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15.滑稽な貴族達
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あれから数日経つも、王太子殿下に至っては、未だに私へ挨拶しに来る事もなく、私も王太子殿下を訊ねる事などしない。
相変わらず周囲から遠巻きにされ、噂話の種にまでされているけれど、私が何も言わないのを良い事に更に周囲は調子づいていく。
「本当に王太子殿下とミルム嬢はお似合いね」
「真実の愛で結ばれた二人……素晴らしいわ!」
「私も、そんなお相手と出会いたい」
一度目の前で王太子殿下がミルム伯爵令嬢と腕を組み、仲睦まじい様子で歩いている所に出くわせた事がある。王太子殿下とミルム伯爵令嬢は一目見て私が帝国皇女だと気が付いたのか、焦ったような表情をしていたが、私としては素知らぬ顔で素通りした。
わざわざ私から声をかけるのもおかしい話だ。
だから知らないものとして通り過ぎたのだが、それを周囲は自分の都合良い解釈で受け取ったのだ。
「本当、ここまで駄目だとは思わなかったわ」
いつもの中庭で、のんびり昼食を取る。
気にしていないし、どうでも良いけれど、蔑ろにされる自分を受け入れるつもりもないし、気分の良いものではない。
「大変ですね」
「あら、ガラム。どうしたの?」
ひょっこりと現れたガラムに、座るよう促すと、ガラムは素直に椅子へ座った。私に近寄り話かけるのは、今もまだガラムだけだ。
見方を変えれば、変に権力へ擦り寄って来る人物が居ないという事になるので、それはそれで助かってはいる。
「変な噂を聞きまして、一応話しておいた方が良いと思い」
「変な噂?」
真実の愛を邪魔する婚約者。帝国の権力で二人の仲を引き裂く悪女。
……それ以外に、何かあったかしら?と思わず斜め上の方向を見て考える。
「ミルム伯爵令嬢が皇女様から虐めを受けていると」
「あら、私ったらどんな虐めをしているの?」
ベルが差し出した紅茶を飲んで世間話のように切り出したガルムに、私も他人事のようにクスクスと笑いながら返す。
「私物が隠されたり、ノートが破られていたりしていると」
「あら、可愛らしい虐めね」
正直、貴族同士であれば虐めにも入らない。心に傷がつくかもしれないが、貴族同士やりあうのであれば、もっと酷いのだ。醜聞どころか、家すらも巻き込み、負ければ家が傾く程に。
ならば命のかかっていない虐めは、まだ軽度で、買えば済むし、最悪逃げれば良い。命は失えば終わりなのだから。
「こんなくだらない事を皇女様がしている隙もないし、虐めにすらならないだろ。考えたら分かるものを」
ガラムは、きちんと物事を俯瞰して見ていると思う。
私は皆に注目されていて、遠巻きにされている。唯一皆が離れる時間と言えば、今の昼休みくらいだ。それ以外でそんな事をしていれば誰かの目に触れるというもの。
それでもその噂が立つという事は、そもそもが悪意を持って噂をまかれているという事にもなるが、していない証明も早いのだ。
考えるまでもなく分かる。それをしないのは、考える気もないのか、考えるという事すらしないのか。
「皇女様には双子の分身でもいるのかしら?」
「手下にやらせているという噂もある」
「誰も周りに居ないのに?」
ガラムは何だこの国の貴族達は、と頭を抱えながら私に情報を話してくれているが、私はその話を面白がって聞いた。
爵位を貰ったとは言え、元平民だったガラムに理解できる事が、生まれてからずっと教育を受けてきた貴族が出来ていないという今の現状があまりに滑稽で面白過ぎた。
相変わらず周囲から遠巻きにされ、噂話の種にまでされているけれど、私が何も言わないのを良い事に更に周囲は調子づいていく。
「本当に王太子殿下とミルム嬢はお似合いね」
「真実の愛で結ばれた二人……素晴らしいわ!」
「私も、そんなお相手と出会いたい」
一度目の前で王太子殿下がミルム伯爵令嬢と腕を組み、仲睦まじい様子で歩いている所に出くわせた事がある。王太子殿下とミルム伯爵令嬢は一目見て私が帝国皇女だと気が付いたのか、焦ったような表情をしていたが、私としては素知らぬ顔で素通りした。
わざわざ私から声をかけるのもおかしい話だ。
だから知らないものとして通り過ぎたのだが、それを周囲は自分の都合良い解釈で受け取ったのだ。
「本当、ここまで駄目だとは思わなかったわ」
いつもの中庭で、のんびり昼食を取る。
気にしていないし、どうでも良いけれど、蔑ろにされる自分を受け入れるつもりもないし、気分の良いものではない。
「大変ですね」
「あら、ガラム。どうしたの?」
ひょっこりと現れたガラムに、座るよう促すと、ガラムは素直に椅子へ座った。私に近寄り話かけるのは、今もまだガラムだけだ。
見方を変えれば、変に権力へ擦り寄って来る人物が居ないという事になるので、それはそれで助かってはいる。
「変な噂を聞きまして、一応話しておいた方が良いと思い」
「変な噂?」
真実の愛を邪魔する婚約者。帝国の権力で二人の仲を引き裂く悪女。
……それ以外に、何かあったかしら?と思わず斜め上の方向を見て考える。
「ミルム伯爵令嬢が皇女様から虐めを受けていると」
「あら、私ったらどんな虐めをしているの?」
ベルが差し出した紅茶を飲んで世間話のように切り出したガルムに、私も他人事のようにクスクスと笑いながら返す。
「私物が隠されたり、ノートが破られていたりしていると」
「あら、可愛らしい虐めね」
正直、貴族同士であれば虐めにも入らない。心に傷がつくかもしれないが、貴族同士やりあうのであれば、もっと酷いのだ。醜聞どころか、家すらも巻き込み、負ければ家が傾く程に。
ならば命のかかっていない虐めは、まだ軽度で、買えば済むし、最悪逃げれば良い。命は失えば終わりなのだから。
「こんなくだらない事を皇女様がしている隙もないし、虐めにすらならないだろ。考えたら分かるものを」
ガラムは、きちんと物事を俯瞰して見ていると思う。
私は皆に注目されていて、遠巻きにされている。唯一皆が離れる時間と言えば、今の昼休みくらいだ。それ以外でそんな事をしていれば誰かの目に触れるというもの。
それでもその噂が立つという事は、そもそもが悪意を持って噂をまかれているという事にもなるが、していない証明も早いのだ。
考えるまでもなく分かる。それをしないのは、考える気もないのか、考えるという事すらしないのか。
「皇女様には双子の分身でもいるのかしら?」
「手下にやらせているという噂もある」
「誰も周りに居ないのに?」
ガラムは何だこの国の貴族達は、と頭を抱えながら私に情報を話してくれているが、私はその話を面白がって聞いた。
爵位を貰ったとは言え、元平民だったガラムに理解できる事が、生まれてからずっと教育を受けてきた貴族が出来ていないという今の現状があまりに滑稽で面白過ぎた。
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