【完結】婚約破棄された地味令嬢は猫として溺愛される

かずきりり

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03.

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 月に一度会っていても……幼い頃から知っていたとしても……エリックは私の変化など気が付かないし、私を全く見ても居なかった。
 夜会に呼ばれているのかどうかさえ知らない。でも、夜会に参加しない私を疑問に思う事もなければ、誘う事すらしなかったエリック。婚約者が社交界デビューしていない事にも気が付いていなかったのだろう。
 私の事になど全く興味がなかったと、今になってよく分かる。
 まぁ、こんな生活をしている私は人付き合いもマトモに出来ない。貴族同士で行われる腹の探り合いなど、苦手どころか無理な話だ。そう思えば鬱陶しい貴族社会から遠ざかっていたのは助かるのだけれど……そもそも、こんな生活をしていなければ、また違ったのだろう。

「そんな事を言っても意味ないけれどね」

 自嘲気味に笑いながら、私は手元にあった魔法具や魔法具を作る材料の全てを、空間魔法へ収納していく。

「もう……嫌だ」

 どうせ私は愛されてなんていないし、必要とされていない。私なんて居なくたって同じなのだ。この邸には、そもそも私の居場所はないし、貴族生活なんて私には無理だ。そんな事をしているより魔法具を作っている方が性に合う。
 それに婚約がなくなってしまえば、私がこの家に居る意味なんて皆無なのだ。私に残されていた唯一と言って良い、貴族の務めがなくなったのだから。

「出ていってやる……」

 私は私が作った魔法具や購入した物を全て空間魔法に収納して、決意した。
 こうやって小屋である部屋を眺めていても、伯爵家のお金で買ってもらったものなんてない。まぁ壊れたテーブルや藁、ゴミのように積まれた箱は、伯爵家の物ではあるだろうけれど。

 ――私って、一体なんだったんだろう。

 改めて自分の置かれた状況を眺めてみると、本当に何もない。
 なさすぎて、惨めだ。

「もう……疲れたなぁ……」

 危険が付きまとうとはいえ、魔物の討伐は楽だ。
 だけれど……人間は嫌いだ。表面と内面では全く違う。腹の内なんて分からないのだから。
 ……まぁ、こうやって存在を無視されている方がマシなのかもしれないけれど……。既に、自分が人間であるという事にも嫌気が刺し、気分が滅入るし疲れ果てた。
 人間で居れば、人間と関わらなくてはいけない。まぁ、確かに魔法具を売ったり、冒険者ギルドで魔物討伐をしたり、ご飯を買うのに関わる必要はあるが……本当に最小限にしたい。

 ――そうだ、猫にでもなろう。

 猫になって、日々を過ごそう。そうすれば人との関わりを最小限に出来るだろう。
 そう思って私は、自身に細かい魔法をかけ、身体を変化させる事にした。
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