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「……家族を大事に、そんな当たり前の事を出来なかった奴等だな」

 テオがポツリと、悔しそうに呟いた。
 ――家族だから、守った。
 ――家族なのに、貶めるような事をした。
 差があるとすれば、そこだろう。

『それに……王家と呼ばれる存在は、既に女神の血筋が途絶えているしな』

 ザワリ、と。先ほど以上に皆が狼狽えた。
 ……そうなのだ。王家に残された女神の血筋は、いつの間にか奪われ、途絶えている。
 所詮、人間のくだらない権力争いというものだろう。……未来にこんな事が起こるなんて思ってもいなかった愚か者が、自分の欲望で動いた結果とも言えるだろうが。

「どういう事だ!?」
「王族が女神様の血筋じゃないなんて……!」
「私達を騙していたのか!?」

 先ほど以上に混乱する人々。
 女神を称え、女神の血筋を信じて、自ら考える事を放棄した人間は、ここまで愚かなのか。

『もう守る子孫は居ないだろう』
「そうね」

 神の声にそう返し、私は一歩踏み出した。

「……戻る……のか?」

 皆が女神の血筋という一点だけを見つめ、責任転嫁をしている中でテオはポツリと呟いた。

「……いなくなる……?」

 弱々しく呟くテオの顔を見ると、とても悲しそうな表情をしていた。
 思わず胸が締め付けられ、神の元へ向かおうとしていた足が止まる。
 精霊達も、テオの表情に気が付いたのか、ショボンと肩を落としている。
 無意識に私は、一歩テオの方へ踏み出していた。

『……お前は変わらないな』

 神の言葉にハッとする。
 溜息をついた神……父は、それでも私を慈愛の目で見つめている。

 ――お前の幸せを願っている――

 私が人間の元へ行くと決めた時、父は悲しそうだが……愛おしいといった目で私を見つめ、放った言葉だ。
 ……今も、まだ尚、私の幸せを願ってくれている……。
 嬉しさに涙が溢れそうになった。
 幸せを願ってくれている人が……こんなに愛してくれる人がいるのに、私は私をぞんざいに扱う人達に慣れていた……。
 私が私自身を大事にしていなかったのだ……。

「……リタ……?」

 テオの手を取り、その顔を見つめる。
 テオと、居たい……。

「……守ってくれる?」
「勿論」

 即答するテオに安堵を覚える。
 言葉にしなくても、テオは守ってくれると信頼出来る。それは、周囲が敵でも私を守ってくれた今の現状が証拠となる。

『この国以外に行け』

 ぶっきらぼうに神が言い、その言葉にテオは頷く。

『もうこの国に精霊の祝福はない』

 キッパリと言い放った神の言葉に、周囲の人間が悲鳴を上げ、発狂する。

「何故リタ嬢を大事にしなかった!?」
「お前らのせいだ!」

 また、責任転嫁の声が響く。
 ……まぁ、家族を大事に出来なかったというのは事実でもあるけれど。
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