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第4章 ナターシャ
4-19 滲み
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日は沈み、夜の帳が下り始める中、クラリスは黒槍を片手に持ち、悠然と立ちながらも圧倒的な存在感を放っていた。
その紫の瞳に静かな殺意を宿しながら。
「私達は、ゼブルムの一員でありながらも、ナイトサイド・エクリプスの教団員。組織と、そしてこの教団の理想を築き上げるためにも、私はもう容赦しないわ」
クラリスはそう言うと、身を低く屈めながら、1番近くにいたドドに向かって走り出す。そして、下から突き上げるようにその黒槍を放った。
「やられるか」
そう言ってドドは2歩、3歩踏み出してその槍を右の肘打ちで払い除け、左の拳を放つ。が、クラリスは身体を横にしてそれを避けた。
そして、次の瞬間、ドドの背後に幾重もの斬撃が発生し、彼の背中を斬り付けた。クラリスの槍はドドの目の前にあるのにも拘わらず、なぜかドドを後ろから攻撃している。まるで、何も無い空間から槍が発生しているように。
「ぬわっ! くそ!」
斬撃を背に受けながらも、咄嗟に地面を転がるようにして追撃を回避していく。そこへシクスが飛び出す。
「はっ!」
シクスは短く声を発し、クラリスに向かって回し蹴りを放ち、そのまま回転しながら蹴りの連撃を放つ。
その間にも右手に持った拳銃を撃っていく。蹴りと銃弾のコンビネーションだ。これは、いつかラウディさんがサービスエリアで特殊部隊を相手にやっていた技だ。
クラリスは槍を振り回しながらその蹴りを受け流していくが、シクスの連撃に押されつつあり、また予想外の方向から発射された銃弾は避けようがなかった。
「くっ! やるわね。とても人間とは思えないわ」
「猫の幽霊ですからね。まだまだ」
シクスは回転しながらそう応え、そして地面を蹴り宙に跳ぶ。宙に浮きながらもさらに横から蹴りを放つが、それをクラリスが槍の柄で受け止める。
シクスは足を捻って向きを変え、その槍の柄に足を乗せてさらに跳ぶ。そこから身を丸めて縦に前回転しながらクラリスの頭上を越え、回転の威力を加えた踵落としをクラリスの首の付け根に当てた。
「くはっ!」
クラリスは前のめりになりながら体勢を崩す。そして、蹴りを放ったシクスは空中で逆さの体勢になりながらも、両手に持った2挺の拳銃をクラリスの背に向けて撃ち放つ。
が、シクスが撃った銃弾が何かに弾かれた。そしてさらに、宙に浮きながら身体の向きを戻したシクスの四方八方から、幾つもの槍が現れ、それらが一斉に放たれ、シクスを突き刺していった。
「シクス!」
金属が擦れる音が鳴り響き、僕は思わず彼の名前を叫んだ。
「大丈夫ですよ。私の『D3』にはこんな使い方もあるんです」
シクスは無事だった。彼を縦横無尽に突き刺したかのように見えた槍は、そのどれもが彼の身体を避けていた。
いや、よく見ると、シクスの身体の周りに幾つもの戦車砲が現れていた。それがシクスを守り、槍の軌道を逸らしていたのだ。
「あのマードックを見ていて私も使ってみたくなってしまいまして」
空中で槍と戦車砲に囲まれて固定されていたシクスがそう呟くと、その幾つもある戦車砲1つ1つに素早く砲弾を装填していき、クラリスに向けて次々に砲火した。
「っ!?」
背後を振り返ったクラリスの顔が驚愕に満ちると共に爆音が響いた。
「ひえー……さっきの人よりもすごい砲撃ですわ」
ミルちゃんはその場にへたれ込みながら唖然としていた。当のシクスの周りにあった槍は消え、彼は地面に降り立った。
