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「……エリック?」
怒りの形相に顔を歪めたエリックに、シェリーはポカンとした。
「僕は次男だぞ!? 家は兄が継ぐから、僕はティルトン伯爵家へ婿養子として入る筈だったんだ!」
「え…………あっ!」
シェリーは呆気に取られた後、言葉の意味に気が付いたのか、顔を真っ青にした。
「僕に継ぐ爵位はない! シェリーがマーガレットに価値はなく、ティルトン伯爵は自分の味方だと言ったんじゃないか! 騙したな!」
「騙したって人聞きの悪い! エリックだってお義姉様みたいな地味女は嫌だって言っていたじゃない! 喜んで乗り換えたくせに!」
「生きる為だ! 政略結婚にせよ、爵位の有無は大事だろう!」
「あんただって! 爵位がなければ用なしよ!」
とんだ醜聞である。
確かに爵位の有無……というより、生きていくにはお金がかかる。貴族として生まれ、教育を受けたのであれば、国に対して働き、民へと還元する。それを継ぐ爵位がないから平民になりますでは、今まで生きる為に民達の税金を使っておいて、無責任な事だ。
「生活に爵位の関係もあるし、次男だからこそ婿養子として必要としていたのだがな……」
お父様の声にビクリと身を震わせた二人は、今まで大声で罵りあっていたのが嘘のように、静かになった。
「申し訳ありません! ティルトン伯爵!」
「あなた! 助けてよ! 私達はどうすれば良いの!?」
「お義父様! 私はお義姉様と違って社交界にも足しげく通っていたし、娘として十分役に立てるわ!」
厚顔無恥とは、この事か。
自分達が何をしたのか理解していないのか。していたとしても、自分の事しか考えられていないのか……。
私も何か言った方が良いのだろうか……言ったところで逆上させるだけな気もするけれど……。見ているだけ、聞いているだけで良いものかどうか悩んでいれば、王太子殿下が再度ギュッと私の腰を強く掴んだ。
「騒々しい!」
まさに、一喝。
そうとしか思えない、威圧を込めた力強い、存在感のある声。まさに条件反射とも言えるように貴族達は頭を垂れた為、私もそれに倣って頭を下げた。
――国王陛下。
顔を見た事もなければ、声を聞いた事もないけれど、存在感や皆の態度から察する事が出来る。
「楽にしてくれ」
国王陛下は一言、どうでも良さそうに放つと、騒動の中心に居た人物達へと睨みつけるかのように目を向けた。
「息子の婚約発表の場を平民がぶち壊しおって……っ!」
……意外に父親をしているのかもしれない。
国王陛下と言えば、家族の情など無関係にも思えたが、人の親という事か。
怒りの形相に顔を歪めたエリックに、シェリーはポカンとした。
「僕は次男だぞ!? 家は兄が継ぐから、僕はティルトン伯爵家へ婿養子として入る筈だったんだ!」
「え…………あっ!」
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「僕に継ぐ爵位はない! シェリーがマーガレットに価値はなく、ティルトン伯爵は自分の味方だと言ったんじゃないか! 騙したな!」
「騙したって人聞きの悪い! エリックだってお義姉様みたいな地味女は嫌だって言っていたじゃない! 喜んで乗り換えたくせに!」
「生きる為だ! 政略結婚にせよ、爵位の有無は大事だろう!」
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「生活に爵位の関係もあるし、次男だからこそ婿養子として必要としていたのだがな……」
お父様の声にビクリと身を震わせた二人は、今まで大声で罵りあっていたのが嘘のように、静かになった。
「申し訳ありません! ティルトン伯爵!」
「あなた! 助けてよ! 私達はどうすれば良いの!?」
「お義父様! 私はお義姉様と違って社交界にも足しげく通っていたし、娘として十分役に立てるわ!」
厚顔無恥とは、この事か。
自分達が何をしたのか理解していないのか。していたとしても、自分の事しか考えられていないのか……。
私も何か言った方が良いのだろうか……言ったところで逆上させるだけな気もするけれど……。見ているだけ、聞いているだけで良いものかどうか悩んでいれば、王太子殿下が再度ギュッと私の腰を強く掴んだ。
「騒々しい!」
まさに、一喝。
そうとしか思えない、威圧を込めた力強い、存在感のある声。まさに条件反射とも言えるように貴族達は頭を垂れた為、私もそれに倣って頭を下げた。
――国王陛下。
顔を見た事もなければ、声を聞いた事もないけれど、存在感や皆の態度から察する事が出来る。
「楽にしてくれ」
国王陛下は一言、どうでも良さそうに放つと、騒動の中心に居た人物達へと睨みつけるかのように目を向けた。
「息子の婚約発表の場を平民がぶち壊しおって……っ!」
……意外に父親をしているのかもしれない。
国王陛下と言えば、家族の情など無関係にも思えたが、人の親という事か。
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