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33.真実の愛の真実
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――聖女と呼ばれた奇跡の力を扱う女性の話。
――聖女は平民出身の女性で、聖女に求婚する王太子殿下。
――聖女は貴族の養子に入るが、貴族の生活に馴染めず、王太子の件で貴族令嬢に嫉妬を受けて嫌がらせをされる。
――王太子は必死に聖女を守るが、それにより貴族の中でどんどん厳しい立ち位置となってしまう聖女。
――逃げる聖女に追う王太子。
「これ……真実の愛を元にした舞台の話じゃないか?」
「あぁ……でも何か少しだけ違う……?」
「……ねぇ……舞台で……元にした話って言ってなかった……?」
貴族達が小声で話し出すも、しっかり耳は吟遊詩人へと向けているようだ。
舞台が娯楽の為に作られたものとしたら、吟遊詩人は話を未来へ伝えていく存在だ。……だから、吟遊詩人の話に嘘偽りはない。
それに気が付いただろう人達は、現実逃避の心を表すかのよう少しづつ後ずさっている。
――王太子は夜会という大勢の目がある場所で、聖女へ求婚する。
――本来ならば断われない。
――しかし、聖女はまだ貴族教育の浅い、平民に近い存在だったのだ。
――聖女は平民の思想に近く、お互いを思い合う恋愛結婚しか知らない。
――だからこそ、聖女はこう答えた。
――「気持ち悪い」と。
「……」
「……」
「……」
「……」
一瞬にして会場が静まり返った。それでもまだ吟遊詩人は続く。
聖女は幼馴染と結婚の約束をしていて、将来一緒になるつもりだったのだが、貴族なのだから政略結婚をしろと、結局無理やり王太子に娶られる。
地位と権力、貴族という柵に耐えられなくなった聖女は、初夜を迎える前に自死してしまう。
「これが本来あった物語です。ある意味、引き裂かれた真実の愛という悲恋かもしれませんね。これを勘違いされましても……ねぇ?」
私の言葉に、誰も反応を返す事がない。ただただ口を開けて、頭の整理をしているといったところだろう。自分達の愚かさをしっかり頭に残して欲しい。
でもこれが本当にあった出来事で、それを改変させ大衆向けにしたのが舞台なのだ。
女ならば地位や権力がある男の元へ嫁げる成り上がる話はうけるだろうし、男だって身分関係なく好きな女を手に入れる事が出来る。
……この聖女にとって王太子という人は全く魅力のない人だったというだけで。
「これを美談に仕上げた舞台の人達がすげぇわ」
「着眼点の問題では?自分ならこうするのに、とか」
ガルムは褒めるような言葉まで出しているのだが、それは当事者ではないからだろう。確かに、平民の女性視点であれば、そんな好機逃してたまるか!という話にはなるだろうし、そうなりたいと願うだろう。
「さて……」
情報量が多いのか、なかなか処理しきれないという無能っぷりを発揮している陛下へと視線を向ければ、私の視線に気が付いた陛下はビクリと身体を竦めさせた。
「ロドル王国はしばらく帝国の管轄になりますわ。使えない無能貴族が多すぎますもの。国王は当然の事ながら交代ですね」
私の言葉に肩を落とす陛下と王妃。それに比べ、戦争にならなくて安心したと言わんばかり安堵の息をつく王弟。……本当に真逆だ。
「……王弟殿下の王子どちらかが問題なければ王太子で良いと思っていますので。それまでは帝国預かりですわよ」
驚き目を見開く王弟。帝国も、管轄を広げたいわけではない。でも仕方ないのだ……王弟の息子は、まだ五歳と三歳なのだから……。
言う事は言ったと、私は後の事は知らないと言わんばかりに、ガルムと共にその場から撤退した。
――聖女は平民出身の女性で、聖女に求婚する王太子殿下。
――聖女は貴族の養子に入るが、貴族の生活に馴染めず、王太子の件で貴族令嬢に嫉妬を受けて嫌がらせをされる。
――王太子は必死に聖女を守るが、それにより貴族の中でどんどん厳しい立ち位置となってしまう聖女。
――逃げる聖女に追う王太子。
「これ……真実の愛を元にした舞台の話じゃないか?」
「あぁ……でも何か少しだけ違う……?」
「……ねぇ……舞台で……元にした話って言ってなかった……?」
貴族達が小声で話し出すも、しっかり耳は吟遊詩人へと向けているようだ。
舞台が娯楽の為に作られたものとしたら、吟遊詩人は話を未来へ伝えていく存在だ。……だから、吟遊詩人の話に嘘偽りはない。
それに気が付いただろう人達は、現実逃避の心を表すかのよう少しづつ後ずさっている。
――王太子は夜会という大勢の目がある場所で、聖女へ求婚する。
――本来ならば断われない。
――しかし、聖女はまだ貴族教育の浅い、平民に近い存在だったのだ。
――聖女は平民の思想に近く、お互いを思い合う恋愛結婚しか知らない。
――だからこそ、聖女はこう答えた。
――「気持ち悪い」と。
「……」
「……」
「……」
「……」
一瞬にして会場が静まり返った。それでもまだ吟遊詩人は続く。
聖女は幼馴染と結婚の約束をしていて、将来一緒になるつもりだったのだが、貴族なのだから政略結婚をしろと、結局無理やり王太子に娶られる。
地位と権力、貴族という柵に耐えられなくなった聖女は、初夜を迎える前に自死してしまう。
「これが本来あった物語です。ある意味、引き裂かれた真実の愛という悲恋かもしれませんね。これを勘違いされましても……ねぇ?」
私の言葉に、誰も反応を返す事がない。ただただ口を開けて、頭の整理をしているといったところだろう。自分達の愚かさをしっかり頭に残して欲しい。
でもこれが本当にあった出来事で、それを改変させ大衆向けにしたのが舞台なのだ。
女ならば地位や権力がある男の元へ嫁げる成り上がる話はうけるだろうし、男だって身分関係なく好きな女を手に入れる事が出来る。
……この聖女にとって王太子という人は全く魅力のない人だったというだけで。
「これを美談に仕上げた舞台の人達がすげぇわ」
「着眼点の問題では?自分ならこうするのに、とか」
ガルムは褒めるような言葉まで出しているのだが、それは当事者ではないからだろう。確かに、平民の女性視点であれば、そんな好機逃してたまるか!という話にはなるだろうし、そうなりたいと願うだろう。
「さて……」
情報量が多いのか、なかなか処理しきれないという無能っぷりを発揮している陛下へと視線を向ければ、私の視線に気が付いた陛下はビクリと身体を竦めさせた。
「ロドル王国はしばらく帝国の管轄になりますわ。使えない無能貴族が多すぎますもの。国王は当然の事ながら交代ですね」
私の言葉に肩を落とす陛下と王妃。それに比べ、戦争にならなくて安心したと言わんばかり安堵の息をつく王弟。……本当に真逆だ。
「……王弟殿下の王子どちらかが問題なければ王太子で良いと思っていますので。それまでは帝国預かりですわよ」
驚き目を見開く王弟。帝国も、管轄を広げたいわけではない。でも仕方ないのだ……王弟の息子は、まだ五歳と三歳なのだから……。
言う事は言ったと、私は後の事は知らないと言わんばかりに、ガルムと共にその場から撤退した。
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