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風に舞う

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強風に煽られ家路を急ぐ。
突然の自然の猛威。

頑張れ俺、もうすぐ我が家だ。
ほら、豪邸の二階の窓から飼い猫ラムが心配そうにこちらを見ているではないか。
心配そうに、というのは勝手な想像だけど。


一際強い風が吹いた時。
足元を白猫が駆け抜けて行った。
そして、その勢いのまま風に乗せられ舞い上がった。

ああっ、どこかの猫が飛ばされる。
慌てて手を伸ばし掴もうとするも、俺自身が風に押されてよろめいた。
その時だ。もう一匹の猫が駆けて来てジャンプ!
雉猫だ。

雉猫は白猫の長いしっぽの先を空中でがっちり くわえた。
二匹の猫は重みで地上に戻る、かと思われたが更なる強風。再び上昇。
そこへ次の猫が駆けてきた。
颯爽と跳んで雉猫の長いしっぽの先を咥え込む錆猫。
ナイスだ!

三匹の猫が沈む。
が、しかし、地面に着地する前に特大の風吹き抜ける。
一気に舞い立つ猫達。
その最後尾、錆猫の長いしっぽの先に飛び付いて齧り付いたのが虎猫だ。
ぴょんぴょんぴょーんと跳ねて飛んでキャッチした。

繋がった四匹の猫。今度こそは大丈夫か。
いや、無情! 風も負けじと全力で猫達を押し上げる。
俺はと言えば、情けなくも手を出そうにもさっきから風に揉まれてきりきり舞い。

やあ、猫が吹き飛ぶ、その刹那、黒猫駆け来たり飛び付いた。
だが見よ何てこと、しんがりの虎猫、短尾猫ではないか!
 いた黒猫の口は届かず虚しく空振り、宙を噛む。

次の重しを加えること叶わず四匹の猫は繋がったままどんどん浮き上がり 空翔そらかけ、どんどん、どんどん。
俺の家に衝突する、と叫びそうになった瞬間。消えた。
二階の壁に吸い込まれるように消えた。

呆然とする俺はさっきの黒猫が足元にいる事に気が付いた。
見上げる黒猫と目が合う。
お前は飛ばされなかったんだな…。
黒猫はちょっと悲しそうにミーと鳴いて体を擦り寄せ、ふっと消えた。
気がつくと風はもう穏やかに落ち着いていた。


その後。
飼い猫のラムが孕んで子を生んだ。
白、雉、錆、虎の4匹。ラム、奔放な奴め。
それにしても、なるほど。

黒猫よ、次こそは我が家へ来るんだぞ。
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