26 / 35
26.更に追い込む
しおりを挟む
「突き飛ばすのが虐めなのでしょう?でも、突き飛ばすだけなんて、生半可ではなくて?」
冷たい帝国人らしく言い放ってみる。
突き落とすだけでは物足りなかった?とワザとらしくベルに訊ねてみれば、ベルも生ぬるいですね、とノリノリで返してきた。
こんな冷たい帝国人とは、婚約破棄しなさい。むしろ、婚約破棄しろと周囲から声は上がらないのかしら。
そう考えながら周囲を一瞥してみると、私と視線を合わせたくないのか、皆視線を下げた。
呆れつつ王太子と伯爵令嬢の二人に視線をやると、震えるだけの王太子とは裏腹に、伯爵令嬢の顔色は青を超えて真っ白になった。
「ごめんなさい!!!!!」
「アメリア!?」
伯爵令嬢はいきなり声を上げて謝罪したかと思えば、猛スピードで駆け出して行った。一瞬呆然としていた王太子だが、我に返るとすぐさま伯爵令嬢の後を追いかけて行く。
いきなりの敵前逃亡に呆れたくもなるし、婚約破棄を言ってもらえなかった悔しさもあるけれど……逃げるのは分かる。
だって、私が虐めていない事も、突き飛ばしていない事も、伯爵令嬢自身が一番よく理解しているのだから。それでも、私は目標の為に手を緩める事はない。
それに、真実の愛を邪魔する私を望んだのは、伯爵令嬢だけではないだろうから。
翌日から伯爵令嬢が学園へ来なくなった。それを知った王太子は毎日のように伯爵家へ行っているようだが、会えていないという噂が聞こえて来た。
周りの人達も、私が近くによるだけで逃げ出すようになった。……同じ教室の人は何とか息を殺して耐えているようだけれど。まぁ、少し怯えられているかな位で、私の方は全ていつも通り。
そして新しい作戦を実行へと移す為、報告を兼ねて中庭へと向かう。
「……最悪、打ちどころが悪かったら死ぬぞ?」
「あ、そうね。そういう事もあるわね」
ガルムだけは話を聞いた所で、いつも通り私と変わらない対応をしてくれた。どうせあれだけ不敬を働いていたら処刑でもおかしくないけれど、自分の手で下すのとは、また訳が違うだろ、と声を荒げて言われた。
その言葉に、ベルとジェンも何か気が付いたよう、目に見えて落ち込んでしまった。私を焚きつけたり、止められなかった事を悔やんでいるのだろう。確かに私も考えが甘かった……けれど、悪いと思ってはいない。反省もしていないし後悔もしていない。
そんな私の考えを見抜いているのか、怒るのも無駄だとガルムはため息をついた。
「じゃあ、私はしばらく学園へ来ないから」
「あぁ、ドレスの件だけ、また商会の方へ来てくれ。話は通してある」
完全予約制と言いつつ、何だかんだ書類を手伝っていたりもした為か、来たら書類を手伝ってもらえると思っているのか。どうせいつでも誰か居る為、声かけてくれ状態になっている。
そして、私はしばらく学園へ来ない……だって、このまま伯爵令嬢を逃がしておく気はないのだから。学園へ来なければ問題ないと思ってもらっては困る。卒業パーティはもうすぐなのだから、何としてでも婚約破棄をしてもらわなければ、私の悠々自適辺境スローライフ生活がなくなってしまう。
「さて。王妃は準備をしたのかしら」
ガルムへ報告を兼ねた話も終わった事だし、私は王宮へ戻る。
私の中で、王妃も頭悪い認定だからこそ、きっと何も考えず私の要求を呑んでいるだろう事を想定しながら……。
「他の事も影から手配しております」
ベルが悪い笑みで言う。持つべきものは有能な部下だ。
冷たい帝国人らしく言い放ってみる。
突き落とすだけでは物足りなかった?とワザとらしくベルに訊ねてみれば、ベルも生ぬるいですね、とノリノリで返してきた。
こんな冷たい帝国人とは、婚約破棄しなさい。むしろ、婚約破棄しろと周囲から声は上がらないのかしら。
そう考えながら周囲を一瞥してみると、私と視線を合わせたくないのか、皆視線を下げた。
呆れつつ王太子と伯爵令嬢の二人に視線をやると、震えるだけの王太子とは裏腹に、伯爵令嬢の顔色は青を超えて真っ白になった。
「ごめんなさい!!!!!」
「アメリア!?」
伯爵令嬢はいきなり声を上げて謝罪したかと思えば、猛スピードで駆け出して行った。一瞬呆然としていた王太子だが、我に返るとすぐさま伯爵令嬢の後を追いかけて行く。
いきなりの敵前逃亡に呆れたくもなるし、婚約破棄を言ってもらえなかった悔しさもあるけれど……逃げるのは分かる。
だって、私が虐めていない事も、突き飛ばしていない事も、伯爵令嬢自身が一番よく理解しているのだから。それでも、私は目標の為に手を緩める事はない。