「倒したの?」
僕がそう聞くと、シクスは首を振る。
「防御しながら回避したようです。あそこです」
シクスの視線の先を見る。地面から10m程の高さの上空で、クラリスは宙に浮いた2本の槍の上に足を乗せて立っていた。
「クラリスのグラインドの正体、それは『黒い滲み』です。空間に滲みを発生させ、そこから槍を出しているようです」
シクスはクラリスと戦いながらその能力を分析してくれていたようだ。
確かに、宙に浮いた2本の槍の周りに黒い滲みが付いている。槍そのものが黒いため今まで全く気付かなかった。
「黒い滲み……なんなんだそれ……」
上空のクラリスを見上げながらドドは険しい表情を浮かべていた。
「私のグラインド、『クラリス』。それは、次元の滲みを発生させるのよ。あなた達に、これが躱せるかしら?」
と、僕達の頭上に無数の槍が現れた。
「皆様! わたくしにお任せを!」
槍の雨が降り注ぐ時、ミルちゃんがそう言った。すると、僕達はクラリスの周りの上空へと瞬間移動していた。
「私も時間がありません。このまま一気に畳み掛けましょう。ミルティーユさん、お願いします」
シクスはそう言って両手の拳銃を連射する。僕は再び近くにあった悪魔の像をグラインドで動かし、それに乗る。
「僕は大丈夫。ミルちゃん、2人を頼む」
「わかりました。堂島さん、シクスさん、少々荒くなりますが付いてきてください!」
ミルちゃんがそう言うと、ドドとシクスはそれぞれクラリスの目の前と背後に現れる。
「ははっ! いいぜ、やってやろうじゃねぇか」
ドドはクラリスの正面から拳を放った。クラリスは槍で防御しながらも反撃し、突然現れたドドにもすぐに対処した。
が、背後にはシクスがいた。シクスはクラリスの背中に向けて蹴りを放ち、下方へ突き落とす。そしてすぐにそのクラリスに向けて拳銃を放つ。
ドドもシクスも、落下しながら攻撃を放っている。尋常じゃない。
「なんて奴らなのよ。面白いわ」
クラリスは空中で滲みを発生させ、その滲みそのもので身体を支え、自身の前には無数の槍を出現させてシクスの銃弾を防いでいた。
「はぁーっ!」
そこへ、僕は自分が乗っている悪魔の銅像を猛スピードで動かし、クラリスの腹へと拳をぶち込む。
「くはぁっ!」
呻き声を上げたクラリスだったが、僕の周りに次々に黒い滲みが現れ、槍が飛び出して来ていた。
止むを得ず、悪魔の銅像で防御するしかなく、あまりに強い斬撃に体勢を崩したが、すぐに地面に降り立った。ミルちゃんが僕を地上に移動してくれていた。
上空では、再びクラリスの前にシクスが現れる。空中で体勢を立て直そうとしたクラリスの顔面目掛けてシクスが拳を放っていた。
「休む暇さえもくれないわけね」
クラリスはそのシクスの拳に向かって槍の刃を向ける。その瞬間、シクスの拳から銃が現れる。ウィンチェスターライフルだ。その長い銃身でクラリスの槍を跳ね除ける。
が、クラリスは自身が持つ槍で再び突きを放つと共に、その槍の周りに発生した無数の黒い滲みから別の槍を出現させる。
「くっ」
容赦なく襲う幾重もの槍の連撃を受け、シクスは傷を負いながらも飛ばされる。
「血が出ない……まさか、本当に幽霊なの?」
クラリスが呟くように言った。だが、シクスは飛ばされながらも無言で手にしたウィンチェスターライフルを撃つ。槍の連撃を掻い潜ったいくつかの銃弾がクラリスの身体に命中し、奴の表情は苦痛に歪む。
「あとは任せろ」
ドドの声がした。クラリスの背後にミルちゃんのグラインドで現れた彼は、槍を持つクラリスの手を蹴り上げ、その手から槍が離れる。
「くっ! その程度で勝ったと思わないで!」
