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30.帝国法はご存じですよね

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「国王陛下!王妃殿下!こんな冷酷な女が国母になるのは、国の為になりません!」
「そう……ね。虐めをする冷酷な皇女よりは……」

 陛下達へと問いかける王太子に、陛下達へ期待の眼差しをかける貴族達。
 王妃は、王太子の言葉に頷いてしまい、それに焦った1人の男性が陛下達の元へ駆けよる。……駆け寄ったとしても、吐いた言葉はなくならないけれど。

「……王弟殿下か」
「あら、ならば期待できそうね」

 声まではこちらに聞こえないけれど、王弟は必死に二人へ何かを訴えている事だけは分かる。だけれど、それを拒否するかのように首を振る陛下が見えた。

「……認める。冷酷な皇女に国を任せられない」

 うぉおおおおおおお!!!!!!!

 陛下の決定で、会場に割れんばかりの歓声が響いた。
 陛下の横では、この世の終わりかと言う表情をしている王弟が膝をつき崩れ落ちた。現状を理解しているだけに、王弟にとっては絶望しかないだろう。
 周囲は歓声を上げつつも、皇女をどうするんだ?という疑問が浮かんだのだろう。視線がこちらに集まってくる。
 素早く出ていけと言いたいけれど言えないといった所なのかと思ったが、これからが楽しいのだ。その為に準備をしていたのだから。
 私は毅然とした態度で扇を閉じ、更に一歩前に踏み出せば……。

「謀反でも起こす気か!」

 王弟の悲痛な叫び声に、会場が一瞬静まり返るが、ほとんどの者達は何を言っているのだという目を王弟へ向ける。現状を理解している貴族は、その場で大きく頷きながら私の方へと縋る視線を向けているけれど……。

「冷酷な者より、真実の愛で結ばれているアメリアの方が王妃に向いているという事の何が謀反だと言うのだ」

 王太子の声に頷く大多数の貴族達。王弟は項垂れ、その瞳は私の方へ向けられている。声にならない声で口が動いている。……民は助けてくれ。そんな所だろうか。
 この国王に、この王弟。属国の実情を理解していなかった帝国にも非はあるのだろう。

「まぁ……王妃ですか……無理ですね」
「お前は!まだ未練でもあるのか!」

 既に空気と化す事に必死となっているガルムを横目に、私は微笑んで周囲にも聞こえる声で言う。

「帝国の許可がありませんので。……許可を出す事もないでしょう」
「……はぁ!?」

 キッパリ、そしてハッキリと伝えるも、王太子他大多数の貴族は頭に疑問符を浮かべるだけだ。
 きちんと属国である事と、その法を理解している者達は深く頷いていると共に頭を抑えている。

「お忘れですか?帝国法により、属国の立太子や王太子妃に関しては帝国へ届けて許可がないといけないんですよ?更に言うなれば、国王や王妃に関しても……です」

 私の言葉に、王太子は陛下や王妃へと視線を向ける。陛下や王妃は忘れていたのか、顔を真っ青にして呆然としている事に、私は呆れてしまった。本当にわかりやすい人達……と。

「ちなみに、今流行りの舞台に乗っ取って真実の愛を見つけた他国の王太子ですが、自ら臣下へ下った方もいらっしゃいましたよ?流石に帝国法を忘れてはいなかった賢く聡い方でした。……真実の愛と言うのであれば、身分など関係ありませんよね」

 ここまで言えば多少なりとも理解出来たのか、それとも思い出したのか、青ざめていく国王と王妃。その表情で本当だと悟った貴族達はただ沈黙を守り、視線を向けていた王太子と伯爵令嬢も顔面蒼白になり、身体を震わせていった。
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