それに、真実の愛を邪魔する私を望んだのは、伯爵令嬢だけではないだろうから。
翌日から伯爵令嬢が学園へ来なくなった。それを知った王太子は毎日のように伯爵家へ行っているようだが、会えていないという噂が聞こえて来た。
周りの人達も、私が近くによるだけで逃げ出すようになった。……同じ教室の人は何とか息を殺して耐えているようだけれど。まぁ、少し怯えられているかな位で、私の方は全ていつも通り。
そして新しい作戦を実行へと移す為、報告を兼ねて中庭へと向かう。
「……最悪、打ちどころが悪かったら死ぬぞ?」
「あ、そうね。そういう事もあるわね」
ガルムだけは話を聞いた所で、いつも通り私と変わらない対応をしてくれた。どうせあれだけ不敬を働いていたら処刑でもおかしくないけれど、自分の手で下すのとは、また訳が違うだろ、と声を荒げて言われた。
その言葉に、ベルとジェンも何か気が付いたよう、目に見えて落ち込んでしまった。私を焚きつけたり、止められなかった事を悔やんでいるのだろう。確かに私も考えが甘かった……けれど、悪いと思ってはいない。反省もしていないし後悔もしていない。
そんな私の考えを見抜いているのか、怒るのも無駄だとガルムはため息をついた。
「じゃあ、私はしばらく学園へ来ないから」
「あぁ、ドレスの件だけ、また商会の方へ来てくれ。話は通してある」
完全予約制と言いつつ、何だかんだ書類を手伝っていたりもした為か、来たら書類を手伝ってもらえると思っているのか。どうせいつでも誰か居る為、声かけてくれ状態になっている。
そして、私はしばらく学園へ来ない……だって、このまま伯爵令嬢を逃がしておく気はないのだから。学園へ来なければ問題ないと思ってもらっては困る。卒業パーティはもうすぐなのだから、何としてでも婚約破棄をしてもらわなければ、私の悠々自適辺境スローライフ生活がなくなってしまう。
「さて。王妃は準備をしたのかしら」
ガルムへ報告を兼ねた話も終わった事だし、私は王宮へ戻る。
私の中で、王妃も頭悪い認定だからこそ、きっと何も考えず私の要求を呑んでいるだろう事を想定しながら……。
「他の事も影から手配しております」
ベルが悪い笑みで言う。持つべきものは有能な部下だ。
61
お気に入りに追加
1,874
あなたにおすすめの小説
だってそういうことでしょう?
杜野秋人
恋愛
「そなたがこれほど性根の卑しい女だとは思わなかった!今日この場をもってそなたとの婚約を破棄する!」
夜会の会場に現れた婚約者様の言葉に驚き固まるわたくし。
しかも彼の隣には妹が。
「私はそなたとの婚約を破棄し、新たに彼女と婚約を結ぶ!」
まあ!では、そういうことなのですね!
◆思いつきでサラッと書きました。
一発ネタです。
後悔はしていません。
◆小説家になろう、カクヨムでも公開しています。あちらは短編で一気読みできます。
甘やかされすぎた妹には興味ないそうです
もるだ
恋愛
義理の妹スザンネは甘やかされて育ったせいで自分の思い通りにするためなら手段を選ばない。スザンネの婚約者を招いた食事会で、アーリアが大事にしている形見のネックレスをつけているスザンネを見つけた。我慢ならなくて問い詰めるもスザンネは知らない振りをするだけ。だが、婚約者は何か知っているようで──。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
婚約解消は君の方から
みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。
しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。
私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、
嫌がらせをやめるよう呼び出したのに……
どうしてこうなったんだろう?
2020.2.17より、カレンの話を始めました。
小説家になろうさんにも掲載しています。
完結 冗談で済ますつもりでしょうが、そうはいきません。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の幼馴染はいつもわがまま放題。それを放置する。
結婚式でもやらかして私の挙式はメチャクチャに
「ほんの冗談さ」と王子は軽くあしらうが、そこに一人の男性が現れて……
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる