうになった程だ。
やがて、煙が晴れる。埃が舞った庭園は、芝生が無くなり、近くの樹は倒れ、見るも無残な場所に変わっていた。
そこにシクスの姿はなかった。だが、クラリスの前に大きな槍が何重にも重ねられ、奴は右腕から血を流して負傷し、息を荒らげながらもそこに立っていた。
「シクスは、時間がなかったから捨て身の攻撃をしてくれたんだな。消滅したわけじゃないんだろ?」
僕の隣に立つドドが、クラリスを見据えながら聞いた。
「うん、大丈夫。現界出来なくなる程のダメージを受けても成仏するわけじゃないし、また24時間後には現界できるから」
僕がそう言うと、ドドは小さく息を吐いてほっと安心し、そして構える。
「そうか。じゃあ、アイツの最後の攻撃を無駄にしねぇためにも、ここで一気にケリをつけようぜ」
ドドの言葉に頷き、僕は近くに倒れている樹をグラインドで動かそうとする。
が、そこでミルちゃんが前に出た。
「あなた……よくも、よくもシクスさんを殺しましたわね!」
え? あ? ミルちゃん、まさかシクスが幽霊だってわかってなかったのかな?
「あ、ミルちゃん、大丈夫。シクスは幽霊だし、また会えるから……」
僕がそう言った時には既にミルちゃんは走り出しており、その言葉は耳に入っていないようだった。隣に立つドドも、口を開けたまま眉根を寄せている。
「許しませんわ! 許しませんわ! わたくしを先程かばってくれたあの人を、よくも殺しましたわね!」
だからもうシクスは死んでるんだってば。しかし、僕がそれを言ったとしても、もう聞こえないくらいにミルちゃんは離れていく。
芝生が吹き飛んで、荒れた地面の上を、黒いゴスロリワンピースを着た真紅のツインテールの乙女が駆ける。
その手に、ナイフが現れる。それは戦闘用のナイフではない。ディナーの時に用いられる、食事用のテーブルナイフだ。
「死になさい!」
ミルちゃんは正面からそのナイフでクラリスを切り付ける。クラリスは突然自身に向かって突進してきたゴスロリ乙女に狼狽えながらも、槍の柄でそのナイフを受け止める。
次の瞬間にはミルちゃんはもう消えていた。クラリスの左側、斜め上の空中に出現し、槍を持っていた腕に向かってそのナイフを振り下ろし、クラリスの腕から血が流れる。
「がっ! すばしっこいお嬢ちゃんね」
クラリスは手に持った槍で振り払いながらも空中に3本の槍を発生させる。だが、またミルちゃんは消える。今度はクラリスの右側の足元に現れ、クラリスの脚をナイフで傷付けた。
「あの前髪が長い紳士様を殺した事、わたくしは絶対に許しませんわよ」
今度は倒れかけた樹の上に現れ、拳銃を連射していた。
「くっ! なんなのよこの娘! あの男は幽霊なんでしょ? 私が除霊なんかできるわけないじゃない」
やはり、「成仏させてやる」と先程言っていたのは見栄だったか。クラリスは地面を走り、銃弾を避けながらミルちゃんに言うが、彼女にはその言葉は届いていないようだ。
クラリスは樹の上のミルちゃんに向けて黒い滲みから槍を放つ。ミルちゃんは再び消え、その槍は樹を切り裂いただけだった。ミルちゃんは洋館の屋根の上にいた。
「わたくしは、シクスさんに、あの紳士様にお礼が言いたかった……少しだけ、お話してみたかった」
ミルちゃんのその目には涙が浮かんでいた。涙を溜めながらもその顔を上げる。
「もうこれ以上、わたくしの目の前で、仲間を死なせませんわ!」
そう言って、その手からナイフを次々に出しては投げていく。が、そのナイフは見当違いな方向へと飛んでいく。
「どこに向けて投げてるの? 我を忘れて標的が定まってないわよ? 私はここよ?」
クラリスは思わず笑ってしまっていた。
だが、次の瞬間、ミルちゃんが投げたナイフは一斉に消え、それは全てクラリスの身体の周りに出現した。それはあたかも、クラリスが使う黒い滲みから出る槍のようだった。
「っ!?」
油断していたクラリスは防御出来ずに全身にナイフを突き刺されてしまう。
「あなたの技、真似させていただきましたわ」
ミルちゃんはクラリスの懐に現れ、手に持ったナイフで奴の腹部を斜めに切る。クラリスは腹から血を飛散させながら地に膝を付く。
「くっ、なんて事してくれるのよ! こんな屈辱は、初めてよ。この、槍に、『ディオティマ』に、私は、負けないと誓った。その誇りを持って、あなたを、倒す!」
背後のミルちゃんを振り返りながらクラリスは黒槍を振り上げる。だが、すぐにミルちゃんは消える。
クラリスの頭上に現れ、眼下の奴に向けて両手に持ったナイフを投げる。しかし、クラリスの黒い滲みが発生し、そこから出た槍がナイフを弾き飛ばす。
「あなたに誇りがあるように、わたくしにも誇りがあります。ミモザ姉様の妹として、姉様を大切にしてくれた人達を、わたくしは全力で守ります。それがわたくしの誓いであり、誇りです」
再び洋館の屋根の上に現れたミルちゃんはそう言い、ナイフを投げていく。それは先程と同じようにクラリスの周囲に現れ、奴の身体に突き刺さる。
だが、クラリスは槍を振り回し、その攻撃に反応していく。そして、屋根の上のミルちゃんに向かって滲みから槍をいくつも放っていく。
ミルちゃんは屋根から樹の上、池の近くの岩の上、門の上へと次々に移動しながらもその手からナイフを投げ、攻撃の手を緩めなかった。
「いいわ。一気にカタをつけてあげる。あなたの誇りに、私の誇りをぶつけてあげる!」
クラリスがそう言うと、奴の上空に大きな黒い滲みが現れ、そこから巨大な槍が出現する。先程のトラックを大破した槍よりも何倍も大きい。
「大きいですわね。でも、負けません!」
ミルちゃんがそう言うと、先程僕達を取り囲んだトラックが彼女の前に縦に並んで現れた。
そのトラックの列に巨大な槍が突き刺さる。衝撃音を立てながらトラックを破壊し、巨大な槍は突き進んでいく。トラックを何台も団子状に突き刺して。
そのトラックの固まりが消えた。それは、クラリスの背後へと現れた。すぐに事態を察知出来なかったクラリスは、背後を振り返って驚愕した。
転移したトラックの固まりは、クラリスが放った巨大な槍の速度をそのまま宿していたからだ。
「ぐっぐぐわぁー!? ごほっ! ががぐぁー!」
トラックの固まりがクラリスに衝突し、奴は叫んでいた。
「これで、終わりですわ!」
ミルちゃんはいつの間にかそのトラックの上にいた。トラックの固まりは、先程クラリスが出した巨大な槍も巻き込み、そのまま屋敷を取り囲む塀に衝突した。
「お、終わったのか? あのクラリスって女、倒しちまったぞ?」
僕の隣に立つドドが呆れるように驚いていた。僕も同様にびっくりしている。
ミルちゃんのグラインドでクラリスの槍を転移させる事はできないが、その威力を別の物体に巻き込んで相手にぶつけるなど、僕だったら思いつかない。とてもダイナミックな攻撃だった。
「想様、敵を撃破致しました。でも、もう、あの御方は……」
ミルちゃんは僕の前に現れ、俯きながら言った。
「あ、あぁ。え? あ? シクスの事? シクスは幽霊だから死なないよ? 猫さんの幽霊さんだから。また会えるよ?」
ミルちゃんの快進撃に呆気にとられ、意識が飛んでいた僕は言葉が頭に入ってなかったが、数秒してから理解しそう言った。
そして、その言葉を聞いたミルちゃんも呆気にとられたように目を丸くし、意識が飛ぶ。
「ほへ? え、シクスさんも幽霊でしたの? わた、わたくし、てっきり人間の方だったのかと……いや、でもよくよく考えてみれば想様のお姉様と同じように現れましたものね!? え? 猫さんなんですの!?」
ようやく僕の話を理解した彼女は恥ずかしがりながら慌て出した。それを見てつい僕は笑ってしまう。
が、その時、屋敷の外や中から黒目ゾンビが現れた。いつの間にか、あのブルヘリアが目を覚まし、僕らに向けて銃を構えている。
「おんめぇらぁ! よくもクラリスを殺したなぁ! 許さんど!」
ブルヘリアは銃を撃つが、僕はトラックの荷台の壁をグラインドで動かし、それを防御する。
「まだゆっくりおしゃべりできそうにねぇな」
ドドは指の骨をポキポキ鳴らしながら不敵に笑う。先程のクラリスとの戦いで傷を負いながらも、未だ余裕の表情なのだから本当に頑丈だ。
「そうみたいだね。でも、あいつは僕らの敵じゃない」
僕はそう言って、トラックの荷台の壁を回転させながら飛ばし、黒目ゾンビの首を切断していく。
「はい! このミルティーユも、まだまだやれますわ!」
ミルちゃんは拳銃を撃ちながらもナイフを飛ばし、黒目ゾンビを手当たり次第倒していく。
ドドは相変わらず、ただただゾンビを殴り蹴飛ばし、隙あらばその頭をもぎ取っている。
「くっそー! いつまでも調子乗りおって!」
ブルヘリアの言葉と共に、さらに黒目ゾンビがなだれ込んでくる。
「ひぃーっ、気持ち悪いですわぁ」
ミルちゃんは心底嫌そう顔をしながらも、拳銃でゾンビ達の頭を撃ち抜き、時には転移して距離を取る。庭園を埋め尽くすほどにゾンビがいるのだからそれも無理はない。
「ブルヘリア、どんなに数を増やそうが残りはあなた1人だ。観念しろ」
僕は周りのゾンビを殴りつつ、トラックの荷台の壁、さらにトラックの破片を飛ばし、一気にゾンビの群れを吹き飛ばす。
そこへドドが飛び出し、ブルヘリアの前に出た。
「往生際が悪いってもんだ。あん時の里での借り、返してやるぜ」
そう言って、ブルヘリアの顔を2発殴り、奴の腹に向けて後ろ蹴りを放った。
「んがばばばっがー! ふがふがー!? ぼぼへあー!」
ブルヘリアは後方のゾンビもろとも吹き飛ばされた。そして、そのブルヘリアの背後にミルちゃんが現れる。
「あなたもあの3人の所へ送ってあげますわ!」
ミルちゃんは、宙に浮いていたブルヘリアの背へ向けて、振りかぶった釘バットで思い切り殴った。
「いぃぎぎぎゃぁーん!」
ブルヘリアは宙に飛ばされる。僕はトラックのタイヤに乗ってそのブルヘリアを迎え撃つ。
タイヤから離れ、そのタイヤを回転させながらブルヘリアの顔面にぶつけた。
「これで、ナイトサイド・エクリプスは終わりだ」
僕はそう言って、タイヤの跡がついたブルヘリアの顔を思い切り蹴り払った。
やがて、煙が晴れる。埃が舞った庭園は、芝生が無くなり、近くの樹は倒れ、見るも無残な場所に変わっていた。
そこにシクスの姿はなかった。だが、クラリスの前に大きな槍が何重にも重ねられ、奴は右腕から血を流して負傷し、息を荒らげながらもそこに立っていた。
「シクスは、時間がなかったから捨て身の攻撃をしてくれたんだな。消滅したわけじゃないんだろ?」
僕の隣に立つドドが、クラリスを見据えながら聞いた。
「うん、大丈夫。現界出来なくなる程のダメージを受けても成仏するわけじゃないし、また24時間後には現界できるから」
僕がそう言うと、ドドは小さく息を吐いてほっと安心し、そして構える。
「そうか。じゃあ、アイツの最後の攻撃を無駄にしねぇためにも、ここで一気にケリをつけようぜ」
ドドの言葉に頷き、僕は近くに倒れている樹をグラインドで動かそうとする。
が、そこでミルちゃんが前に出た。
「あなた……よくも、よくもシクスさんを殺しましたわね!」
え? あ? ミルちゃん、まさかシクスが幽霊だってわかってなかったのかな?