ドドに向けて滲みから槍が放たれ、それを受けたドドの身体から血が飛び散る。
「うっ……! お前こそ、この程度で俺を倒せると思うなよ」
ドドはそう言ってクラリスの腕を掴むと、地面に向けて背負い投げた。
「ごはっ!」
衝撃音を立てて地面に投げ落とされたクラリスが血を吐いた。
「おーらぁ!」
そして、ドドは仰向けに倒れたクラリスに向かって落下し、その拳を奴の腹に叩きつけた。
「あなたの負けです。降参しなさい」
シクスがウィンチェスターライフルを片手で構えながら近付く。
「わたくし達4人には誰も敵いませんわよ。心臓を取り除かれたくなければ、今のうちに負けを認めた方がいいですわよ?」
ミルちゃんは拳銃を向けている。
「ナイトサイド・エクリプス……このまま放置していたら無関係な人まで生け贄にしていただろう。ここで、この邪悪な宗教を終わらせてやる」
僕も近付いてシクスの隣に並ぶ。と、クラリスはあれ程のダメージを受けながら、尚も立ち上がる。
「あなた達にはわからないのよ。悪魔こそが、この世界を確実に変える存在。絶対的な力を持っているのよ」
クラリスの瞳の中に黒い炎が見えた気がした。
「この世には、悪魔も神もいない」
僕は以前から持っていた考えをそのまま口にした。だが、それを聞いたクラリスが、フッと笑う。
「悪魔がいると理解しているからこそ、この教団に身を捧げているのよ。私達が、ただ無闇に生け贄を捧げていたとでも思ったの? それが意味を成していると、この目で何度も確認しているから言っているのよ」
何を確認したのだ? それを聞こうとしたそのとき、僕達4人の周囲に夥しい数の黒い滲みが出現する。
「これだけあればもう避けられないわ! さぁ、死になさい!」
夥しい数の黒い滲みから、夥しい数の槍が放たれる。
「そうはさせませんわ!」
ミルちゃんが叫ぶと、僕達の周りに何台もの大型トラックが上を向いた状態で現れた。
僕達を囲んだそのトラックの壁を僕のグラインドの力で支える。激しい槍の斬撃音が鳴り響く。
「想、もう時間です。最後に相打ち覚悟で突撃します」
シクスはそう言ってウィンチェスターライフルと拳銃を持つ。
「わかった。いこう」
そう言って、僕は真正面のトラックを倒す。シクスがそれに素早く飛び乗ったのを確認すると、そのトラックをクラリスに向けて突進させる。
クラリスの手にはいつの間にか黒い槍が戻って来ており、槍の嵐は今も続いている。
「クラリス、あなた達の宗教の事など、私にとってはどうでもいい。私は、ただ私の大切な人を守るためにあなたを倒す」
そう言ってシクスは突進するトラックの上から両手の銃を連射する。
「いいでしょう。私も戦士のはしくれ。幽霊のあなたのその言葉に全力で応えてあげるわ!」
そう言うと、クラリスの前に巨大な黒い滲みが現れる。そして、トラックと同じくらいの大きさの巨大な槍が飛び出した。
シクスを乗せたトラックと巨大な槍が衝突し、轟音を響かせながらトラックは大破する。
その瞬間、シクスは飛び出す。衝突時の物理法則によって生じた勢いも乗せ、彼は宙を飛びながらも両手のウィンチェスターライフルと拳銃を連射する。
「はあぁー!」
クラリスは発声しながら再び槍の連撃を放つ。今までの倍以上の量の槍がシクスを襲い、蓄積したダメージによりシクスの身体が少しずつ薄くなる。
「幽霊よ、成仏しなさい!」
そう言って、クラリスは目前に迫ったシクスに向けて手に持った黒槍を突き放つ。
「あなたも道連れだ」
シクスはそう言って、ウィンチェスターライフルを振り上げてクラリスの槍を払い除ける。
