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「――っ」
木々の葉が、風ではない何かで音を発したのを聞き逃さず、私は耳を動かし、その原因となる物を探すように視線を窓の外へ向けた。
視界に入ったのは一羽の小鳥で、窓の隙間から部屋の中に入ってくる。他に気配はないか魔法を薄く気が付かれない程度に展開し、周囲を探索するけれど、人が居るだろう気配はない。
ホッと安堵の息を吐いて、私は王太子殿下の膝から下りて、窓際へ向かう。
鳥は透明な窓に気が付かず、全力でぶつかってしまう。特に室内だなんて、見える外の自然に向かって羽ばたいてしまうだろう。
だから、私は窓をもう少し大きく開いて、小鳥が飛び立てるようにして逃がした。
「おぉっ! イルは凄いな! 賢い!」
その様子を見ていただろう王太子殿下が、ガタッと椅子を鳴らして立ち上がり、カツカツと靴を鳴らしながら私の方へ近づいてきた。
「凄い! 凄いぞ~!!」
言って、私を抱きかかえると、そのまま頬ずりを始めた。
……ここは執務室における、毎日恒例の光景だ。あれからも変わりない?日々が続いている。
呆れかえったような顔をした従者と側近は、既に視線を反らして、見て見ぬふりをしているのは、もう毎度の事だからこそ諦めているのだろう。……そんな私も、抵抗すらせずに無の境地となっている。抵抗する事は諦めた。
「俺のイルは天才で優しいな~!」
私を抱きかかえたまま椅子へ戻れば、そのまま執務を再開する王太子殿下。
……一応、私は貴方の護衛なんですけどね、と思いながらも、甘んじて受け入れる日々だ。
結局、私は師匠が言った通り、猫可愛がりの日々を受けている。というか、もう猫に対して溺愛というより、猫の下僕ですよ。この王太子殿下。
毎日お風呂に入れて、入念なブラッシング。そして添い寝。挙句の果てには爪切りや食事の世話までも自ら行う。
人間と同じ食べ物でも良いと言われていたが、食べやすいようにと細かく刻むのは王太子殿下の仕事なのだ。……何かおかしくないですかね?
更に、城内のプライベートな所であれば、どこへ行くにも私を連れ回す。……猫って、アクセサリーでしたっけ?人権ならぬ猫権ってないんですか。
文句が言いたくても言えないし、抵抗したところで猫の力だ……護衛対象に魔法をぶっ放すわけにもいかないし。
「殿下~イルをお借りしますね~」
諦めの境地に入っていた私は、師匠の声が聞こえたと同時に、王太子殿下の膝から下りて、師匠に駆け寄る。
もう、師匠は救いの神だ!
「そんな不機嫌そうにしなくても……護衛だと言ったでしょう? 今は必要ないでしょうに」
「ちっ」
舌打ち!?
チラリと王太子殿下の方を見れば、不機嫌な事を隠す様子もなく、眉間に皺を寄せていた。
木々の葉が、風ではない何かで音を発したのを聞き逃さず、私は耳を動かし、その原因となる物を探すように視線を窓の外へ向けた。
視界に入ったのは一羽の小鳥で、窓の隙間から部屋の中に入ってくる。他に気配はないか魔法を薄く気が付かれない程度に展開し、周囲を探索するけれど、人が居るだろう気配はない。
ホッと安堵の息を吐いて、私は王太子殿下の膝から下りて、窓際へ向かう。
鳥は透明な窓に気が付かず、全力でぶつかってしまう。特に室内だなんて、見える外の自然に向かって羽ばたいてしまうだろう。
だから、私は窓をもう少し大きく開いて、小鳥が飛び立てるようにして逃がした。
「おぉっ! イルは凄いな! 賢い!」
その様子を見ていただろう王太子殿下が、ガタッと椅子を鳴らして立ち上がり、カツカツと靴を鳴らしながら私の方へ近づいてきた。
「凄い! 凄いぞ~!!」
言って、私を抱きかかえると、そのまま頬ずりを始めた。
……ここは執務室における、毎日恒例の光景だ。あれからも変わりない?日々が続いている。
呆れかえったような顔をした従者と側近は、既に視線を反らして、見て見ぬふりをしているのは、もう毎度の事だからこそ諦めているのだろう。……そんな私も、抵抗すらせずに無の境地となっている。抵抗する事は諦めた。
「俺のイルは天才で優しいな~!」
私を抱きかかえたまま椅子へ戻れば、そのまま執務を再開する王太子殿下。
……一応、私は貴方の護衛なんですけどね、と思いながらも、甘んじて受け入れる日々だ。
結局、私は師匠が言った通り、猫可愛がりの日々を受けている。というか、もう猫に対して溺愛というより、猫の下僕ですよ。この王太子殿下。
毎日お風呂に入れて、入念なブラッシング。そして添い寝。挙句の果てには爪切りや食事の世話までも自ら行う。
人間と同じ食べ物でも良いと言われていたが、食べやすいようにと細かく刻むのは王太子殿下の仕事なのだ。……何かおかしくないですかね?
更に、城内のプライベートな所であれば、どこへ行くにも私を連れ回す。……猫って、アクセサリーでしたっけ?人権ならぬ猫権ってないんですか。
文句が言いたくても言えないし、抵抗したところで猫の力だ……護衛対象に魔法をぶっ放すわけにもいかないし。
「殿下~イルをお借りしますね~」
諦めの境地に入っていた私は、師匠の声が聞こえたと同時に、王太子殿下の膝から下りて、師匠に駆け寄る。
もう、師匠は救いの神だ!
「そんな不機嫌そうにしなくても……護衛だと言ったでしょう? 今は必要ないでしょうに」
「ちっ」
舌打ち!?
チラリと王太子殿下の方を見れば、不機嫌な事を隠す様子もなく、眉間に皺を寄せていた。
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