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「ただいま~!すごい大量ですわ!」
「言葉」
「あら、いけない」
レティは数ヶ月ぶりに買い付けから戻ってきた。側に少し年上でしっかりした体躯の男性を連れて。
「お嬢様!これ素晴らしいですね!」
「もうお嬢様じゃないわよ~!」
「でも名前捨ててませんよね?」
「これ国二つ向こうで有名な布じゃないですか~!」
店番を頼んでいる女性が色んな商品を手に取って机の上に並べていく。これから仕入金額を考慮して売価を付けていくのだろう。それにしても結構色んな物を知っているのか、手に取りながら興奮して叫んでいる。
そして経理を任せている男性が帳簿片手に机の上に出された商品をより分けている。種類別かと思いきや、更にだいたいの値段別にもしているようだ。
確かに私は侯爵家の名前を捨ててはいないけれど……
「希少な宝石…の偽物?でも平民向けに良いですね!」
「そういえば、ラグローズ侯が戻ってきたら会いに来てほしいと週一回の頻度で手紙を送ってきてますよ」
「あ!これ有名な島国で取れる珊瑚と言われるものじゃないですか!?」
経理の男性がそんな事を伝えてくる…。
事務仕事までしてくれてるんだけど、お父様が余計な仕事を増やしているようで心苦しい…。
そして買い付けた商品に小躍りしそうな程に喜んでいるのを見ると、こちらの気持ちもだいぶ嬉しく感じる。
最悪で売れない商品なんて買い付けていたら旅費の無駄!仕入の無駄!
とりあえず久しぶりにお父様の顔を見て、無事に戻ってきた旨の報告へ行こうと思った。
あれから数ヶ月も立っているのだ。殿下もパティも大人しくなっているとは思いたい。
「分かった!今から突撃してみるね。テオ、ついてきて?」
「当たり前だろ」
そう言ってテオと呼ばれた青年はレティの肩に手を回し引き寄せ、扉へ向かうのを見た従業員二人は、驚きに目を見開き口を開ける。
二人は仕事の都合上、普段全く来れないレティをラグローズ侯爵令嬢だという事は知っていて、それでも平民同士の上司部下といった付き合いをしていたのだ。
そう、例え婚約破棄騒動があり、めんどくさいからと国外に買い付けを理由に出ていたとしても、れっきとした侯爵令嬢なのである。
二人が出て行った扉を見ながら、どちらからともなく呟いた。
「…テオって方…何者ですかね?」
「……婚約者が出来たとは…聞いていませんよね…」
これからラグローズ侯爵家で顔を合わせると考え、二人は祈った。
店がなくなりませんように、路頭に迷いませんように、穏便に済みますように、と。
「言葉」
「あら、いけない」
レティは数ヶ月ぶりに買い付けから戻ってきた。側に少し年上でしっかりした体躯の男性を連れて。
「お嬢様!これ素晴らしいですね!」
「もうお嬢様じゃないわよ~!」
「でも名前捨ててませんよね?」
「これ国二つ向こうで有名な布じゃないですか~!」
店番を頼んでいる女性が色んな商品を手に取って机の上に並べていく。これから仕入金額を考慮して売価を付けていくのだろう。それにしても結構色んな物を知っているのか、手に取りながら興奮して叫んでいる。
そして経理を任せている男性が帳簿片手に机の上に出された商品をより分けている。種類別かと思いきや、更にだいたいの値段別にもしているようだ。
確かに私は侯爵家の名前を捨ててはいないけれど……
「希少な宝石…の偽物?でも平民向けに良いですね!」
「そういえば、ラグローズ侯が戻ってきたら会いに来てほしいと週一回の頻度で手紙を送ってきてますよ」
「あ!これ有名な島国で取れる珊瑚と言われるものじゃないですか!?」
経理の男性がそんな事を伝えてくる…。
事務仕事までしてくれてるんだけど、お父様が余計な仕事を増やしているようで心苦しい…。
そして買い付けた商品に小躍りしそうな程に喜んでいるのを見ると、こちらの気持ちもだいぶ嬉しく感じる。
最悪で売れない商品なんて買い付けていたら旅費の無駄!仕入の無駄!
とりあえず久しぶりにお父様の顔を見て、無事に戻ってきた旨の報告へ行こうと思った。
あれから数ヶ月も立っているのだ。殿下もパティも大人しくなっているとは思いたい。
「分かった!今から突撃してみるね。テオ、ついてきて?」
「当たり前だろ」
そう言ってテオと呼ばれた青年はレティの肩に手を回し引き寄せ、扉へ向かうのを見た従業員二人は、驚きに目を見開き口を開ける。
二人は仕事の都合上、普段全く来れないレティをラグローズ侯爵令嬢だという事は知っていて、それでも平民同士の上司部下といった付き合いをしていたのだ。
そう、例え婚約破棄騒動があり、めんどくさいからと国外に買い付けを理由に出ていたとしても、れっきとした侯爵令嬢なのである。
二人が出て行った扉を見ながら、どちらからともなく呟いた。
「…テオって方…何者ですかね?」
「……婚約者が出来たとは…聞いていませんよね…」
これからラグローズ侯爵家で顔を合わせると考え、二人は祈った。
店がなくなりませんように、路頭に迷いませんように、穏便に済みますように、と。
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