そして、シクスの手からウィンチェスターライフルが離れ、その手には大量の手榴弾が出現する。それをクラリスに向けて放ち、もう片方の手に持った拳銃で撃つと大爆発が巻き起こった。
その紫の瞳に静かな殺意を宿しながら。
「私達は、ゼブルムの一員でありながらも、ナイトサイド・エクリプスの教団員。組織と、そしてこの教団の理想を築き上げるためにも、私はもう容赦しないわ」
クラリスはそう言うと、身を低く屈めながら、1番近くにいたドドに向かって走り出す。そして、下から突き上げるようにその黒槍を放った。
「やられるか」
そう言ってドドは2歩、3歩踏み出してその槍を右の肘打ちで払い除け、左の拳を放つ。が、クラリスは身体を横にしてそれを避けた。
そして、次の瞬間、ドドの背後に幾重もの斬撃が発生し、彼の背中を斬り付けた。クラリスの槍はドドの目の前にあるのにも拘わらず、なぜかドドを後ろから攻撃している。まるで、何も無い空間から槍が発生しているように。
「ぬわっ! くそ!」
斬撃を背に受けながらも、咄嗟に地面を転がるようにして追撃を回避していく。そこへシクスが飛び出す。
「はっ!」
シクスは短く声を発し、クラリスに向かって回し蹴りを放ち、そのまま回転しながら蹴りの連撃を放つ。
その間にも右手に持った拳銃を撃っていく。蹴りと銃弾のコンビネーションだ。これは、いつかラウディさんがサービスエリアで特殊部隊を相手にやっていた技だ。
クラリスは槍を振り回しながらその蹴りを受け流していくが、シクスの連撃に押されつつあり、また予想外の方向から発射された銃弾は避けようがなかった。
「くっ! やるわね。とても人間とは思えないわ」
「猫の幽霊ですからね。まだまだ」
シクスは回転しながらそう応え、そして地面を蹴り宙に跳ぶ。宙に浮きながらもさらに横から蹴りを放つが、それをクラリスが槍の柄で受け止める。
シクスは足を捻って向きを変え、その槍の柄に足を乗せてさらに跳ぶ。そこから身を丸めて縦に前回転しながらクラリスの頭上を越え、回転の威力を加えた踵落としをクラリスの首の付け根に当てた。
「くはっ!」
クラリスは前のめりになりながら体勢を崩す。そして、蹴りを放ったシクスは空中で逆さの体勢になりながらも、両手に持った2挺の拳銃をクラリスの背に向けて撃ち放つ。
が、シクスが撃った銃弾が何かに弾かれた。そしてさらに、宙に浮きながら身体の向きを戻したシクスの四方八方から、幾つもの槍が現れ、それらが一斉に放たれ、シクスを突き刺していった。
「シクス!」
金属が擦れる音が鳴り響き、僕は思わず彼の名前を叫んだ。
「大丈夫ですよ。私の『D3』にはこんな使い方もあるんです」
シクスは無事だった。彼を縦横無尽に突き刺したかのように見えた槍は、そのどれもが彼の身体を避けていた。
いや、よく見ると、シクスの身体の周りに幾つもの戦車砲が現れていた。それがシクスを守り、槍の軌道を逸らしていたのだ。
「あのマードックを見ていて私も使ってみたくなってしまいまして」
空中で槍と戦車砲に囲まれて固定されていたシクスがそう呟くと、その幾つもある戦車砲1つ1つに素早く砲弾を装填していき、クラリスに向けて次々に砲火した。
「っ!?」
背後を振り返ったクラリスの顔が驚愕に満ちると共に爆音が響いた。
「ひえー……さっきの人よりもすごい砲撃ですわ」
ミルちゃんはその場にへたれ込みながら唖然としていた。当のシクスの周りにあった槍は消え、彼は地面に降り立った。
「倒したの?」
僕がそう聞くと、シクスは首を振る。
「防御しながら回避したようです。あそこです」
シクスの視線の先を見る。地面から10m程の高さの上空で、クラリスは宙に浮いた2本の槍の上に足を乗せて立っていた。
