【完結】婚約破棄された地味令嬢は猫として溺愛される

かずきりり

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 公爵家の後ろ盾で婚約させてやる。
 そんな甘言を受け、二人はリムド・ハーバー公爵令息の付き従った。そして、公爵令息から貰った腕輪をお揃いで身に着け公爵邸へ訪れ、私への恨みつらみを延々唱えていたと。帰る頃には青白い顔でやつれている。けれど、次の日からどこかえ消え、帰ってくる事はなくなったと。
 そんな報告を受け取った私達は、古い文献を片っ端から調べ上げた。

「行方不明になろうとも探さないとは……所詮侯爵家次男と伯爵家の居候か」
「居候?シェリーは愛されて育っておりますよ。私に比べれば。それより手を動かして下さい」

 師匠の言葉に首を傾げながらも、それを脳内に止めるどころか考える事すら放棄した。そんな時間すら惜しいのだ。
 二人はやつれていると報告を受けたけれど、私達だってそうだろう。時間は限られている以上、寝る時間すら勿体ない。食事だって、文献を調べながらパンを片手に頬張っているのだ。
 私は慣れたものだけれど、こんな行儀が悪い事を師匠が……と思ったが、流石師匠。平民に混じって魔物退治もしているし、そもそも私と行動を共にしていたのだ。何の問題もなく、ただ文献にくらいついている。

「これか!」

 師匠が見ていた文献を私ものぞく。
 そこには感情を魔法具へと乗せる。そんな道具が書かれていた。……呪いではない……。

「恨み……悪感情……」
「それを呪いと化すような魔法具を作り出した可能性だ」
「!」

 師匠の言葉に、私は自身がそんな魔法具を作るとしたら、を考える。悪い感情、負のエネルギー。それを対象の体内に止め、常に送られる。悪感情によって引き起こす状態異常。
 方程式を頭の中で描き続け、出た答えは……。

「可能かもしれない」
「ほぼ可能ではないか?」

 呪いという物を根本まで完全に理解できていない以上、似たような物が作り出せる可能性は、ほとんどある。

「あの二人が抱く憎悪は、これ幸いといったところか」
「……そこまで……」

 地味で愛されていない私と婚約を破棄し、愛され可愛らしい義妹と結ばれる。親の許可が得られないだけで、既に行方不明となって貴族令嬢として終わった私に、そこまで恨みを募らせるものなのだろうか?
 理解できないという風に首を傾げる私に、師匠は苦笑していた。けれど、まずは王太子殿下の事だ。

「二人を魔法具から離し、破壊すれば配給は絶たれますね」
「居場所は既に検討をつけている」

 頷き合い、すぐに出かける準備をした所で、ノックの音が響き、真っ青な顔をして慌てた様子で入って来たのは王太子殿下の側近だった。
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