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 そういえばお父様は、この二人を追い出すとか言っていなかったか。
 唐突な王命での婚約から、淑女教育の見直し、そして婚約発表。怒涛のように過ぎていった毎日の中で、二人がどうなったのかなんて気にもとめていなかった事に気が付く。
 チラリと王太子殿下を横目で見れば、静かな怒りを携えているのが分かる。

「……その二人は招待した覚えがないのだけれど」

 王太子殿下の言葉に、二人はやはり追い出されていたのだろうと思った。でなければ、婚約者の義母と連れ子だ。少なくとも義母に関しては招待状を送っていてもおかしくない。

「何故です? マーガレットの義母と義妹ですよ」
「王太子の婚約者を名前で呼び捨てか?」
「申し訳ございません!」

 エリックの言葉に王太子殿下が睨みつけて厳しい言葉をかければ、エリックは頭を下げて謝罪をした。
 というか、二人はエリックに連れられてやってきたのか?シェリーに至ってはパートナーといった所だろうか。

「私を虐めるお義姉様が! 悪役令嬢と言われているお義姉様が次期王太子妃だなんて、皆さまが納得いきませんよ!」
「しかも私まで!離婚させて追い出させるなんて、あなた何を言ったの!?」
「……え? 花嫁修業でうちに来たのではないのか?」

 あ、うん。やはり追い出されたのか。そしてエリックの所に逃げ込んだのか……。図々しいというか、たくましいというか……平民でもやっていけるよ?と、思わず思ってしまった。それを言うなら私も十分たくましいのだと思うけれど。

「それに、家を出ていたなんて……マーガレットは、何があったか分からない傷物令嬢ではないですか。とんだ醜聞ですよ。それなら、まだシェリーの方がよろしいかと」
「そうですよ! お義姉様と違って、私は社交界にもよく出ていましたから!」

 ――なんて事を。

 エリックは二人が言った言葉の意味を脳が理解できないのか、ポカンと口を開けて呆然としている。王太子殿下に至っては静かな怒りが更に拍車かかっているようだ。
 だけれど、そんな雰囲気を理解しているのは高位貴族だけで、理解した人達は侮蔑の視線を投げかけている。理解していない下位貴族と思われる人達は頷いて、興味深そうに瞳を輝かせてこちらを見ているのだけれどね……。
 これが教育の差というものなのか。

「王族に名を連ねる事が出来るのは伯爵家以上だ。平民なんてもってのほかだ」
「え?」
「!」
「は!?」

 三者三様の反応。シェリーはポカンとして、義母は気が付いたように顔を真っ青に染め上げ、エリックは驚きの声を上げた。
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