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31.理解したようですね
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「そして謀反……との事ですが」
私の言葉にピクリといち早く反応したのは王弟だ。帝国法もしっかり頭へと入っており、何よりも国の事を考えているのだろう。……馬鹿達と違って、広い視野で。
「帝国皇女たる私に対して、婚約者としての扱いが酷すぎて、皇太子である兄が戦争の準備をしていたくらいです。そうなるまでに婚約破棄をしていただけて良かったですわ!あとは蔑ろにした不敬くらいですので、陛下と王妃、それに王太子の廃位……でよろしいかと」
満面の笑みで告げれば、帝国法を思い出したのか馬鹿な貴族達は真っ青な顔をしている。出世等を見越して自分を売っておきたいならば王族で間違いはないのだが、私に対しての不敬は咎めねばならなかった。廃位となれば、今まで売り込んだ自分なんて時間と労力の無駄なのだ。
……そういうのが嫌なのだけれど。
効率よく動き、無駄を省くために、盤面をしっかり見て状況を考えられない貴族の多い事……使えないわね。
「あ……」
「嘘……」
王太子と伯爵令嬢は真っ青な顔をして膝から崩れ落ちた。
真実の愛なのであれば別に廃位などどうでも良くないかしら。私との婚約がなくなれば一緒に居られるし……しいて言うならば全うな方法で婚約撤回を申し出て臣下に下れば良かっただけ。
あれもこれもと求めるのは欲張りすぎるわよ。強欲な人間が愛を語っても、真実味がないと思うのだけれど。
「声に出ている」
「あら、わざとだけれど」
ジト目でこちらを見るガルムは呆れ果てているだろう。そんな事は関係ないとばかりに私はコロコロと笑う。
私の声を聞いて、私の態度を見ている王太子は呆然としている。あれだけ言われてしまえば、助けを乞う事だって出来ないだろう。早く王太子の身分を捨てて帝国へ申し出ていれば良かっただけなのだから。
……相手が男爵令嬢とかであれば、身分が低すぎて色々問題になるところだったろうけれど。
そもそも帝国法を忘れる方が悪いのだ。属国に下っているのだから、それなりに帝国で法律が作られている事も知らないとは、属国である自覚がないと言う事なのか。
だからこそ、叔母は帝国法で丸投げをしたのだ。次の国王、王妃をこちらで決めろと。……国の内情を知っている人達が人選して、皇帝は誰が治めているのか知る為という意味もあったのだけれど……。むしろそちらの意味が強い。叔母の場合は逆手に取ったようなものだ。
「皇女殿下…………」
「お許し下さい」
縋るような目でこちらを見る国王と王妃は、椅子の前で膝をつき、私に向かって頭を垂れた。
……今更?
侮蔑の眼差しを投げ、扇で口元を隠す。言ってる事が理解できない……というか、したくない。あれだけ蔑ろに扱って、人を冷酷女と罵っておいて許しを乞うとは?
「私、虐めておりませんが?ねぇ、そこの令嬢。あなた元王太子と恋人だった令嬢と仲良かったわよね?」
冷酷女呼びも撤回してもらっておこうかしら、別に言われていても問題ないけれど、どうせならついでだと思い、伯爵令嬢といつも一緒に居た令嬢へと視線を向けた。
ヒッと小さく悲鳴が漏れ出たが、そんな事は構わず続けた。
「私……虐めの噂が酷くなった時にインクをかけたり噴水へ落としたり、階段から突き落としたりしましたけど……その前には何もしていないのですが、本当に私が虐めていたのですか?」
私の言葉にピクリといち早く反応したのは王弟だ。帝国法もしっかり頭へと入っており、何よりも国の事を考えているのだろう。……馬鹿達と違って、広い視野で。
「帝国皇女たる私に対して、婚約者としての扱いが酷すぎて、皇太子である兄が戦争の準備をしていたくらいです。そうなるまでに婚約破棄をしていただけて良かったですわ!あとは蔑ろにした不敬くらいですので、陛下と王妃、それに王太子の廃位……でよろしいかと」
満面の笑みで告げれば、帝国法を思い出したのか馬鹿な貴族達は真っ青な顔をしている。出世等を見越して自分を売っておきたいならば王族で間違いはないのだが、私に対しての不敬は咎めねばならなかった。廃位となれば、今まで売り込んだ自分なんて時間と労力の無駄なのだ。
……そういうのが嫌なのだけれど。
効率よく動き、無駄を省くために、盤面をしっかり見て状況を考えられない貴族の多い事……使えないわね。
「あ……」
「嘘……」
王太子と伯爵令嬢は真っ青な顔をして膝から崩れ落ちた。
真実の愛なのであれば別に廃位などどうでも良くないかしら。私との婚約がなくなれば一緒に居られるし……しいて言うならば全うな方法で婚約撤回を申し出て臣下に下れば良かっただけ。
あれもこれもと求めるのは欲張りすぎるわよ。強欲な人間が愛を語っても、真実味がないと思うのだけれど。
「声に出ている」
「あら、わざとだけれど」
ジト目でこちらを見るガルムは呆れ果てているだろう。そんな事は関係ないとばかりに私はコロコロと笑う。
私の声を聞いて、私の態度を見ている王太子は呆然としている。あれだけ言われてしまえば、助けを乞う事だって出来ないだろう。早く王太子の身分を捨てて帝国へ申し出ていれば良かっただけなのだから。
……相手が男爵令嬢とかであれば、身分が低すぎて色々問題になるところだったろうけれど。
そもそも帝国法を忘れる方が悪いのだ。属国に下っているのだから、それなりに帝国で法律が作られている事も知らないとは、属国である自覚がないと言う事なのか。
だからこそ、叔母は帝国法で丸投げをしたのだ。次の国王、王妃をこちらで決めろと。……国の内情を知っている人達が人選して、皇帝は誰が治めているのか知る為という意味もあったのだけれど……。むしろそちらの意味が強い。叔母の場合は逆手に取ったようなものだ。
「皇女殿下…………」
「お許し下さい」
縋るような目でこちらを見る国王と王妃は、椅子の前で膝をつき、私に向かって頭を垂れた。
……今更?
侮蔑の眼差しを投げ、扇で口元を隠す。言ってる事が理解できない……というか、したくない。あれだけ蔑ろに扱って、人を冷酷女と罵っておいて許しを乞うとは?
「私、虐めておりませんが?ねぇ、そこの令嬢。あなた元王太子と恋人だった令嬢と仲良かったわよね?」
冷酷女呼びも撤回してもらっておこうかしら、別に言われていても問題ないけれど、どうせならついでだと思い、伯爵令嬢といつも一緒に居た令嬢へと視線を向けた。
ヒッと小さく悲鳴が漏れ出たが、そんな事は構わず続けた。
「私……虐めの噂が酷くなった時にインクをかけたり噴水へ落としたり、階段から突き落としたりしましたけど……その前には何もしていないのですが、本当に私が虐めていたのですか?」
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