【完結】婚約破棄された地味令嬢は猫として溺愛される

かずきりり

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「それでいてシェリーを選ばれたのですから……お互いの性格が合ったのでしょう」
「違っ……!」

 少し嫌味を含めて言えば、エリックは反射的に否定しようとしたけれど、続きの言い訳が考えつかないのか、中途半端に口を閉ざした。

「魔法馬鹿とは……ティルトン伯爵家を侮辱しているのかね」
「国の攻防を担ってくれている一族に何という事を」

 そして、私の言葉に対し、怒りを隠しきれないのはお父様と国王陛下だ。確かに魔法を得意とする一族で、重要な役割を担っているとも言える。それでも私は魔法馬鹿と言われるのが当たり前すぎて何とも思わなかったけれど……こんなに怒る程の侮辱なのかと、頭の片隅で思ってしまった。
 確かに、初めて言われた時は胸に痛みを覚えて居たような気もするけれど。

「地味……? こんなに愛らしいマーガレットを……?」

 更には王太子殿下の地雷まで踏み抜いたのだろう。殺気が陽炎のように、ゆらりと揺れているようだ。

「こんな可愛く愛らしいマーガレットを!? ティルトン伯爵の名に違わず、魔法の力は最高級で賢者と行動を共に出来る程だ! 虐げられても屈する事ない崇高な精神や負けずと戦う行動力のどこが地味だ!」

 必死に生きて来ただけです。と声には出さない。
 周囲に居た貴族達が目を見張り、中には感嘆の声を上げる者も居た。……今の生活をどうするかだけを考えて、今を必死に生きて来ただけだから、将来の事や自分の事を考えていたわけではないので、感心される事ではないのだけれど。
 ……どうもむずがゆい。

「柔らかく、美しい艶のある毛! 柔らかく美しい、しなやかな体躯! つぶらで純粋な大きい瞳に、温かく抱きしめれば腕に収まる可愛らしさ!」

 きゃぁあああ!
 何か色々間違っています!否、間違っていないのかもしれないけれど、違う!それ、猫!猫の姿!

「お前は一体マーガレットの何を見ていたというのだ!」

 人の姿です~~~~~~!!!!!
 エリックは一度、私の姿を見た後に小さく首を傾げたが、王太子殿下に睨まれて、膝から崩れ落ちた。きっと何を言ったとしても無駄だと思ったのだろう。どう聞いても王太子殿下は私を溺愛しているとしか思えない。
 うん、確かに溺愛されてた。猫として。
 私が猫の姿で王太子殿下の側に居たという事を知らない貴族達は、顔を赤らめたり、呆気に取られた表情をしたりと様々だ。
 ある意味で夜を想像しても、おかしくはない言い回しだったもの。

「相思相愛だなぁ」

 微笑ましく宣言した国王陛下とは違い、お父様は怒りで顔を真っ赤に染め上げていたけれど。……後で猫へ変化していた事、ちゃんと説明しておこう。
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