「クラリスのグラインドの正体、それは『黒い滲み』です。空間に滲みを発生させ、そこから槍を出しているようです」
シクスはクラリスと戦いながらその能力を分析してくれていたようだ。
確かに、宙に浮いた2本の槍の周りに黒い滲みが付いている。槍そのものが黒いため今まで全く気付かなかった。
「黒い滲み……なんなんだそれ……」
上空のクラリスを見上げながらドドは険しい表情を浮かべていた。
「私のグラインド、『クラリス』。それは、次元の滲みを発生させるのよ。あなた達に、これが躱せるかしら?」
と、僕達の頭上に無数の槍が現れた。
「皆様! わたくしにお任せを!」
槍の雨が降り注ぐ時、ミルちゃんがそう言った。すると、僕達はクラリスの周りの上空へと瞬間移動していた。
「私も時間がありません。このまま一気に畳み掛けましょう。ミルティーユさん、お願いします」
シクスはそう言って両手の拳銃を連射する。僕は再び近くにあった悪魔の像をグラインドで動かし、それに乗る。
「僕は大丈夫。ミルちゃん、2人を頼む」
「わかりました。堂島さん、シクスさん、少々荒くなりますが付いてきてください!」
ミルちゃんがそう言うと、ドドとシクスはそれぞれクラリスの目の前と背後に現れる。
「ははっ! いいぜ、やってやろうじゃねぇか」
ドドはクラリスの正面から拳を放った。クラリスは槍で防御しながらも反撃し、突然現れたドドにもすぐに対処した。
が、背後にはシクスがいた。シクスはクラリスの背中に向けて蹴りを放ち、下方へ突き落とす。そしてすぐにそのクラリスに向けて拳銃を放つ。
ドドもシクスも、落下しながら攻撃を放っている。尋常じゃない。
「なんて奴らなのよ。面白いわ」
クラリスは空中で滲みを発生させ、その滲みそのもので身体を支え、自身の前には無数の槍を出現させてシクスの銃弾を防いでいた。
「はぁーっ!」
そこへ、僕は自分が乗っている悪魔の銅像を猛スピードで動かし、クラリスの腹へと拳をぶち込む。
「くはぁっ!」
呻き声を上げたクラリスだったが、僕の周りに次々に黒い滲みが現れ、槍が飛び出して来ていた。
止むを得ず、悪魔の銅像で防御するしかなく、あまりに強い斬撃に体勢を崩したが、すぐに地面に降り立った。ミルちゃんが僕を地上に移動してくれていた。
上空では、再びクラリスの前にシクスが現れる。空中で体勢を立て直そうとしたクラリスの顔面目掛けてシクスが拳を放っていた。
「休む暇さえもくれないわけね」
クラリスはそのシクスの拳に向かって槍の刃を向ける。その瞬間、シクスの拳から銃が現れる。ウィンチェスターライフルだ。その長い銃身でクラリスの槍を跳ね除ける。
が、クラリスは自身が持つ槍で再び突きを放つと共に、その槍の周りに発生した無数の黒い滲みから別の槍を出現させる。
「くっ」
容赦なく襲う幾重もの槍の連撃を受け、シクスは傷を負いながらも飛ばされる。
「血が出ない……まさか、本当に幽霊なの?」
クラリスが呟くように言った。だが、シクスは飛ばされながらも無言で手にしたウィンチェスターライフルを撃つ。槍の連撃を掻い潜ったいくつかの銃弾がクラリスの身体に命中し、奴の表情は苦痛に歪む。
「あとは任せろ」
ドドの声がした。クラリスの背後にミルちゃんのグラインドで現れた彼は、槍を持つクラリスの手を蹴り上げ、その手から槍が離れる。
「くっ! その程度で勝ったと思わないで!」
ドドに向けて滲みから槍が放たれ、それを受けたドドの身体から血が飛び散る。
「うっ……! お前こそ、この程度で俺を倒せると思うなよ」
ドドはそう言ってクラリスの腕を掴むと、地面に向けて背負い投げた。
「ごはっ!」