「あ、ミルちゃん、大丈夫。シクスは幽霊だし、また会えるから……」
僕がそう言った時には既にミルちゃんは走り出しており、その言葉は耳に入っていないようだった。隣に立つドドも、口を開けたまま眉根を寄せている。
「許しませんわ! 許しませんわ! わたくしを先程かばってくれたあの人を、よくも殺しましたわね!」
だからもうシクスは死んでるんだってば。しかし、僕がそれを言ったとしても、もう聞こえないくらいにミルちゃんは離れていく。
芝生が吹き飛んで、荒れた地面の上を、黒いゴスロリワンピースを着た真紅のツインテールの乙女が駆ける。
その手に、ナイフが現れる。それは戦闘用のナイフではない。ディナーの時に用いられる、食事用のテーブルナイフだ。
「死になさい!」
ミルちゃんは正面からそのナイフでクラリスを切り付ける。クラリスは突然自身に向かって突進してきたゴスロリ乙女に狼狽えながらも、槍の柄でそのナイフを受け止める。
次の瞬間にはミルちゃんはもう消えていた。クラリスの左側、斜め上の空中に出現し、槍を持っていた腕に向かってそのナイフを振り下ろし、クラリスの腕から血が流れる。
「がっ! すばしっこいお嬢ちゃんね」
クラリスは手に持った槍で振り払いながらも空中に3本の槍を発生させる。だが、またミルちゃんは消える。今度はクラリスの右側の足元に現れ、クラリスの脚をナイフで傷付けた。
「あの前髪が長い紳士様を殺した事、わたくしは絶対に許しませんわよ」
今度は倒れかけた樹の上に現れ、拳銃を連射していた。
「くっ! なんなのよこの娘! あの男は幽霊なんでしょ? 私が除霊なんかできるわけないじゃない」
やはり、「成仏させてやる」と先程言っていたのは見栄だったか。クラリスは地面を走り、銃弾を避けながらミルちゃんに言うが、彼女にはその言葉は届いていないようだ。
クラリスは樹の上のミルちゃんに向けて黒い滲みから槍を放つ。ミルちゃんは再び消え、その槍は樹を切り裂いただけだった。ミルちゃんは洋館の屋根の上にいた。
「わたくしは、シクスさんに、あの紳士様にお礼が言いたかった……少しだけ、お話してみたかった」
ミルちゃんのその目には涙が浮かんでいた。涙を溜めながらもその顔を上げる。
「もうこれ以上、わたくしの目の前で、仲間を死なせませんわ!」
そう言って、その手からナイフを次々に出しては投げていく。が、そのナイフは見当違いな方向へと飛んでいく。
「どこに向けて投げてるの? 我を忘れて標的が定まってないわよ? 私はここよ?」
クラリスは思わず笑ってしまっていた。
だが、次の瞬間、ミルちゃんが投げたナイフは一斉に消え、それは全てクラリスの身体の周りに出現した。それはあたかも、クラリスが使う黒い滲みから出る槍のようだった。
「っ!?」
油断していたクラリスは防御出来ずに全身にナイフを突き刺されてしまう。
「あなたの技、真似させていただきましたわ」
ミルちゃんはクラリスの懐に現れ、手に持ったナイフで奴の腹部を斜めに切る。クラリスは腹から血を飛散させながら地に膝を付く。
「くっ、なんて事してくれるのよ! こんな屈辱は、初めてよ。この、槍に、『ディオティマ』に、私は、負けないと誓った。その誇りを持って、あなたを、倒す!」
背後のミルちゃんを振り返りながらクラリスは黒槍を振り上げる。だが、すぐにミルちゃんは消える。
クラリスの頭上に現れ、眼下の奴に向けて両手に持ったナイフを投げる。しかし、クラリスの黒い滲みが発生し、そこから出た槍がナイフを弾き飛ばす。
「あなたに誇りがあるように、わたくしにも誇りがあります。ミモザ姉様の妹として、姉様を大切にしてくれた人達を、わたくしは全力で守ります。それがわたくしの誓いであり、誇りです」
再び洋館の屋根の上に現れたミルちゃんはそう言い、ナイフを投げていく。それは先程と同じようにクラリスの周囲に現れ、奴の身体に突き刺さる。
だが、クラリスは槍を振り回し、その攻撃に反応していく。そして、屋根の上のミルちゃんに向かって滲みから槍をいくつも放っていく。
ミルちゃんは屋根から樹の上、池の近くの岩の上、門の上へと次々に移動しながらもその手からナイフを投げ、攻撃の手を緩めなかった。
「いいわ。一気にカタをつけてあげる。あなたの誇りに、私の誇りをぶつけてあげる!」
クラリスがそう言うと、奴の上空に大きな黒い滲みが現れ、そこから巨大な槍が出現する。先程のトラックを大破した槍よりも何倍も大きい。
「大きいですわね。でも、負けません!」
ミルちゃんがそう言うと、先程僕達を取り囲んだトラックが彼女の前に縦に並んで現れた。
