【完結】浮気性王子は婚約破棄をし馬鹿な妹を選ぶ

かずきりり

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「なんだ…一体なんなんだ…」

レティが学園へ来なくなって三日。それはどうでも良い。煩い奴の顔を見る事もないというだけで、別に普段と変わる事はないからだ。
しかし、周囲が変わってしまっている事に戸惑いを隠せない。
今までは周りに色んな女がすぐ近寄ってきていたのに、今は一人も居ない。
いや、一人も居ないは語弊か。パティだけしか居ない。
確かにパティと婚約するとは言ったが、皆レティと婚約している時でも近くに居たではないか。

「殿下~!」

パティが駆け寄ってきて、俺に抱きついてくる。
こういう所が可愛く、嬉しいと思えてしまう。

「殿下~…お友達が私を無視するようになってしまったの…嫉妬かしら?」
「なんだと?」

嫉妬?
レティには何もしてこなかった令嬢達がパティの事は無視するとは、どういう事だ?
レティに婚約破棄を告げ、パティと婚約すると大勢の前で宣言した翌日、レティは屋敷から消えたとパティから聞いた。
更には学園に行くと周囲に人が寄ってこなくなった。
遠巻きに見られる事はあるが、こちらが声をかける前に気がつかなかったかのように去られるのだ。

「殿下…さみしいです…」

潤んだ瞳で上目遣いに見てくるパティに、喉が鳴る。
そのまま慰めるという意味で、王族専用のサロンに入り人払いをした。
自身の側近すら今は一人も側におらず、護衛も三人から一人に減っている事にロラン殿下は気がついていないのだろう。
女の数だけしか数えていない。
そして、人払いをしたサロンの前から、残っていた最後の一人である護衛も、深いため息を付きながら去っていった…。
国王陛下の元へ報告と共に仕事を辞する覚悟で。



「久しいな、ロラン」
「陛下、ご機嫌麗しゅう」

レティが去って一週間。
陛下である父上に謁見する事がやっと可能となった。父上の隣には勿論母上も王妃として座っている。
新たな婚約者であるレティを紹介するのだ。
親子と言えど、立場の問題から気軽に顔を合わせる事すら出来ない。

「で?隣におる令嬢は?」
「はい!私の新たな婚約者のパトリシア=ラグローズです」
「初めまして、陛……」
「発言を認めておらんぞ」

両陛下の冷たい視線に気が付く事なく、嬉しそうに答えたロランだが、その声色が怒っている時と似ている事に気が付くと、顔を真っ青にした。
パティが発言を許されていないのに挨拶しようとした事だと思い、慌てて頭を下げる。

「申し訳ございません、陛下!パトリシア嬢は…」
「お前は王族である事が気に入らんようだな」
「へ?」

謝罪しようとした所へ、思わぬ父上の言葉がかけられる。
王族である事が気に入らない?そんな訳がない。
意味がわからないという気持ちが表情に出ていたのだろうか、陛下が更に言葉を紡いだ。

「お前は本当に阿呆なのだな」
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