衝撃音を立てて地面に投げ落とされたクラリスが血を吐いた。
「おーらぁ!」
そして、ドドは仰向けに倒れたクラリスに向かって落下し、その拳を奴の腹に叩きつけた。
「あなたの負けです。降参しなさい」
シクスがウィンチェスターライフルを片手で構えながら近付く。
「わたくし達4人には誰も敵いませんわよ。心臓を取り除かれたくなければ、今のうちに負けを認めた方がいいですわよ?」
ミルちゃんは拳銃を向けている。
「ナイトサイド・エクリプス……このまま放置していたら無関係な人まで生け贄にしていただろう。ここで、この邪悪な宗教を終わらせてやる」
僕も近付いてシクスの隣に並ぶ。と、クラリスはあれ程のダメージを受けながら、尚も立ち上がる。
「あなた達にはわからないのよ。悪魔こそが、この世界を確実に変える存在。絶対的な力を持っているのよ」
クラリスの瞳の中に黒い炎が見えた気がした。
「この世には、悪魔も神もいない」
僕は以前から持っていた考えをそのまま口にした。だが、それを聞いたクラリスが、フッと笑う。
「悪魔がいると理解しているからこそ、この教団に身を捧げているのよ。私達が、ただ無闇に生け贄を捧げていたとでも思ったの? それが意味を成していると、この目で何度も確認しているから言っているのよ」
何を確認したのだ? それを聞こうとしたそのとき、僕達4人の周囲に夥しい数の黒い滲みが出現する。
「これだけあればもう避けられないわ! さぁ、死になさい!」
夥しい数の黒い滲みから、夥しい数の槍が放たれる。
「そうはさせませんわ!」
ミルちゃんが叫ぶと、僕達の周りに何台もの大型トラックが上を向いた状態で現れた。
僕達を囲んだそのトラックの壁を僕のグラインドの力で支える。激しい槍の斬撃音が鳴り響く。
「想、もう時間です。最後に相打ち覚悟で突撃します」
シクスはそう言ってウィンチェスターライフルと拳銃を持つ。
「わかった。いこう」
そう言って、僕は真正面のトラックを倒す。シクスがそれに素早く飛び乗ったのを確認すると、そのトラックをクラリスに向けて突進させる。
クラリスの手にはいつの間にか黒い槍が戻って来ており、槍の嵐は今も続いている。
「クラリス、あなた達の宗教の事など、私にとってはどうでもいい。私は、ただ私の大切な人を守るためにあなたを倒す」
そう言ってシクスは突進するトラックの上から両手の銃を連射する。
「いいでしょう。私も戦士のはしくれ。幽霊のあなたのその言葉に全力で応えてあげるわ!」
そう言うと、クラリスの前に巨大な黒い滲みが現れる。そして、トラックと同じくらいの大きさの巨大な槍が飛び出した。
シクスを乗せたトラックと巨大な槍が衝突し、轟音を響かせながらトラックは大破する。
その瞬間、シクスは飛び出す。衝突時の物理法則によって生じた勢いも乗せ、彼は宙を飛びながらも両手のウィンチェスターライフルと拳銃を連射する。
「はあぁー!」
クラリスは発声しながら再び槍の連撃を放つ。今までの倍以上の量の槍がシクスを襲い、蓄積したダメージによりシクスの身体が少しずつ薄くなる。
「幽霊よ、成仏しなさい!」
そう言って、クラリスは目前に迫ったシクスに向けて手に持った黒槍を突き放つ。
「あなたも道連れだ」
シクスはそう言って、ウィンチェスターライフルを振り上げてクラリスの槍を払い除ける。
そして、シクスの手からウィンチェスターライフルが離れ、その手には大量の手榴弾が出現する。それをクラリスに向けて放ち、もう片方の手に持った拳銃で撃つと大爆発が巻き起こった。
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