そのトラックの列に巨大な槍が突き刺さる。衝撃音を立てながらトラックを破壊し、巨大な槍は突き進んでいく。トラックを何台も団子状に突き刺して。
そのトラックの固まりが消えた。それは、クラリスの背後へと現れた。すぐに事態を察知出来なかったクラリスは、背後を振り返って驚愕した。
転移したトラックの固まりは、クラリスが放った巨大な槍の速度をそのまま宿していたからだ。
「ぐっぐぐわぁー!? ごほっ! ががぐぁー!」
トラックの固まりがクラリスに衝突し、奴は叫んでいた。
「これで、終わりですわ!」
ミルちゃんはいつの間にかそのトラックの上にいた。トラックの固まりは、先程クラリスが出した巨大な槍も巻き込み、そのまま屋敷を取り囲む塀に衝突した。
「お、終わったのか? あのクラリスって女、倒しちまったぞ?」
僕の隣に立つドドが呆れるように驚いていた。僕も同様にびっくりしている。
ミルちゃんのグラインドでクラリスの槍を転移させる事はできないが、その威力を別の物体に巻き込んで相手にぶつけるなど、僕だったら思いつかない。とてもダイナミックな攻撃だった。
「想様、敵を撃破致しました。でも、もう、あの御方は……」
ミルちゃんは僕の前に現れ、俯きながら言った。
「あ、あぁ。え? あ? シクスの事? シクスは幽霊だから死なないよ? 猫さんの幽霊さんだから。また会えるよ?」
ミルちゃんの快進撃に呆気にとられ、意識が飛んでいた僕は言葉が頭に入ってなかったが、数秒してから理解しそう言った。
そして、その言葉を聞いたミルちゃんも呆気にとられたように目を丸くし、意識が飛ぶ。
「ほへ? え、シクスさんも幽霊でしたの? わた、わたくし、てっきり人間の方だったのかと……いや、でもよくよく考えてみれば想様のお姉様と同じように現れましたものね!? え? 猫さんなんですの!?」
ようやく僕の話を理解した彼女は恥ずかしがりながら慌て出した。それを見てつい僕は笑ってしまう。
が、その時、屋敷の外や中から黒目ゾンビが現れた。いつの間にか、あのブルヘリアが目を覚まし、僕らに向けて銃を構えている。
「おんめぇらぁ! よくもクラリスを殺したなぁ! 許さんど!」
ブルヘリアは銃を撃つが、僕はトラックの荷台の壁をグラインドで動かし、それを防御する。
「まだゆっくりおしゃべりできそうにねぇな」
ドドは指の骨をポキポキ鳴らしながら不敵に笑う。先程のクラリスとの戦いで傷を負いながらも、未だ余裕の表情なのだから本当に頑丈だ。
「そうみたいだね。でも、あいつは僕らの敵じゃない」
僕はそう言って、トラックの荷台の壁を回転させながら飛ばし、黒目ゾンビの首を切断していく。
「はい! このミルティーユも、まだまだやれますわ!」
ミルちゃんは拳銃を撃ちながらもナイフを飛ばし、黒目ゾンビを手当たり次第倒していく。
ドドは相変わらず、ただただゾンビを殴り蹴飛ばし、隙あらばその頭をもぎ取っている。
「くっそー! いつまでも調子乗りおって!」
ブルヘリアの言葉と共に、さらに黒目ゾンビがなだれ込んでくる。
「ひぃーっ、気持ち悪いですわぁ」
ミルちゃんは心底嫌そう顔をしながらも、拳銃でゾンビ達の頭を撃ち抜き、時には転移して距離を取る。庭園を埋め尽くすほどにゾンビがいるのだからそれも無理はない。
「ブルヘリア、どんなに数を増やそうが残りはあなた1人だ。観念しろ」
僕は周りのゾンビを殴りつつ、トラックの荷台の壁、さらにトラックの破片を飛ばし、一気にゾンビの群れを吹き飛ばす。
そこへドドが飛び出し、ブルヘリアの前に出た。
「往生際が悪いってもんだ。あん時の里での借り、返してやるぜ」
そう言って、ブルヘリアの顔を2発殴り、奴の腹に向けて後ろ蹴りを放った。
「んがばばばっがー! ふがふがー!? ぼぼへあー!」
ブルヘリアは後方のゾンビもろとも吹き飛ばされた。そして、そのブルヘリアの背後にミルちゃんが現れる。
「あなたもあの3人の所へ送ってあげますわ!」
ミルちゃんは、宙に浮いていたブルヘリアの背へ向けて、振りかぶった釘バットで思い切り殴った。
「いぃぎぎぎゃぁーん!」
ブルヘリアは宙に飛ばされる。僕はトラックのタイヤに乗ってそのブルヘリアを迎え撃つ。
タイヤから離れ、そのタイヤを回転させながらブルヘリアの顔面にぶつけた。
「これで、ナイトサイド・エクリプスは終わりだ」
僕はそう言って、タイヤの跡がついたブルヘリアの顔を思い切り蹴り払った。
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