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きゅうっ! ひゅるーん、ぱっ!
しおりを挟むやって来たオバケ達はみんないなくなりました。
ようやくいつもの平穏を取り戻した二階の部屋で、カナコちゃんはおばあちゃんにお手玉を教わっています。
「ただいまー」
玄関から声がしました。
「あっ、ママが帰ってきた!」
カナコちゃんはちょっとうろたえます。
「濡れた部屋、どう説明しよう・・・。まだオナラの臭いも残ってるし。それにこの部屋の壁も人の形に盛り上がったままだよ」
あとピーマンの味も、とおばあちゃんは心の中でつぶやきました。
カナコちゃんがドキドキしていると、居間の方からママの叫び声が聞こえてきました。
「まあっ! この部屋どうしたの? ちょっと! カナコ、こっち来なさい!」
案の定です。カナコちゃんはしぶしぶ降りていきました。
ママは台所で仁王立ちしています。
まるで頭に角が生えているような表情です。
「カナコ! 説明して? 何で居間が濡れてるの? それにこの臭いは何?」
ママは居間の方にカナコちゃんを引っ張っていって、責めるように言いました。
カナコちゃんはしどろもどろに話し始めます。
「あのね、あのね、オバケがいっぱい攻めてきたの・・・」
「はあ? 何を言ってるの?」
やっぱり信じてくれそうにはありません。
「本当だよ。大変だったんだよ」
「ふうん。それで? そのオバケ達はどこにいるの」
「みんなおばあちゃんが退治してくれたの」
「おばあちゃんが?」
ばってんばあちゃんも二階から降りてきてママの後ろに立っています。
カナコちゃんは助けを求めるようにチラチラとおばあちゃんの顔を見ました。
「おじいちゃんとおばあちゃんは二人で旅行中よ」
ママが眉間にしわを寄せて言います。
「それはママの方のおじいちゃんとおばあちゃんでしょ。カナが言ってるのはばってんのおばあちゃん」
「えっ、パパのお母さんのこと? 博多の・・・」
「うん! そうだよ。遊びにきてくれたの」
カナコちゃんが明るくうなずくと、ママは顔をこわばらせました。
「何を言ってるの? 博多の桃子おばあちゃんは去年亡くなっているでしょう・・・? 忘れたの?」
ママの後ろのばってんばあちゃんが、きゅうっと顔をしかめました。
そして・・・。
ひゅるーん、ぱっ!
消えてしまったのです。
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みんなの感想(2件)
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はじめまして、タイトルにひかれてやってきました。
かわいらしいおとぎ話のようなお話、怖いようで怖くない、日本の秋の夜長に囲炉裏端でおじいちゃんやおばあちゃんがお話してくれたような、そんな世界、好きです。
お気に入りに入れさせていただきました。
少しずつ読ませていただきますね。
はじめまして!
旧作にこうして御感想いただけるなんてすごく嬉しいです。
本当にありがとうございます。
民話やおとぎ話は大好きなんですよ。
その語り口は多少意識してますね。
ただこの作品、どんどんドタバタがエスカレートしていく気もしますが、それはそれで楽しんでいただけたらなぁと思います。
そういえば主役の二人が異界を旅する話も書いてみたいと思ってたんですよね。
アリスみたいなのやりたいと……あくまでも思っただけですけど(笑)
おばあちゃんとカナコちゃんのやり取りがとっても楽しかったです。オバケ退治も、それぞれ面白くて……お話の終わりは、意外で、納得してしまって、ちょっと怖くて、ちょっと寂しい……でも、不思議と爽やかでした。オバケを見ることが出来るのは、子供の特権なのかもしれませんね。
わぁ、ありがとうございます。
これも何とか年内に完結させることが出来ました。
最後は何かお祭りが終わった後の寂しさみたいなものを出せればいいなと……。
いや、オバケに襲われてお祭りもないか。
遊園地のお化け屋敷を出た後の寂しさかな。
いやいや、何かそれ全然違う。お化け屋敷出ても別に寂しくない(笑)
子供の特権、そうですよねぇ。
幽霊は大人も見るでしょうけど、子供は誰もいないのに○○ちゃんと遊んでるのって楽しそうにしてたり。
あ、猫も何もない空間をじっと見てる時は……なんていいますけどね(笑)
子供と猫が同時に見えない何かに反応したら怖いだろうなぁ。
それにしてもしのぶさん、本年は本当に本当に色々とありがとうございます。
心より感謝しております。
良いお年をお迎えくださいね。