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「さすがイル! 可愛いなぁ~!」
舞踏会当日。私は令嬢でもないのに、朝から侍女達の手で入念にお風呂へと入れられた。
ふわっふわになった毛は、少し香油を垂らしたからか良い匂いが香る。そして首には新しく購入したのだろう、可愛らしく豪華な首輪が飾られたのだ。
……猫はアクセサリーではない。
そんな事を思って入るが、いくら侍女に施されたと言っても、朝からの準備に私は疲労困憊状態だ。何も抵抗する事なく、ぐったりと王太子殿下の腕の中に居る。
(もういっそ寝たい……いや、駄目だ)
国中の貴族達が集まっているという事は、反王太子派も揃っていると言う事だ。流石に舞踏会の真っただ中に何かをしてくるとは思えないが、貴族達の顔と名前に疎い私としては、顔を見る事が出来る絶好の機会とも言える。
(名前だけは師匠に教えてもらっておいたしね……)
護衛するにあたり、師匠に反王太子派だと思われる人物の名前だけはしっかり教えてもらって、頭に入れてはある。王太子殿下の元へ挨拶に来る時、その顔を拝めるというわけだ。……まぁ、離れなければ、だけれど。
王太子殿下の名前が呼ばれると扉が開かれると、会場内からは騒めきが起こる。そんな事など気にせず、足を進める王太子殿下の腕で、むしろ私が恐縮する。
……視線が突き刺さっている事なんて、見なくても分かるくらい、人々の殿下だわ!という声が耳につくのだ。意外と猫を抱いている事に関しての言葉が聞こえないのは、予想外だけれど。
「殿下! 私とダンスを踊っていただけますか?」
「お久しぶりでございます! 是非とも私と……」
「いえいえ、私と」
階段を降り、会場へと足を踏み入れれば、令嬢達がこぞって集まってきては、王太子殿下に声をかける。
……いいのか、不躾に声をかけても。
なんて思いながらも、私は王太子殿下の腕で大人しくしている。気分はぬいぐるみだ。人が集まりすぎていて、何故か私が吐きそうな位に緊張してしまう。……怖いよー。
「申し訳ない、ご令嬢方。私はこの娘をエスコートしているので」
王太子殿下は、そう令嬢達に断りを入れると、更にギュッと私を抱きしめ、頭にキスを落とした。
キャーッ!という令嬢達の声や、少し後ずさるヒールの音、乾いた笑い。令嬢達の反応も様々だ。……まぁ、猫をエスコートとか意味が分からないしね。
そんな事を思いながらも、王太子殿下の腕に抱かれたまま呆れていると、私はもう二度と会いたくなかった二人を見つけた。
――国中の貴族が集まる。
そうだ。……忘れていた。
私が出ていなかった事がありえない事で……あの二人は、ここに居てもおかしくないのだ。
舞踏会当日。私は令嬢でもないのに、朝から侍女達の手で入念にお風呂へと入れられた。
ふわっふわになった毛は、少し香油を垂らしたからか良い匂いが香る。そして首には新しく購入したのだろう、可愛らしく豪華な首輪が飾られたのだ。
……猫はアクセサリーではない。
そんな事を思って入るが、いくら侍女に施されたと言っても、朝からの準備に私は疲労困憊状態だ。何も抵抗する事なく、ぐったりと王太子殿下の腕の中に居る。
(もういっそ寝たい……いや、駄目だ)
国中の貴族達が集まっているという事は、反王太子派も揃っていると言う事だ。流石に舞踏会の真っただ中に何かをしてくるとは思えないが、貴族達の顔と名前に疎い私としては、顔を見る事が出来る絶好の機会とも言える。
(名前だけは師匠に教えてもらっておいたしね……)
護衛するにあたり、師匠に反王太子派だと思われる人物の名前だけはしっかり教えてもらって、頭に入れてはある。王太子殿下の元へ挨拶に来る時、その顔を拝めるというわけだ。……まぁ、離れなければ、だけれど。
王太子殿下の名前が呼ばれると扉が開かれると、会場内からは騒めきが起こる。そんな事など気にせず、足を進める王太子殿下の腕で、むしろ私が恐縮する。
……視線が突き刺さっている事なんて、見なくても分かるくらい、人々の殿下だわ!という声が耳につくのだ。意外と猫を抱いている事に関しての言葉が聞こえないのは、予想外だけれど。
「殿下! 私とダンスを踊っていただけますか?」
「お久しぶりでございます! 是非とも私と……」
「いえいえ、私と」
階段を降り、会場へと足を踏み入れれば、令嬢達がこぞって集まってきては、王太子殿下に声をかける。
……いいのか、不躾に声をかけても。
なんて思いながらも、私は王太子殿下の腕で大人しくしている。気分はぬいぐるみだ。人が集まりすぎていて、何故か私が吐きそうな位に緊張してしまう。……怖いよー。
「申し訳ない、ご令嬢方。私はこの娘をエスコートしているので」
王太子殿下は、そう令嬢達に断りを入れると、更にギュッと私を抱きしめ、頭にキスを落とした。
キャーッ!という令嬢達の声や、少し後ずさるヒールの音、乾いた笑い。令嬢達の反応も様々だ。……まぁ、猫をエスコートとか意味が分からないしね。
そんな事を思いながらも、王太子殿下の腕に抱かれたまま呆れていると、私はもう二度と会いたくなかった二人を見つけた。
――国中の貴族が集まる。
そうだ。……忘れていた。
私が出ていなかった事がありえない事で……あの二人は、ここに居てもおかしくないのだ。
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